kuzu
首ったけ!1st
兵長に気に入られればそれで充分ですから

数時間後、兵長と兵長に指名された兵士達、それにエレン・イェーガーと私…のリヴァイ班は旧調査兵団本部の古城へと向かった。一団から一馬身ほど離れて私も後を追う。それもそのはず、私の馬は異常なほどの荷物を背負わされ、立っていることすら不思議なほどに四本足を震わせている。可哀想に、もうすぐだから…と鬣を撫でると馬は何でもいいから早く下ろしてくれ、と言ったような目を向けた。しかしその要求には応えられない。何故なら、


「…あの、何でナマエさんだけそんなに荷物多いんですか?」


こう声をかけてきたのはエレン・イェーガー。彼は先日のトロスト区奪還戦で始めて人類が巨人に勝った立役者とも言える。そして彼のおかげで私がリヴァイ班に配属出来たと言っても過言ではない。私は彼を讃えなければならない。


「おい新兵。てめぇが乗ってるから馬が苦しそうだろうが。てめぇだけ降りて走れ。」
「えっ!そんなぁ、」
「ナマエさん、その荷物半分俺に下さい!俺、荷物少ないんで!」


そう言って本来讃えなければならない存在のエレンは私に笑いかけ、半ば強制的に私の荷物を自分の馬に背負わせた。幾分か楽そうになった私の馬は、やっとみんなに追いつく。たった数年だけど、エレンよりは先輩であるのにその彼の前で新兵と呼ばれたこと、そして後輩である彼に気を遣わせたことが頭から火が出るほど恥ずかしい。この班では、エレンの次に私が新兵であり成績を見ても私が一番の下っ端だ。そんなこと、言われなくたってわかっている。なのにそれをよりによって兵長自身の口から言われ、悔しい気持ちが胸に広がる。って言うかこの荷物は、兵長の、


「おい小便臭せぇガキ…に新兵、お前ら調子に乗るんじゃねーぞ。特に新兵、お前リヴァイ兵長にえらく付きまとってるらしいがお前ごときがリヴァイ兵長のお眼鏡に叶うと思うなよ…まぁ俺なら相手してやらんことも、」
「あ、間に合ってるんでオルオさんは大丈夫です。」
「何だと新兵!お前生意気だぞ!」
「て言うかオルオさんと私、そんなに変わらないじゃないですか。ついこの前までナマエって呼んでくれてたのにもしかして兵長の真似ですか?」
「るせぇ!!そんなんじゃねーよ。大体なぁいい機会だから言ってやるが俺はお前のそういう生意気な態度が前々から気に入らね、っていってぇ!!」


オルオさんの馬が石に躓き、その拍子にオルオさんが舌を噛んだ。その様子をチラリと見て、大丈夫です、私リヴァイ兵長に気に入られればそれで十分ですから、と付け加える。横目で兵長を盗み見るが表情は先ほどと変わらない。自分でも分かりやすいほど好意を全面に出しているのに、兵長ったら照れ屋さんなのか私には目もくれない。でも、そんなところも好きなのだから仕方ない。恋は盲目とはよく言ったものだ。


そんな私たちのやりとりをエレンは冷や汗をかきながら呆然と眺めていた。エレンだってオルオさんだって、背も高いしよく見ればすごく男前だ。だけど私はリヴァイ兵長しかそんな目で見ることが出来なかった。命を助けられた一年前のあの日から、私はリヴァイ兵長のことが、


「おい新兵。てめぇ後輩のエレンにまで気を遣わせて恥ずかしくねぇのか。これ以上人に迷惑ごとをかけるなら、俺はいつでもお前のことを切るからな。」


その背中に気持ちを念じていると兵長が振り向いたので、とうとう想いが通じたのかと思いきや兵長はいつものため息をついて私に言葉の暴力を投げかけてきた。私の想いが兵長に通じる日はやって来るのだろうか。



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