Special story
雨音
「あー、早く止まないかなぁ…。」
私はそう言ってどんよりと曇った空を眺めた。せっかくの休日なのに、朝から降りっぱなしの雨を見つめていると何だが心まで暗い気持ちになってしまう。
「…そう?僕は雨音を聞きながらこうして本を読むのも好きだよ。」
なんて詩人みたいなことを私の隣で言ったのはアルミンだ。こんなことを言っている彼だけど、私と違って晴れの日も曇りの日もほぼ毎日こうして書庫に来て本を読んでいるのを私は知っている。
「…それに、こうして君を独り占め出来るしね。」
サラッと付け加えた一言に、思わず顔を赤くしてアルミンの方を向くと、彼も同じような反応をしていた。何、自分で言ったくせに。
「ほ、本当は…晴れの日だって曇りの日だって、毎日こうして君と二人で過ごしたいんだ…。だけど、君は雨の日しかここへ来てくれないから…だから、僕はいつもここで雨が降るのを待ってるんだ。」
そう言うとアルミンは私を見ずに再び顔を本へと向けた。綺麗な金髪から垣間見える耳は、夕陽みたいに真っ赤だ。アルミンの後ろにある窓には、もう雨は止み虹がかかっていた。
「私も、アルミンを独り占めしたいから晴れの日だってここに来ようかな。」
そう言うと顔を真っ赤にさせたままのアルミンがハッとこちらを振り向く。今度は、私が顔を赤くする番だった。
(拍手ありがとうございます!)
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