「チィに会いたい。」

昼休み、白石と謙也と3人でお昼ご飯を食べながら1週間程前に中学校へ行ったときの話になった。
「名前が千歳に会いたい、言うなんて珍しいな。」

白石の言葉に首がもげるほと縦に振って同意を示す謙也がおかしくて笑ってしまった。

「うーん。何て言うか、癒しが欲しいんよなあ・・・。」
「名前はまだ千歳のこと好きなんか?」
謙也の出会った時から変わらない純粋で真っすぐな視線と言葉を向けられた。

「チィが熊本帰るから遠距離はしんどいって別れたけどさ、後悔はしてないんよ。今は、白石とか謙也と同じように好きやけど、恋愛じゃない好きやで。」

「そうか・・・・。」

白石が表情を少し曇らせたが、謙也が違う話題を振ったので、この話は終わった。



頭の整理がイマイチ出来ないまま、あの日から2週間程経過した。すっかり秋になって、上着が無くては寒い。

学校が終わって、部活もしていない私は、家に帰るだけ。


「・・・・名前っ・・・・・」

「金ちゃん・・・、部活は?」

帰路の途中で私の頭を混乱させたままの彼に会った。いや、私を待っていたのかも知れない。

「・・・今はテスト期間で休みや。・・・やっぱりワイじゃアカンの?千歳じゃないとアカンの?」
「・・・よう分からん・・・。」

すぅっと金ちゃんと目を逸らすと緩く顔を掴まれて目を合わせさせられる。相変わらず熱っぽい金ちゃんの視線が怖かった。私もその熱に犯されてしまいそうで。

「・・・・名前・・・・・・」

2回目のキスは、深く甘いキスだった。抵抗はしない。違う、出来ないんだ。

キスと金ちゃんの視線の熱に溶かされてしまうようで。


その後どうやって家に帰ったのかは、よく思い出せない。

ただ、唇と手の回されていた背中に熱が篭ったような感覚に私は、その夜、ずっと戸惑うことになる。



「金ちゃんも、2日連続で私を待ち伏せなんてよほどの物好きやね。」
「お前、アホやろ。今日、学校でこの近辺に変質者が出たって言うてたから迎えに来たんや。」

「そう・・・・、ありがとう。」

私に手を差し延べる金ちゃんの手をしっかりと握って歩きだした。

「金ちゃん、・・・・・付き合おうか。」


昨日、寝る間も惜しんで考えに考えた。今日、授業もまともに受けず、考えに考えた結果だ。


「・・・・・・は!?ホンマに言うてんか!?」

驚いて私の肩を揺さぶる金ちゃんに笑顔で、告げる。

「ホンマに言うてる。」


へなへなと空気が抜けたように頭を抱えながらしゃがんだ金ちゃんが耳まで真っ赤にしているのに気付いた。

「・・・嘘やろ・・。絶対フラれる思ってたし。

絶対離さんからな。俺からは絶対に離さん。」

獣のような視線にドキッとした。

「ありがとう、離さんでな。」


ゆっくりと二人で手を繋いで帰った。


まさか、金ちゃんがホンマに獣で、まさか、金ちゃんがドSやったなんて、まさか、今日食われることになるなんて全く想像してなかったけどな(笑)


 






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