kuzu
首ったけ!2nd
頭の中は兵長でいっぱい


礼拝堂へ突入する作戦を、真剣な表情で語るリヴァイ兵長に耳を傾ける。その姿は、やっぱりいつもの兵長で。兵長が一体、何を考えて人を殺めているのかなんて私には分からない。ただ、私なんかよりずっと経験も豊富で、たくさんのことを考えている兵長の意見が間違っているなんて思いたくない。だから…私は信じる。きっと、これが人類のためなんだ。


「わかったか?切り裂きケニーだ。奴が居れば間違いなく一番の障害になる。」


兵長の言葉に、サシャとコニーが不安の色を見せた。そんな中、アルミンが私に声をかけてきた。


「ナマエさん、ナマエさんは切り裂きケニーと一戦を交えたんですよね?その、何か分かることはありませんか?」
「分かること…、兵長もさっき言ったように、あの変な武器が厄介だったよ。立体起動をしながら銃を撃つなんて…ちょっと待って、銃と言うことは装丁出来る弾に限りがあるんじゃ…。ある程度空撃ちをさせて、弾がなくなったころに意表を突くことが出来れば、私達にもまだ逆転の芽はあるかも…。」


すると私の言葉に何か閃いたように、ハンジさんとアルミンが考える仕草を見せた。しかし考えがまとまらないのかハンジさんが兵長に「一緒に住んでいたのにこれしか情報がないのか。」と言うと兵長はミカサの方を向き口を開いた。


「奴のフルネームを知ったのも昨日が始めてだ。…ケニー・"アッカーマン"って言うらしいが、まさかお前の親戚だったりしてな。」
「……。」


その言葉に、私は言葉を失う。そうすると、兵長の苗字も"アッカーマン"と言うことになる。こんな珍しい苗字が身近に三人も被るなんて、あり得るだろうか。もしかすると、ミカサと兵長も何か血縁関係があるのだろうか。確かに、二人は髪の色や雰囲気、そして兵士としての実力など似通う点が多々ある。もし、そうだとすると…。


「ってことは、ミカサと私は将来の家族だね。後輩が家族になるなんて、何か恥ずかしいけどこれからもよろしくね。」
「は?」


そう言うと、ミカサは目をきょとんとさせた。そして数秒固まったあと、私の言葉が理解出来たらしく「こんな大事な時にふざけるのはやめて下さい。」と私に冷たい目を向けた。だけど、そんなこと気にしない。兵長だって、いつもの巨人を見るような目を私にくれていたけどそれすらも何だかいつもの日常に戻れた気がして心地よかった。ナマエ・アッカーマン。なんか、いい感じじゃないか。


やっばりどこにいても、何をしていても、頭の中は兵長のことでいっぱいで。こんな危機的状況でミカサの言うとおりふざけたことを考えているって、自分でもそう思う。だけど、これが私なんだ。私は兵長を好きである前に兵士で。だけど、私が兵士として戦う原動力は兵長にあって。これは、切っても切っても切り離せない。一度、104期達に"覚悟"の話をしたが、その時の私は偉そうなことを言っておきながら、結局"覚悟"なんてものはなかったのかも知れない。だけどもう、迷わない。拳をきつく握りしめた。


「…それでお前ら、手を汚す覚悟の方はどうだ?」


兵長はそう言って、新兵一人一人に目をやった。そして、最後に私の方を向きその薄い唇を開いた。


「てめぇ、さっきあんな冗談飛ばす余裕があるくらいなら大丈夫だと思うが…一言言っておく。」


一瞬の間があったあと、兵長はガシッと私の頭を引き寄せた。突然のことに反応出来ず、私は兵長の胸に雪崩れ込む形で近付く。心臓が飛び出るんじゃないかと言うほどバクバクしている。そして、他の兵士には聞こえないように私の耳元で囁いた。




「!!」


兵長は言葉を言い終えると、掴んだままの手で私を引き離した。104期の新兵達は驚いた表情を隠せていないし、ハンジさんは「今の何!?なんて言ったの!?」と興奮気味だ。だけど兵長はいつもの表情に戻り、教会地下の隠し扉を見つめている。私は心から湧き上がってくる気持ちを必死で抑えながら、兵長に言われた言葉を噛み締めた。…そんなこと、言われなくたって分かってる。



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