君とならどこだって天国だ(Jean)



 遠距離の彼氏が居る。付き合ってからは、毎日電話をしたり、テレビ通話をしたりしていた。そんな日々を過ごして何カ月か目。気付けば十二月に突入していた。
「ジャン、もう寒くなってきたね」
『ああ。こっちは雪降ってんぞ』
「へえ!いいなあ、雪」
『なにも良くねえよ。車や道は凍るし、良いことなんて一切ねえよ』
「そう?」
『そう。ヒロの地域は降らねえの?」
「降っても粉雪くらい」
『へえ、羨ましいぜ』
 そんな話をつい数日前に話していた。本当はジャンに会いに行きたいが、車の免許を持っていないため、会いに行けない。しかもお互い仕事をしている。クリスマスくらい、休みを取ってジャンに会いに行こうかと考えていたが、彼が仕事が入っている、と言っていたため、一応休みはもらったが、彼氏は居るがクリぼっちという形になってしまった。ジャンも気を利かせて休みにしてもらればいいのに、と愚痴を漏らしたところ、皆クリスマスで休みを取っている為、ジャンが入ったと言うことらしい。

『ヒロ、おはよ』
「……おはよう〜」
『今起きたのか?』
「だってまだ朝の五時だよ?」
『……今日は何の日か分かってるか?』
「クリスマスイブ……」
『ん。分かってるんだったいいんだ。じゃあな』
「え、それだけ?」
 わたしの声を聞く前に電話を切ってしまったジャン。何故こんな朝早くに電話を掛けてくるかは謎だったが、ラインに『化粧済まして暖かい格好しとけよ』と一通の通知。何か分からないが、彼の言う通りにしとけば、問題ないだろう。だが、まだ日が昇りきっていない。もう一度布団の中に入り、ジャンの顔を想像しながら眠りにつく。

 ジャンからの電話から数時間後。明るい日差しで目が覚めた。一つ伸びをし、欠伸を噛み殺す。急いで顔を洗い歯を磨く。そしてジャンが言っていた通り、暖かい格好をする。緑のニットに腕を通し、黒いスカートを履く。そして化粧に取り掛かる。もしかすると、何かサプライズがあるのかと思い、化粧に力を入れる。
 化粧が終わり、ジャンとラインをしていると、インターフォンが鳴る。こんな早い時間に誰だろう?と思いつつ腰をあげ、ドアスコープから相手の顔を覗くと、ジャケットにマフラーを巻いたジャンがそこには居た。
「ジャ、ジャン!?待って今すぐ開けるから!」
「……はよ。よし、ちゃんと着替えてるな」
「……どうしてここに?」
「あ?今日は何の日か聞いただろ?」
「……まさか会いに……」
「そのまさか。会うのは初めてだな。ヒロ、やっとちゃんと顔見れた」
「……ジャン〜〜!!!」
「うおっ」
 突然のことで驚いたが、彼が会いに来てくれた。嬉しさから、彼のことを思い切り抱きしめると、彼は笑いながらわたしを受け入れてくれた。子供をあやすよう、頭を何度も撫でてくれるジャン。それがさらに嬉しく、涙が止まらない。せっかく化粧をしたのに。でもそんなこと関係ない。ジャンがここに来てくれた。それだけで心が満たされる。
「ヒロ、泣き止めよ。こっからが本番なんだから」
「本番?」
「そ。ドライブデートすんぞ。こっちの土地分からねえから教えてくれ」
「うん……。あ、わたしプレゼント……」
「会えたのがプレゼントってことで。まあオレは用意してあんだけど」
「……何それ!ズルい!」
「ははっ、何とでも言え」
 ジャンは片手に持っていたコスメの袋を渡してくれた。中身を見てみると、わたしが欲しいと言っていた化粧品だった。嬉しくてお礼を言うと「……やっぱりオレもプレゼント欲しいな」と笑うジャン。
「あ、じゃあドライブしながら探す?」
「それもいいけど」
「、あ」
 彼はわたしの腰を引き、口付けをする。いきなりのことだったので、驚いて動けなかったが、ジャンが再び頬にキスを落とすのと同時に頭が動く。
「……ちゅーした?」
「した。いいだろ?恋人だし」
「……嬉しい。ジャン、大好き」
「オレもヒロが好きだ」
 再びキスを交わす。その後、彼の車に乗り色々な場所へ行き、デートを楽しんだ。ずっと疑問だった仕事はどうなったか聞くと「嘘だよあんなん。お前を喜ばせたくて吐いた嘘」だと。
 遠距離恋愛。どうなるか分からなかったが、ジャンとなら続きそうだ。彼の手を思い切り握り、町中のイルミネーションを眺めながら何度目かのキス。もっと彼を好きになったクリスマスイブ。


BGM:ポール・マッカートニー/Wonderful Christmastime
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