運命の出会いさ1(Levi)



 最近友達に聞いたマッチングアプリ。男との縁がないわたしに気を遣って、教えてくれた。年齢、性別、簡単な自己紹介で登録でき、自分の家から近い人をマッチングしてくれるアプリ。最初は気が乗らなかったが、そんな簡単に出会いが訪れるならやってみようと、アプリを開く。
「あ、この人かっこいい」
 名前を見ると『リヴァイ・アッカーマン』と書いてある。年齢は何故か非公開だが、代わりに顔写真が載せてある。写真は他撮りっぽいが、顔立ちはしっかりとしているし、ハッキリと言えば好みの顔だ。
「チャット送ってみよ」
 わたしの家からの距離はそこまで離れていない。『初めまして。ヒロと言います。よければお会いしませんか?』とリヴァイさんにチャットを送る。するとすぐに携帯の通知音が鳴る。もう返事が?と思い、携帯を開くとアプリからの通知。タップし見てみると『初めまして。お時間はいつがいいですか?』と丁寧な文章が返ってきている。
「歳離れてないか心配だけど、大丈夫だよね」
『20時はどうですか?』と送ると、構わないとのこと。家も近いし、近場の居酒屋でいいだろう。場所の指定をし、時間に間に合うよう準備をする。最近は夜でも気温が高い。白の花柄のワンピースを引っ張り出し、化粧に取りかかる。わたしの顔はアプリに登録していないため、リヴァイさんは初めて見ることになる。第一印象は顔で決まるとは、よく言われている。好印象を与えるために、いつもよりは大人しめのメイクをする。
「これでチェンジだったらへこむなあ」
 黒のパンプスを履き、家を出る。どんな人なんだろうな、とワクワクした気持ちで居酒屋へ向かう。浮かれていた気持ちだったため、お店にはすぐ着いた。外でリヴァイさんらしき人を探すも、見当たらない。先に中に入っているかも、そう思いお店に入ろうとすると「あんたか?」と声を掛けられる。
 後ろを振り向くと、想像していたよりかは低い背、しかし顔はアプリに登録されていたままの顔だ。「あ、わたしヒロです」と言うと「ああ」と言い、お店に入っていく。思っていたより、無愛想な人なのかもしれないという不安な気持ちと共に、リヴァイさんの後ろについて行く。
 中に入り、空いていた席に向かい合わせで座る。「生で」「わたしも同じので」と店員に注文する。仕事終わりだったのか、リヴァイさんはスーツ姿だ。ネクタイを緩める仕草は様になっており、素直にかっこいいと思う。
「なに頼みます?」
「なんでもいい。お前が好きなもの頼め」
「……はい」
 アプリとは違う口調。怖い人かもしれないが、この場はどうにか持ち越さなければいけない。メニューを見ているわたしに「おい」と低い声で再び声を掛けられる。
「え、なんでしょうか……」
「ヒロと言ったか。よくアプリで男を捜してるのか?」
「いえ……。たまたまやってみようと思って」
「そうか」
 会話は続かない。適当に食べ物を頼み、先ほど頼んだビールが届く。
「……お疲れ様です」
「ああ」
 ガツンと鳴るジョッキ。喉を潤すために、半分ほど一気に飲むと「飲める奴なんだな」とリヴァイさんのジョッキも半分ほど減っている。
「そこまで得意なわけじゃないんですけど、今日は飲みたい気分で」
「奇遇だな」
「リヴァイさんもですか?」
「こういう場所は得意じゃねえな。進んでは来ねえ」
「騒がしいのが苦手、とかですか?」
「それもある」
 それは申し訳ないことをした。謝ると「気にしなくていい」とお通しを食べるリヴァイさん。角ばった綺麗な手を見ていると「……食いにくい」と言われ、ジッと見つめている自分がいて恥ずかしくなった。

 今日は飲みたい気分だと言ったのは自分だ。すぐにジョッキを空け、注文するわたしを見てリヴァイさんは「飲み過ぎなんじゃねえか?」と、わたしの持っているジョッキを奪う。
「いいじゃないですかー!暫く飲んでなかったんですよ!」
「それでも飲み過ぎだ」
「だって、こんなかっこいい人と飲めるなんて、今日だけですもん……」
「ヒロ、俺は逃げねえぞ」
「とか言ってー!今日限りなのわたし知ってますー!」
「……酔うと面倒なタイプなんだな」
「あ、今面倒って言いました−?」
 眉間にしわを寄せるリヴァイさんの頬を撫でると、びっくりしたようで、少し目を見開いた。
「……ところで、今お前は俺のことをかっこいいと言ったな?」
「え、ああはい。リヴァイさんはかっこいいですよー!今まで出会ってきた人の中で1番!」
「俺もヒロの顔は嫌いじゃねえ」
「あはは、リヴァイさん冗談も言えるんだあ」
「……」
 再び空いたジョッキ。次のお酒を注文しようとすると、リヴァイさんの腕が伸びてきて制止される。
「どうしました?まだ飲みたいんですけど……」
「それならいい場所を知ってる」
「え?どこですか?」
 リヴァイさんは、店員を呼び会計をしようとする。「2軒目行くんですか?」とわたしも財布を出そうとすると「出すな。今回は俺が出す」と席を立つ。着いていこうとするも、足がうまく動かない。そんなわたしを見かけ、腕を組むリヴァイさん。
「そんな状態で行けると思うか?」
「んー……でも、まだ……」
「ならいい。次の場所は俺も朝まで付き合える」
 リヴァイさんにリードされながら、外を歩く。夜風がわたしの頬を撫で、少し酔いが覚めた心地がする。リヴァイさんに寄りかかると、石けんのようないい香りが鼻をくすぐる。
「ヒロ」
「はい?リヴァイさんどうしたんですか?」
 話し掛けられたため、リヴァイさんの顔を見ると、そのまま顔が近づきキスをされる。
「……朝まで楽しめるな。なあ、ヒロ」
 少し笑ったように見えた顔。タクシーを引っかけ、そのまま乗り込み、住所を言うリヴァイさん。その場所がどこか分かるかは、今はまだ分からないまま。


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