真っ青な、雲一つないような快晴。
お昼休みの屋上に私達はいつものように2人でいた。

「今日、白石と話ししてたよな?」

ほのぼのとした食後の時間を壊すには十分な一言だった。

「白石君・・・・、ああ、委員会の用事でちょっとだけ。」

「俺以外の男と話すなや。」

「ゴメン、ユウ君。」

私の彼氏は少し嫉妬深い。

「・・・・次から気ぃつけろよ。」

「おん、ゴメンな、ユウ君。」

真っすぐとユウ君の目を見つめて言うと、さっとユウ君は目を逸らした。

「まあ、もうええけど・・・・。

お前の世界から俺以外のモノを全部消したい。お前の目を見えんようにしたいし、耳は聞こえんようにしたい。」

「そんなことしたら、ユウ君の顔も声も見られへんし、聞こえへんやん。」

「じゃあ、お前と俺だけの世界に閉じこもりたい。」

「私は今のままでも十分満足やねんけど。だって今のこの世界でユウ君に出会えてんからさ。」

「何で分からんねん!!」

張り上げられた大きな声に肩がビクッと揺れた。

「ゴメン、ユウ君。怒らんとって・・・・、私はユウ君が大好きやで?」

「ちゃう、ちゃうんや。」

「何がちゃうん?」

「俺はお前を愛してるんや。お前は俺を愛してないんか?」

「・・・・・・、愛してるよ・・・。」

愛してるから、友人ともほとんど話さんくなって、男友達もみんな縁を切ってまでユウ君と一緒におるんやで?

でもな、もうちょっとだけ疲れたわ・・・・。

世界が狭くなっていくの、ちょっとしんどいんや。

「俺はお前を愛しすぎて、殺したい程に愛してるんやで?」

「ありがとう。」

ユウ君に、殺されて死ぬのか・・・・、悪くないな。
なんて思っている私もたいがい狂ってる。

「ユウ君、私の世界をユウ君で満たして終わらせる方法知ってるよ。」

どんな声色だったかなんて分からない。
ヒドく冷たい声だったかもしれないし、穏やかな声だったかもしれない。

「・・・なんや・・・?」

「ユウ君がその手で私を殺せばいいよ。」

「そんな事出来るわけ・・・・」
「大丈夫、ユウ君なら出来るよ。」

さっきまでユウ君に恐怖を抱いてたくせに、今は私の世界をユウ君だけで満たして欲しい。

すっ、と伸びてきた手に抗う事は全くせずに、目をつむって受け入れる。
首にかけられた手は暖かくて泣きそうになった。

ゆっくりと力を込められる。

息が苦しくなって、息が詰まるような感覚に思わずユウ君の手を掴みたくなる。
これが人間の正しい感覚か・・・。もうすぐ意識が飛ぶ。フワリとした一瞬の浮遊感。最後はユウ君の顔で視覚をいっぱいにしたい。

目を開けると、ユウ君は泣いていた。

「お前を殺したくない。けども、お前の最後を見届けるのは俺がいいねん。」

「ユウ君・・・・。」

「こんな、決断も出来へん俺やけど、生きて傍にいてくれんか?」

「ええよ。一生傍におる。でもな、ユウ君、私は絶対男の子と話さんから、ユウ君も私以外の女の子と話しせんとってな。じゃないと、ユウ君のこと殺してまうわ。」

ねぇ、狂ってるのはどっち?


 





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