君を見上げるのが好き(Levi)



「もう夏だね」
「ああ。クソ暑い中お前はそれを見せてどうするつもりだ?」
「え、涼みたいじゃん。海気持ちいいよ」
「……」
 クーラーを入れ、ソファでリヴァイと2人で携帯を見つめる。リヴァイは人混みを嫌うため、私が提案した「海水浴」には乗り気ではなかった。だが、付き合って初めての夏。色々提案するも、彼の顔はずっと顰めっ面だった。まあ彼はこういう顔ということもあるが、いつもより穏やかでは無い。
「ヒロよ、海も花火も逃げねえ。いつでもいいだろ」
「駄目!初めての夏なんだよ?大事にしなきゃ!」
「……お前はそういった所は頑固だな」
「もう付き合って半年も経ってるんだよ?リヴァイも私の性格分かってるでしょ?」
「ああ。ワガママで頑固で時々可愛らしい所がある」
 リヴァイはそう言うと私のおでこにキスをする。すると、腰に回っていた腕が抜け、すたすたとキッチンへ歩いて行った。きっと紅茶でも飲むのだろう。そんなリヴァイをよそに、私はもう一度海水浴のページを見つめる。家からは海辺は離れているが、車で行けば30分も掛からないだろう。
 彼と付き合う前に、友達と行く予定だったプールのために水着は買ってあった。オフィシャルダー水着を買ったのだが、結局無くなってしまい、その水着はタンスの中に眠ったままだ。リヴァイは水着を持っているのだろうか。それを確認するため、私もソファから立ち上がり彼の元まで歩く。
「ねえ、リヴァイは水着持ってる?」
「あ?ああ……一応な」
「え!ならいいじゃん!明日行こ!」
「はあ?本気で言ってんのか?」
「当たり前。ね、可愛らしい私の水着姿見たくない?」
「……見たくないと言ったら嘘になるな」
「ん?」
 彼と対面すると、先ほどよりは穏やかな顔をしていた。そのまま引き合うように何度もキスをする。リヴァイの発言が理解できず、一通り愛を感じたあと「どういうこと?」と尋ねた。
「ヒロは俺のものだからな。お前はスタイルがいい。海水浴に来る男なんて碌な奴が居ねえ。ヒロの姿を見てナンパしてくる奴も居るだろうな」
「それってつまり?」
「水着姿のお前を知らねえ奴にジロジロ見られたくねえってことだ」
 私自身はスタイルがいいとは思ったこともない。だが、彼氏のリヴァイがそう言うのであれば、良いのかもしれない。その言葉が嬉しく、頬を両手で押さえると「分かったか?」と髪を撫でられる。
「……でもリヴァイの水着姿見てみたい」
「あ?俺の体なんていっつも見てるだろ」
「明るいところで見たいの!あと雰囲気大事じゃん!」
 必死に訴えると、大きく溜息を吐く彼。これは私の押しに負けた合図だ。皆からはしつこい、と言われる性格だが、リヴァイ相手にはこれが1番効くのだ。
「はあ……うるせえな。だが、明日は無理だ」
「なんでー?」
「午前中打ち合わせがある。その後は空いてるが……」
「あ!じゃあ海水浴じゃなくてさ」
「何だ」
「ナイトプール行かない……?」
「……考えとく」
 リヴァイはそう言うと書斎へ向かっていった。私も寝室へ行き、近場でやっているナイトプールを探す。しかし、探してる内に夢の世界に入ってしまった。夢ではリヴァイが浮き輪に私を乗せてくれ、そのまま一緒にお酒を飲んでいた。

