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『 題  川と名無色
 撮影者 不二 周助』

先日フォトコンクールで入選した写真が踊り場に飾られてあるのを見て彼女は言った。


「ねぇ、この被写体ワタシじゃない。」

「そうだよ。」

川に脚をつけて上流を見つめる少女と呼ぶには大人びた彼女。

「優秀賞・・・・・、さすがワタシの自慢の親友ね。」

「ありがとう。」

親友。

君から発っせられるその言葉がどれだけ僕を苦しめるか知ってる?

「名無色・・・・、ワタシって貴方から見て色が無いのね。」

「名前に色を当て嵌めるのは難しいよ。」


トン、と壁に背を預けた彼女は夕陽が眩しいのか目を少し細めた。


「周助、お願いがあるの。」

写真から目線を外して、真剣な顔で僕を見つめる。

「なに?」

スゥ、と彼女の深呼吸にも似た深い呼吸に緊張した。


「私を殺して。」


「殺して欲しいの。

ダメ?なんて尋ねない。
お願いだから殺して欲しい。
私は貴方に殺されたいの。

私を絞殺して、そのままバラバラにして綺麗な美しい川の上流から流して欲しい。

そうね、あの川がいいわ。

2人で良く行った被写体にもなった、あの美しい川。
小さな川だったけれども私はあの川が大好きよ。

バラバラにしたくないなら、首と腕だけはバラして流して。

私も美しい川の一部になって、あの美しい自然を私の血液で汚したいわ。」

ウットリとした表情で彼女は理想を語る。

「やだよ。」

僕の返答に彼女が不思議そうな表情を浮かべる。

「なんで?
私達友達でしょう?」

彼女の真っ赤な美しい唇から零れる言葉が残酷で泣きそうだった。

『と・も・だ・ち、でしょう?』

僕達の関係を友人だと形容する彼女が嫌いだった。


「ただの殺人事件にしたくないわ。私は、誰かの運命を揺るがして、誰かの生きる糧や死ぬ糧になる殺人事件にしたいわ。」

落ち着いたアルトの声に洗脳されていくようだった。

美しい彼女を殺して、俺は生きられるのか?否、無理だろう。


「あら、貴方は死んじゃいやよ?
私だけが死ぬの。
貴方は生きるのよ。
私の生きた証を、私が存在した事を示す為に。」

僕が言う事を見越したように彼女は告げた。

彼女の言葉の一つ一つが頭に残る。洗脳だ。これは洗脳だ。
それを認識する度に恐怖にも似た高揚感が脳内を支配し、俺を完全な彼女の下僕にしてしまう。

けれども言わなくてはならない。

「僕には無理だ。」

「なんで?」


「君が・・・・、好きだから」


「ふふっ、分からないの?

だからこそ貴方に殺されたいのよ。」


ああ、君のそういうところが好きなんだ。大好きなんだ。愛してる。


僕は、そっと彼女の細い首に手をかけた。


「ここじゃ、嫌よ。行きましょう?周助。ワタシも貴方が好きよ。」


そして、僕達はいつもの様に、美しい川へと向かう。




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