拝啓、


 


 拝啓、なんて使ったことないから正しい使い方なんて分からないんですけどね。

 初めて、先輩に手紙を書きます。
 ちゃんとした手紙自体書くの、俺にとっちゃ初めてなんですけどね。メールとかなら慣れてるんですけど、先輩が手紙好きだって言ってたから。俺って健気でしょう。

 先週の土曜日、学校の近くにある女の子に人気の雑貨屋に一人で潜入して、先輩が好きな猫の絵描いてあるこの便箋を買ってきました。
 見た瞬間、先輩が好きそうだなぁって思って。

 ちなみにこの便箋に辿り着くまで、三枚の尊い命が亡くなりました。つまりは書き損じたわけです。
やっぱり普段しないことは、しないに限りますね。また何書けばいいのか分からなくなってグダグダになってしまいそうです。

 だから、あまり難しく書かないことにしますね。まぁ、俺の頭で言うところの難しいなんて、先輩にとっては何でもないことなんでしょうけど。

 えーと、ですね。
 今日学校から帰る時に、先輩に似合いそうなマフラーを売っているお店を見つけました。白くてふわふわしてるんです。

 たまに、あぁこれ先輩に似合うだろうな、とか考えて街を歩いています。

 先輩が喜びそうだろうな、とか。先輩ならどんな顔するだろうな、とか。

 そうやって街を歩けば、見慣れた景色が何だかビックリするぐらい眩しくて、色とりどりで目がチカチカします。

 何でもない物が、ふと大切に思えるのは先輩がいるからなんでしょうね。

 春が来たらお花見。夏が来たら海。秋が来たら紅葉でも見に行って。冬が来たら、寒いからって言い訳を付けて手を繋いでみたり。

 いっぱい考えてみれば、何でもない時間の流れも好きになれそうな気がしました。

 一瞬の、ほんの短い時間を重ねたり繋いだりして、思い出になっていく時間を作っていくことはなんと幸せなことなのだろうかと、今になって思います。

 何かを見て、何かを感じる度に、想像して、笑って、自分の中の一部にしていくことが、生きていくということなんでしょうか。

 それが全部、先輩と一緒ならとても楽しいだろうと思います。絶対に、楽しいです。

 さて、初めてのお手紙はこれぐらいにしておきます。

 思いの外、長い手紙になってしまいました。こんなに文字を書いたのは初めてかもしれません。

 ただ伝えたかったことは、先輩は俺の中の大事な所に居て、居なきゃならないということです。

 伝わったか、なんて分かりませんが、そうであったらいいと願うばかりです。

 それでは、また。








天国の先輩へ最初で最後のラブレター



(生きている間に伝えられなかった俺は大馬鹿者です)

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