kuzu
首ったけ!2nd
私の兵長に対する気持ち


「じゃあナマエさん、兵長と一晩同じ部屋で過ごしたってことですか!?」
「う、うん…そうなるかな。…えへへ。」


今朝、兵長に文字通り叩き起こされ痛む頬を摩りながらダイニングへ足を運ぶともうすでに新兵たち(やっぱり誰かに対して言うの、気持ちいなコレ)は朝食の真っ最中だった。昨日の夜中にここに着いたのだと説明すると、ハッとした様子のサシャにこう質問され、冒頭に至る。私が肯定するとジャンがブーッと口に含んでいた飲み物を吹き出し、隣のアルミンが被害を受けた。それに続けるように、そんな…破廉恥すぎます!とサシャが呟いた。実はあれからすぐに寝て、そして叩き起こされたため、今サシャの脳内で繰り広げられているであろうラブハプニング達は、私も悲しくなるくらい微塵も発生しなかったのだ。だけど、"一晩同じ部屋で過ごした"って何か響きだけはすごくエロティックだし、それは紛れもない事実だ。コニーやエレンもほんのり顔が赤い気がするし、ここはこのままにしておこう。うん、嘘はついてないし。


「あの、ナマエさん!ズバリ、ナマエさんと兵長はどういう関係なのですか!?」
「えっ?」


質問に肯定した私に少し考えるような視線を向けた後、サシャは勇気を振り絞ったように声を荒げた。その発言に、全員の視線が私に集まる。濡れた髪を整えていたアルミンや、テーブルを拭いていたジャンだって動きを止めた。


「どういう関係って…そんな、言葉で言い表せるような関係ではないけど…。」


少し言葉を濁した私に、コニーがごくりと唾を飲む。


「…でも、私の兵長に対する気持ちは、みんなの思ってる通りだと思うよ。…ただ、私は、こんなこと言葉にするのも嫌だけど、いつ何があっても可笑しくない身として、後悔しないように思ってることは言えるうちに言葉にしようと思ってるの。いつか訪れる"その時"に、あの時言っておけばよかった、なんて後悔しないように。」


ここまで言うと新兵たちは何かを考え込んでいるような表情を各々浮かべた。


「……後悔…。」


そっと消え入るような声でミカサが呟いた。


「…そう。みんなも、今ある生活は当たり前じゃないことをわかって欲しい。明日それがなくなってしまうかも知れない恐怖と、人類が永遠の自由を手に入れるために私たちは今、闘っている。そのために、自分たちの全てを賭ける覚悟をして欲しい。…って、なんか朝からこんなこと言ってしんみりしちゃってごめんね。」
「全てを賭ける覚悟…。」


私の言葉にヒストリアが復唱した。それぞれの顔を見渡すと、先ほどまでの朝独特の少し寝ぼけた表情の者はもうどこにもいなかった。


「その、"全てを賭ける覚悟"っていうのがナマエさんにはあるんですか?」
「……どうだろう。こんなこと人に言っておいて自分はどうなんだって感じだけど…"全て"って言われると…いざ"その時"が来たときに揺らいでしまうものもあるかも知れない…。」


そう言って私はエレンが用意してくれたパンをかじった。昨日、ソファに沈んだ小さな身体も…兵長もそれに含まれるなら、私は揺らいでしまうかも知れない。




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