kuzu
首ったけ!2nd
兵長の傍に居たいんです



「今まで俺が巨人に何百人食わせたと思う?腕一本じゃ到底足りないだろう。いつか行く地獄でそのツケを払えればいいんだが。」
「………。」


"大変なことが色々と起こった"と言った兵長に、有る程度のことは覚悟していたつもりだったが、現状は想像以上のものだった。エルヴィン団長の病室へ行くまでの道のりで兵長から聞いた、女型の巨人の正体が104期の憲兵だったこと、他にも仲間が同じく104期の調査兵に二人いたこと、彼らがエレンを連れ去ろうとしてそれを阻止するために、団長を含め多くの人間が負傷し犠牲になったこと、そして壁に関する秘密、それを黙っていた人物…それだけでもかなりショッキングな内容だったのに、その上今の話だ。これから、どうなってしまうのだろう。


「…それからだ、新しい班編成についてだが…エレンには、死に物狂いになれる環境が相応しいと思って俺が色々決めておいた。班員は全員エレンと同じく104期の新兵で編成しようと思っている。」
「………へ?ちょ、ちょっと待って下さいよ!私は?私はどこへ行ったんです!?」


分からないことだらけだったが話に水を差すまい、とこれまで大人しくしていた私だったが我慢出来ず口を開いた。班員は104期の新兵で編成…?すると、私が口を開いたことでハンジさんがあっ居たんだ、と言うような表情を見せた。私、そんなに影薄いキャラだったっけ。


「…だからお前のことはさっき言っただろう。何度も言わせるな。」
「なに…?何を言ったんです?何も言ってないじゃないですか!久しぶりの再会だったと言うのに、兵長私に何も言わなかったじゃないですか!!」


先ほど兵長とばったり会った際に少しばかり湧いた、怒りにも近い感情が再びメラメラと心を支配する。さっきは驚いて表に出さなかったが、前回あれだけ優しかった兵長が、何故逆戻りしてしまったのだ。


「…だから、ハッキリ言っただろう。お前のことをすっかり忘れていた、と。」


特に悪びれる様子もなく、兵長はサラッと私に言ってのけた。…ああ、確かに兵長はそう言っていた。気持ちを一新し闘志を燃やしながら毎日リハビリに明け暮れ、兵長がお見舞いに来るのを今か今かと待ち構えていた私に対して、兵長は私と言う存在を忘れていた、と言った。そんなことって、あり得て良いのだろうか。


「てめぇような、迷惑をかけまくったクソみたいな奴の存在すら忘れてしまうほど、この短い間に色々なことが起こった。だが、当初の目標が変わったわけじゃねぇ。事は急を要する。…コニー、さっさと行くぞ。」
「はいっ!」
「いっ…、いやいやちょっと待って下さいよ!忘れてたって…それだけですか?」
「お前はまだ怪我人だろう。今は治療に専念しろ。」
「もう治りましたー!!」


ベーッと舌を出すと、兵長はいつものゴミを見るような目で私を見下した。


「リヴァイ、ナマエも連れてってあげなよ。彼女はリヴァイ班唯一の生き残りだよ?可哀想じゃないか!」
「…こいつが生き残ったのは運が良かっただけだ。」
「そ、そんな運だけで生き残れるわけないじゃないか!これはナマエの実力だよ!」
「いや…兵長の言うとおりです。」


必死にフォローをしてくれるハンジさんに、反論すると兵長が少し顔を上げた。


「本当に、あの時私が生き残ったのは運が良かっただけで…でもだからこそ、亡くなった仲間の為に今を必死に戦うことが残された私が出来る唯一の償いだと思っています…。だから、私これからもずっとリヴァイ班で居たいです…!兵長、私も連れて行って下さい!!」
「ハッハッハッハ!何だか夫婦漫才を見ているような気分じゃのう。そう思わんか、エルヴィン?」


私の発言にそれまで黙ってたピクシス司令が口を開いた。その言葉にエルヴィン団長も会釈する。


「こう暗いニュースばかり聞いておるとどうも気が滅入ってしまってな。お主のような明るく頼もしい兵士が、今は一番必要じゃな!気に入ったぞい。早く支度をして、主も新しい班員と合流するがよい!」
「ほ、本当ですか!?」
「ああそうだよナマエ!久しぶりに会ったと思ったら、何だがすごく頼もしくなってるじゃないか。君はもう、リヴァイの右腕だね!」
「み、右腕?そんな…やめて下さいよハンジさん!照れちゃいます!」
「…右腕が欲しいのは、私の方なんだが。」
「「「……………。」」」
「じいさんもエルヴィンもつまんねーこと言ってんじゃねぇよ。こんなクソ野郎へのつっぱりにもならねぇぞ。欲しけりゃくれてやる。」
「そ、そんな…勘弁して下さいよ兵長!私、兵長の傍に居たいんです!!」
「俺はいらねぇがな。…だが、伝達係くらいになら使ってやってもいい。」


そう言って、兵長は立ち上がる。コニーと呼ばれた新兵もそれに続く。…つまり、どっちだ?答えに迷っているとリヴァイ兵長が振り向き、いつも通りの視線を私にふっかけた。


「…早くしろこのクズ野郎。」




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