kuzu
首ったけ!2nd
体は兵長に捧げると決めていたのに



「なぁ、どうだ?…声を聞かせてくれよ。かわい子ちゃんの声が聞きたいなぁ…。」
「うっ…。」


ハァハァと鼻息を荒くさせながら、先ほど私を拘束した小太りの中年のおじさんが近づいて来た。顔を背けても無理やり向けられる。両手両足を拘束されているため、抵抗も出来ずに私はされるがままだ。


「やっぱり若い子って言うのは、肌も綺麗だねぇ。食べたくなっちゃうなぁ。…ちょっとだけならいいよね?」
「い、いやぁ…!」


そう言いながら、おじさんは私の首筋に舌を這わせ、服の上から胸を弄ってきた。言葉では形容出来ないような不快感が全身を襲い、涙が溢れてくる。揺れる視界からうっすらと、エレンに扮したジャンが見えた。普段から人相の悪い顔だと思っていたそれが、今まで見たことのないような顔をしていた。


「おい変態!!離れやがれ!!」


ジャンはそう言ってバタバタと手足を動かし、縄をほどそうと試みるがきつく結ばれているためそれは叶わないようだ。ジャンの足首から血が滲んでいるのが見えた。このままじゃ、作戦が実行される前に台無しだ。


「…エレン。」
「……!」


そう静かに呟いて、ジャンの顔を見る。目で大丈夫、と伝えるとジャンは表情こそは変わらなかったが大人しくなった。…もう少しの辛抱だ。もう少したてば、きっと兵長が助けに来てくれる…。


「オイオイ、えらく威勢がいいなぁこの坊ちゃんは。お友達が襲われてんのを見て興奮しちゃったか?…そうだよな、俺だけ美味しい思いしちゃ不公平だよな。坊ちゃんにも見せてあげるよ。」


そう言っておじさんは私の着ていたブラウスを無理やり引き裂いた。その拍子にボタンが数個弾け飛び、普段服に覆われている部分が外気に晒される。


「い、いやぁ…!やめて!!」
「いいねぇその顔…。嫌って言われると、余計いじめたくなっちゃうねぇ…。」


そう言っておじさんは今度は私の胸を下着の上から揉みしだいてきた。時折、下着の中におじさんの汚い手が入ってきて、もう作戦なんてどうでもいいから早く解放してくれ、とすら考えてしまうほど嫌悪感でいっぱいになる。それを見たジャンは元々寄せていた眉間を更に深くさせ、巨人も逃げ出してしまうんじゃないかと言うほどの表情を見せた。


「こんのクソ野郎が…!殺してやる!!」


ジャンが先ほど以上に両手両足をバタつかせ、メキメキと肉が縄に食い込む音が聞こえる。


「え、エレン…大人しくしておかないと…!」
「そうだぞ坊ちゃん。こっちのかわい子ちゃんは本当にお利口だ。大人しくしとかないと、殺されちゃうかも知れねぇもんなぁ…。けどその前に、もうちょっとだけこのかわい子ちゃんと遊ぼうかな…。」
「やだぁ…!!!」


ふぅ、と耳に息を吹きかけ、今度は下着の下から直に胸を揉まれる。心臓は兵士として捧げたが、体は兵長に捧げると決めていたのに、このままでは私の貞操が危ない。しかしどうすることも出来ずに、むしろこれが人類の勝利に繋がるのなら私の体一つくらい、安いものではないかと思い始め、私は目を瞑り必死にこの苦行が終わるのを待った。



***



「リヴァイ兵士長、大変です。」
「何だ、またあのバカが何かやらかしたか?」
「いえ…。そうではありませんが、非常事態です。」


天窓から中の様子を確認すると、ヒストリアに扮するナマエさんが襲われかけていた。着ていたブラウスは破られ、ここからでも下着が見えるくらいまで、はだけてしまっている。その上、男は下着の下からナマエさんの胸を弄り鼻息を荒くして興奮している。その向かいにはジャンが血相を変えて力の限り暴れている。…このままでは危ない。


兵長にも中を確認するように促すと、兵長は二人を見てキツく唇を噛んだ。いつもの何を考えているかよく分からない表情ではなく、明らかに怒りの感情が見て取れる。


「…オイ、予定より少し早いが突入するぞ。」


そう言うなり、兵長は私を確認せずに中へ飛び込んでしまった。



***



ドコォォオオ!!


おじさんの手が徐々に下へ伸びて行き、とうとうここまでかと思った瞬間、大きな音がして上から兵長とミカサが降りてきた。ミカサが私の元へと駆け寄り、兵長が先ほどのおじさんに立ち向かう。


「オイおっさん。こんな貧相な体相手にしなくても、街へ行けば幾らでも上玉が買えるだろーが。」


そう言って兵長はおじさんの顔をひたすら蹴り上げる。…ひ、貧相な体…だと?一体いつ、どこを見て兵長はそう判断したのだろうか。前々から私のことをそんな風に思っていたのか、それとも今この一瞬はだけてしまっている部分を見て思ったのか、どちらにせよ抗議したい。声を大にして、「私、脱いだらすごいんですよ!ナイスバディーなんですよ!今度お見せしますから!」と言おうと口を開きかけたが、兵長の剣幕があまりにもすごかったので思わず黙り込んでしまう。私がこころの中で葛藤している間、待ってくれ、許してくれ、と言うおじさんの静止も無視して、兵長はひたすら腕を振り上げる。その内彼はうめき声すら上げなくなり、静かに床に倒れた。


「…や、やり過ぎですよ、兵長…。」


ミカサに縄をほどいてもらい、自由の身となった私がそう呟くと、兵長は「…あ、あぁそうだな…。」とよく分からない返答をした。そして私の方を見るなり、すぐに視線を右に流し自分の上着をサッと脱いだ。


「…悪かった。」
「い、いえ、とんでもないです…兵長のせいじゃないですし…。」


手渡された上着を、いつもの千倍くらい優しい兵長に甘え袖を通す。やっぱり兵長の匂いがして、それだけで私は先ほどの悪夢のような出来事をなかったことにリセット出来るほど幸せな気分になった。しかし、そんな気持ちに浸れるほど現状は良いものではない。ミカサが今度はジャンの縄をほどいたのを見て私は駆け寄った。


「ジャン!!ごめんね…大丈夫だった?」
「そ、それはこっちのセリフです…。その、すみませんでした…。」


解けた縄を見ると、想像以上に血が滲んでいて、患部を見ると深くはないものの出血をしていた。その周りを申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら撫でていると、ジャンが口を開いた。


「ナマエさん…すみませんでした。俺、何も出来なくて…。」
「そんなことないよ!謝らないで…。ジャンが居なかったら私、もっとひどいことされてたかもしれないし…。」


そう言うとジャンがまた反論しようと口を開く。こうなるとキリがないので、自分の口に人差し指をあてジャンの発言を拒んだ。


「じゃあ、また私がピンチになった時はジャンが助けてね?」


それでチャラにしよう、と付け加えるとジャンはまだ不満そうだったがとりあえず開きかけた口を閉じた。そんな様子を見ていた兵長が言う。


「オイ、のんびりままごとしてる暇じゃねぇーぞ…。ミカサ、二人の縄を自力でほどける程度に緩く結び直せ。じきに上の者が来るだろう。それまで俺たちは隠れておいて死角をつくぞ。」
「分かりました。」


そう言ってミカサはまた私たちの背後に回り、縄を緩く結び直した。ジャンはまだ、何か言いたそうにこちらを見ていた。




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