「……何時?」
 目を擦りながら時計を見ると19時を回っていた。しまった、と思い急いでリビングへ行くと、既に料理は準備されていた。
「ごめん、寝ちゃったみたい」
「構わない。どうせ何か調べ物してたんだろ?」
「……リヴァイはもう少し鈍感になった方がいいよ」
「ハッ、ヒロにはもう無理だな」
 洗面台へ向かい顔を軽く洗い、口を濯ぐ。そのまま手も洗い、再びリビングへ。彼はエプロンを外し、料理を運んでいた。今日のメニューはオムライスだった。リヴァイのオムライスはとても美味しい。
「頂きまーす!」
 手を合わせ、一気に頬張る。熱々なケチャップライスにふわとろの卵のマッチング。とても美味しく、しっかり噛みしめて味わう。リヴァイはビールをコップに注ぎ、テレビを見ながら食べている。夜のニュースを見ていると丁度今話題の、ナイトプールを特集していた。アナウンサーに答える女性達は「すごく楽しい」と皆笑顔で言っていた。
「ねえ、やっぱり海水浴よりもナイトプールがいい」
「俺はどっちでもいいがな。ヒロが行きたい方を選べ」
「じゃあ明日の夜、行こう?場所調べとく!」
「ああ」
 そのままご飯を楽しみ、一緒にお風呂に入りながら明日の計画を立てた。確かにリヴァイの体はいつも見ている。だが、水着姿のリヴァイは見てみたい。きっと、いつもより格好良いだろう。そんな妄想をしていると「のぼせんぞ」と腕を引かれる。
「じゃあおやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
 電気を消し、お互い携帯で自由な時間を過ごす。私はナイトプールの時間や場所を調べ、そのリンクをリヴァイの携帯に転送する。そして携帯の電源を落とし、二度目の夢の世界へ入った。

 朝、一緒にご飯を食べた後、リヴァイは会社へ向かっていった。その間にプールの準備をする。タオルに水着、そして携帯が濡れてもいいように防水ケースをバッグへ入れ込む。出掛ける前に彼の分も用意しといてくれ、と言われたため、タンスの中から一生懸命水着を探す。彼の性格上几帳面に入れてあった為、すぐに見つかった。
 なんやかんやしてる間にもう夕方になっていた。この時期は、日が落ちるのが遅いため、気付かずのんびりと過ごしてしまった。下に水着を身につけ、服を羽織っていると鍵の開く音がする。リヴァイが帰宅してきた合図だ。脱衣所から顔だけだし「おかえり!」と言うとリヴァイも脱衣所まで来る。その場で手洗いうがいをし、私の頬に優しいキスを落とす。
「そろそろ向かうか?」
「うーん。そうだね。向かってる間に日は落ちるだろうし」
「そうか。なら行くぞ」
 会社までは私服で行ったようで、そのまま着替えずに外に出る彼。その後を追うように荷物を持ち、外へ出る。部屋はエアコンが付いていた為、涼しかったが、この夏の熱気は耐えられない。少し歩いただけで汗が出そうだ。
 無事荷物を車へ運び、助手席へ座る。カーナビにプールの住所を入れ、ナビが案内しくれる。彼の車は基本音楽は掛かってないが、今日は機嫌が良いのか「好きな曲かけていいぞ」とお許しをもらえた。

「ここだね」
 無事プール場に着いた。外から見る限りでも人が多いのが分かる。きっと学生さんたちだろう。リヴァイの顔を見ると、酷く嫌そうな顔をしていた。心の中で謝り、入場する。
「じゃあ着替えたらここで」
「分かった」
 更衣室へ入り、来ていた服を脱ぐ。やはり去年買ったオフィシャルダー水着は可愛い。リヴァイの着替えも終わっただろう。防水ケースに携帯を入れ、急いで集合場所へ向かう。
「お待たせ!」
「ああ。……ヒロ、お前」
「え?なんか変?」
「……だから嫌だったんだ」
「へ?私悪いことした?」
「お前は悪くない」
 リヴァイが歩いて行くのを必死に追いかけていると、途中で立ち止まるリヴァイ。私の方へ振り向き、手を差し伸べてくれる。その手にそっと触れると強く握りしめてくれた。1番大きいメインのプールは沢山の人が居た。しかし、彼はプールへ向かわずに奥の方へ行ってしまう。やはり嫌だったのか……としょぼくれていると「ほらよ」と大きな浮き輪を渡してくれた。
「可愛い!」
「ヒロが喜ぶと思ってな。さっき浮き輪が何処にあるか聞いたんだ」
「なるほど……ありがとう」
 浮き輪を受け取り、彼の水着姿をじっくり見つめる。上には薄いパーカーを羽織っており、水着姿も様になっている。リヴァイの横を通り過ぎる女の子達はヒソヒソと「あの人かっこよくない?」と話している声が聞こえた。昨日リヴァイが言っていた意味が、今なら分かる。こんな格好良い姿、誰にも見せたくなくなってしまう。そんな考えをよそに、リヴァイは私の腕を引っ張る。
「ねえリヴァイ?」
「あ?なんだ」
「リヴァイは私のものだもんね?」
「フッ、何を今更」
 お互い笑い合い、1番目玉のプールへ入る。夢と同じよう、リヴァイが浮き輪に乗せてくれ、プールを楽しんだ。
 

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