あいするひと(Levi)



 何も変わらない日常。だが、今日だけは特別な日。わたしの大好きな人の誕生日。わたしの恋人、リヴァイは皆の人気者。兵団で好きじゃない人は居ないだろう。多少何割かは怖がっている人もいるだろうが、それだってリヴァイが強い証拠。皆から尊敬され、好かれる彼は、わたしの誇りの相手だ。
 だがしかし、こんな世界だ。お気楽モードになれるわけでもない。少し空いた時間に彼をお祝いしようと、考えていると「ヒロ」とわたしの足を止める。
「リヴァイ」
「なんかお前浮かれているだろ」
「あ、ばれちゃった?」
「何年の付き合いだと思ってるんだ」
「じゃあこの日浮かれるのも分かるでしょ?」
「……いい酒をエルヴィンからもらった」
「やった!夜楽しみにしてて」
 彼はそれだけ言うとわたしの元を去って行く。確かにわたしとリヴァイの付き合いは長い。彼が兵長になる前に付き合い始めたのだ。最初は一方的の恋愛だと落ち込んでいたが、彼は愛情表現を出すのがどうやら難しいようだ。それに気付くにも時間が掛かった。それが彼の愛情表現だと。ハンジやミケに言われ、積極的にわたしなりの表現で彼に愛を伝えていたら、彼も少しずつ応えてくれた。そのときはとても嬉しかった。
 そうして毎年二人で行われる誕生日会。この時期は市外も浮かれムードのため、そこでケーキを買っていた。
 しかし、何度目かの誕生日。毎回お酒とケーキで過ごすのも飽きてしまった。彼はそれでいい、と言ってくれるだろうが、誕生日は特別だ。今年はケーキを作る材料を買い、それをプレゼントしようと考えていた。その為には、エルヴィンから出された書類を片付ける必要がある。急いで部屋に向かい、書類に取り掛かる。この調子だと、夕暮れ前には終わるだろう。普段あまり動かしていない頭を必死に動かし、ペンを走らせた。

「凄いなヒロ」
「どうも!今日は大事な日だからね」
「朝方、私からもプレゼントを渡しておいたよ」
「うん、聞いた。毎年ありがとう」
「いい日を送ってくれ。……リヴァイはまだ時間が掛かりそうだが」
「大丈夫。今年は去年と違って違うお祝い方するつもり」
「ほお、面白そうだな。また聞かせてくれ」
「うん。じゃあ失礼します」
 いつも提出が遅いわたしが、こんなにも早く書類を提出したため、エルヴィンは驚いていた。だがその理由も納得してくれた。彼にもお世話になっている。もしケーキが余ったら、渡してあげてもいいかもしれない。そんなことを思いつつ、私服に着替える。班長組が私服に着替えてる姿を見たことが無い兵団が、わたしの私服を見て「何処か出掛けるんですか?」と声を掛けてきた。
「まあちょっとね」
「今日兵長の誕生日ですよね?おめでうございます!」
「そういうのは本人に言ってあげて」
 祝ってくれた相手に、にこりと笑い外に出る。十二月。とても寒い時期だ。だが、もたもたしていると、材料がなくなってしまう可能性がある。急ぎ足で市場に向かった。

「こんなものかな」
 急いでスポンジ、クリーム、その他果実を買った。ここからはわたしの手の見せ所だ。実を言うと、料理は得意だ。昔訓令兵だったとき、皆の料理を作っていたときだってあった。お菓子と料理は別かもしれないが、コツさえ掴めばいけるだろう。  先ほどより速く歩き、無事キッチンまで辿り着いた。料理をもう作っていたが、少しだけ場所をお借りし、ケーキ作りに手を掛ける。ケーキを作っているとき、リヴァイの顔を思い浮かべたら、とても楽しく作れた。
「これで、完成」
 最後にクリームを全体に付け、小さなホールケーキが完成した。クリームが溶けないよう、冷蔵庫に入れ、またもや仕事に戻る。班長の仕事は書類だけではない。次の壁外調査の班員の動きなど考えなければならない。少し前にエルヴィンに、次は東の方に進んで行くと言われていたため、地図を見ながら試行錯誤する。その間、班員が部屋を訪れたりしたりしていたため、月が覗き込むのは早かった。
 一応自分の仕事を終え、リヴァイの部屋で帰りを待つ。まだかまだかと、ソファの上で足を揺らしていると、がちゃり、とドアが開く音がする。
「リヴァイ!お疲れ様」
「ああ。ヒロもな」
「わたしは平気。肩でも揉む?」
「じゃあ頼む」
 椅子に腰掛けたリヴァイの肩を揉んであげる。カチカチになった肩をほぐすのはわたしの仕事だ。彼は目を瞑り、一息吐いている。
 何分か揉んでいると「もういいぞ」と声が掛かる。椅子に座っていた彼の手を引き、ソファまで連れて行く。そして、先ほど作ったケーキを机の上に乗せる。それを見たリヴァイは驚いた表情をしていた。
「……これヒロが作ったのか?」
「うん。簡単な物だけど。お口にあえばいいな」
「お前が作る料理は旨い。だからそのケーキも旨いだろうな」
「ふふ、じゃあコップ出して」
 リヴァイはワイングラスを戸棚から出し、朝言っていたエルヴィンの贈り物を注ぐ。
「じゃあリヴァイ、お誕生日おめでとう」
「……ありがとうな」
「大好きよ、リヴァイ」
「俺は愛してるぞ、ヒロ」
 ケーキを食べたリヴァイは「旨いな。今度から作ってくれ」と気に入ってくれた様子。その後二人で甘い時間を過ごし、彼の誕生日を楽しんだ。


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