「どこ行くんだ?」
「サボり。」
「・・・・・俺も行く。」
4限目が始まる5分前、スッと立ち上がると隣の席に座る天下の生徒会長様に声を掛けられた。
「いいの?生徒会長様が毎回4限目ばっかりサボって。」
「いいのか?副会長様が毎回4限目ばっかりサボってて。」
「行こう。」
行く場所は決まっている。
「うん、今日も晴れてるね。」
景吾が屋上の鍵を閉めるのを確認してから、ブレザーの内ポケットから携帯灰皿とライター、そしてタバコを取り出す。
箱からタバコを一本取り出すと、景吾に横取りされた。
「何、吸うの?」
「吸わねぇよ。おらよ。握力弱えから爪で割ってよくフィルター破ってんだろ。」
どうやら、カプセルを潰してくれたようだ。
「ありがとう。」
ふぅー、と息を吐けば景吾が眉をしかめたのが見えたが私が吸う度にする表情にはすっかり慣れてしまった。
「匂いだけは甘ぇよな。」
「景吾がセッタを嫌がったから変えたんじゃん。」
「吸うのを辞めろよな。」
「それは無理かな。もう、5年の付き合いなんだから、それくらい分かってんでしょ。」
「高校卒業したら、留学する。」
唐突に告げられた言葉に、何も言わずに携帯灰皿にタバコを押し付けて2本目を取り出した。
「知ってたよ。テニスしに、ドイツ行くんでしょう?手塚君、元気かな・・・・。
・・・・景吾、4年後、私を迎えに来てくれる?」
「着いて来ないのか・・・?」
その言葉に景吾を真っすぐに見据えて告げる。
「行かない。景吾が本当にそれを望むなら着いて行くけど?4年後、景吾の側に堂々と居られる人間になる。私は、・・・・・国際弁護士になるわ。何年掛かるか分からないけれども、ロンドンに行って夢を叶える。」
長くなった灰を灰皿に落として続ける。
「ま、本当の夢は、景吾とずっと一緒にいる事だけれどもね。」
「お前が、タバコ辞めれたら迎えに行ってやるよ。」
「じゃあ、この1本で辞めれるわ。」
「絶対ウソだろ?」
「うん、ウソだよ。家にカートン買いしてるもの。」
「ばーか。
・・・・・・・やっぱり苦ぇから辞めろ。」
「キスでタバコの味知るなんて景吾も馬鹿な女と付き合ってるわよ。」
「そんな馬鹿な女が好きなんだよ。」
「ふーん。じゃあ、景吾の好きな女は私じゃないって事ね。」
なんて言いながらカラカラと笑えば、不意にキスをされた。
「お前が、一番馬鹿な女だ。」
2度目のキスは
ほろ甘く
ほろ苦い
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モドル
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