▽ とりあえずイチャイチャ
よくある軽率に一真と晴巳をイチャイチャさせたお話。短いです。珍しい晴巳視点。「……」
一真が机に肘をついて宿題をしている。
俺には工業高校らしい複雑な図面が印刷されたプリントを理解することは出来ないが、一真は分厚いテキストとそれを見比べては何かを真剣な顔で書き込んでいる。
何というか、その真面目な顔が……かっこいい、とか思わなくもないわけで。
こっち向かないかなー、と念じてみて恥ずかしくなってやめた。だいたい邪魔はしたくないし。
手持ち無沙汰になってボリュームを落としたお昼のワイドショーに視線を向けてみたけど、内容なんて全然頭に入ってこない。誰かが破局しただとか、どうでもいいことだ。
つい視線は一真に戻ってしまう。
横顔だと鼻の高さがより際立って見える。アジア人にあるまじき高さだ。
形のいい眉にくっきりした二重。すっとした鼻筋と、赤ちゃんのような滑らかな肌。洗顔料のCMに出るつもりか、この野郎。
憎たらしいぐらいに綺麗な顔にため息すら出そうだ。普段まじまじ見ることがないだけに、じっくり観察すると色々ダメージが大きい。
「…あんまり見られると、照れんだけど」
「え」
「さっきからすげぇ見てるだろ?」
「………見てないし」
「へぇ?」
どうやらバレていたらしい。恥ずかしくなってぶっきらぼうな声になった。
流し目を一瞬送られる。口元がニヤリと歪んで、もの凄く悪そうな顔になっていた。
「……ん、こっち来い」
「ばか。行かねぇよ」
「晴巳」
「……」
シャーペンを机に放り出した一真はテキストも閉じてプリントを挟んだ。宿題はしばし中断らしい。
「晴巳」
二回も呼ばれちゃ仕方ない。
つつつー、と膝歩き。
一真が来いって言ったからであって俺の意志ではない。ということにしておく。
「今日なんか可愛いな」
「…はぁ?」
「いつもより甘えた感じっつーか」
「……そういう気分なんだよ。悪い?」
「悪くねぇ」
腰に手を回され、抱き寄せられる。膝の間に座らされて、背中からギュッとされた。
「かーずーま」
この体勢も悪くなかったけど、俺が求めてるのとはちょっと違う。
一真のシャツを掴んでくいくいと引っ張る。
「どうした?」
顔が近づいてくる。さっきまでプリントに夢中だった二つの目が真っ直ぐに俺を見ている。
その事実にとても気分がよくなる。結構単純な自分に笑ってしまう。
「 」
囁くように言えば、一真が目を見開いた。その後すぐに笑顔になった。ただちょっと目つきが悪いせいで何か企んでる人みたいな笑顔だったけど。
「今日ホントに可愛いな」
嬉しそうな一真のほうがよっぽど可愛いと思う。
デレデレとだらしない笑い方だ。
でもその顔がとても好きなのだからどうしようもない。
可愛いおねだり、でしょ?