明日は何しよう(Jean)



 今日はヒロとの初デート。普段服など気にしていなかったが、この日は特別だ。彼女はイルミネーションが好きなようで誘ってくれた。自分からは中々言い出さないことだったので、彼女の誘いは嬉しかった。いつもは男の連れと遊びに行くことが多いため、香水など付けずに出掛けていたが、ヒロはどうやら匂いフェチらしく、俺の匂いが好きと前話していた。その匂いを首元に付け、余ったものを手首にこすりつける。
「もうこんな時間か」
 今は日が落ちるのが早い。オレの最寄り駅に着いたと連絡が来たため、駐車場へ行き、エンジンを温める。その後ヒロが好きそうな音楽を掛け急いで最寄り駅まで走らせる。
 駅に着くと寒そうに手を温めているヒロが居た。窓を開け「ヒロ」と呼ぶと、嬉しそうにこちらを見て「待ってたよ〜」とドアを開ける。
「待たせたな、悪い」
「ううん、そんな待ってないよ」
 彼女はそう言うが、耳元が赤くなっている。耳に手を当てると思ったより冷たく、温めるように撫でてやる。それが恥ずかしかったのか「大丈夫だよ」と見つめる。
「ねえジャン、良い匂いする」
「あー、お前が好きって言ってた香水かもな」
 すると彼女は、鼻をすんすんと鳴らし近付いてくる。その行為が可愛く、顎を上に上げてキスをする。予想外の出来事だったのか、目を大きく開け停止してしまった。
「ヒロも良い匂いすんぞ」
「え、あ、そう?えへへ、恥ずかしい」
 頭を乱暴に撫でると、前髪を気にして直す彼女。横目で見ると、前より前髪を切ったようだ。それに気付いてほしいのかどうかは分からなかったが「似合ってるぞ」と言うと、再び笑顔で笑うヒロ。
 車の中で色々な話をしていると、すぐに目的地に着いた。まだ完全に日は落ちきってないが、探索でもしてれば光のトンネルはすぐライトアップされるだろう。ぶら下がったままのヒロの手を握ってやると、にんまりと笑う彼女。その笑顔にはとことん弱い。思わずキスをしたくなるが、流石に人の目が気になる。オレが気にしなくてもヒロは気にするだろう。彼女の嫌がることはしたくない。彼女にとってオレが初めての彼氏らしく、色んなことが初めてのことらしい。だからこうして、デートするのも初めてのこと。イルミネーションを見に来るのは家族で来ることがあったらしいが、異性と2人は初体験だ、とデートの誘いを受けたときに嬉しそうに話していた。
 オレは写真を撮るのが苦手だったため、ヒロにお願いしたところ「わたし写真撮るの好きだから!」と快く引き受けてくれた。色々な場所を携帯で撮ってるヒロの後ろ姿を隠し撮りする。写真を撮る度、オレの方へ振り返り「ここ綺麗!」と笑顔で指を指す彼女は誰よりも可愛い。ここには、色んなカップルがいるが、ヒロが1番可愛いだろう。それは断言して言える。
「そろそろトンネルライトアップするみたいだね」
「だな。人混み出来てる」
 手を繋ぎながら光が灯るまで待つ。その間ヒロに体を預けるとどうすればいいのか、と少し困惑してる空気を出していたが無視をする。オレらは身長差があるため、写真は得意じゃないが、カメラを内カメにし「ヒロ」と呼ぶとこっちを振り向き、ぴったりとくっついてきたため、そのまま写真を撮る。すると鐘の音が鳴り、トンネルが灯りを点す。
「いつ見ても綺麗」
 彼女は人混みに飲まれつつも、一生懸命写真を撮っていた。そんなヒロの携帯を取り上げ、少し背伸びをし写真を撮ってやる。
「ほらよ」
「ありがとう、ジャン」
「……ああ」
 携帯を大事そうに握りしめ、反対の手はオレの元に。耳元で「あとでキスさせろ」と言うと一気に顔が紅くなる。表情がコロコロ変わる彼女が面白く、思わず笑ってしまうと「もう!」と怒りの言葉を受けた。
 その後一度に灯った場所を彼女のペースで歩いて行く。手が離れるのは写真を撮る合図。細かいところまで写真を撮るヒロのペースに合わせ進んでいくと、先ほどよりは小さくはあるが、トンネルがあった。そのトンネルをくぐり、モニターを撮るヒロを前に立たせ、後ろから抱き付く。突然のことで驚いたのか、体が反応したが彼女はカメラを内カメにし「はい、チーズ」とツーショットを撮ってくれた。一緒に写真を撮ることも初めてだったが、何故かその行為は慣れていた。ヒロの初めては全部オレがもらいたい欲があったが、友達やらで少しは慣れているのだろう。
 その後も違う場所で写真を撮り、オレはその後ろ姿撮ったり、ツーショットを撮ったりなど、有意義な時間が過ごせた。最後にオレが携帯を出し、彼女の名前を呼び、いくつか写真を撮った。それが嬉しかったようで「あとで絶対送って!」と声を大にして言うヒロ。何だかんだ言って、色んな女と付き合ってきたが、ここまで純粋で可愛かった女はいなかった。オレにとってもヒロは初めての存在だ。
 時間も過ぎ、お土産コーナーを回る。彼女は友達やら家族に、と物色し買い物を済ました。オレは特別渡す予定の人は居なかったが、いつも世話になってるマルコぐらいには渡すか、と思い適当に菓子を選び購入した。
「明日も仕事だし帰るか」
「うん!すっごく楽しかった。ありがとうジャン」
「……何番目?」
「うん?」
「何番目に楽しかった?オレとのデート」
「……1番に決まってる。わたしの彼氏はジャンだし。そんなジャンと大好きなイルミネーション見られてわたし世界で一番幸せかも」
「ハハッ、それは言い過ぎじゃねえか?」
「ううん、そんなことないよ。ジャン、大好き」
「……オレも、」
 帰りの車で何度かキスをし、お互いに愛を感じたところで、ヒロの家に着く。いつもだったら、そこで終わりだが、車から降り、抱きしめもう何度か目のキスをする。今日は全部オレからのキスだったが、いつかヒロからのキスをもらおう。ヒロの初めては全部オレでいいのだ。


BGM:iil.bell/meltrap
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -