臨也の恐ろしい発言を聞いて唇を離した静雄は、正臣のすっかり窮屈になってしまったジーンズの前に触れた。
「ど、どこ触って!」
「ほら、おとなしくして。相手は酔っ払いだよ?」
 ようやく解放されたと思った両手は、今度は臨也につかまれた。
「ちょ、放せよっ」
「いいからいいから。実はシズちゃんフェラもうまいんだよね」
 背後から正臣の肩に顎を乗せた臨也が、いまだ静雄の手が触れている股間を覗き込む。
「元気だな」
 静雄がつぶやいた。彼の視線の先にあるのが自らの性器だと思うと正臣は泣きたくなったし、いくら年上とはいえ、まだ全然若いはずの静雄にそんなことを言ってほしくはなかった。
「し、静雄さ、やめてください、触らないで……」
 先ほどから足の間で怪しく動く静雄の手が怖い。酒のせいで熱をもった大きな手が、ジーンズの上から正臣の急所をつかむ。長い指が膨らんでしまったところをなぞる。
「ひっ、や、やめっ、静雄さっ」
「そんなに気持ちよかったのかよ。こんなになるくらい」
 ジーンズの上から丁寧に刺激されて声が上ずる。みっともなく息を乱していたら、静雄の手がベルトにかかった。
「わ、わっ、待て、待ってくれよ!」
「つらいだろ、このままじゃ」
「だからって、あ、ちょっ」
 手際よくベルトを緩められ、いとも簡単にジーンズを下ろされた。静雄の前にトランクスがさらされる、変な柄じゃなくてよかった、と正臣はとっさに思ったが、そういう問題でもなかった。
「若いねえ」
 久しぶりに口をきいた臨也が、耳に噛み付いてくる。同時に静雄の手によって下着も取り去られた。
「嫌だっ、見るな!」
 むしろ見られているところを見たくなくて、正臣は目をつぶった。しかし、すぐにむき出しの性器に触れる他人の、それも女の子とはまったく違う手の感触に瞠目した。静雄のあの大きな手が、正臣の陰茎に触れて、長い指が絡んで、ゆっくりとこすられる。単調な動きなのに、正臣はますます強く勃起するのがわかった。
「ぅあっ……ん、くっ」
 顎を引いて声を殺そうと歯を食いしばる。すると視界に、正臣の足の間で上体を屈めた静雄が張り詰めた陰茎を口に含む様が飛び込んできた。
「あ、あっ……」
 驚愕よりも羞恥よりも快感が勝った。信じられない。でも気持ちがいい。
「どう? シズちゃんの中、気持ちいいだろ?」
 正臣の思考を読んだかのように臨也が囁いて、両腕の拘束が解かれた。
「ふっ、ん、ぅ」
 自由になった手で、正臣は片手で自らの口をふさぎ、もう一方の手で静雄の頭に触れた。少し乾燥しているが、思ったよりも指通りのいい髪がくすぐったい。静雄はそれをどう受け取ったのか、かすかに瞳を細めると、正臣の性器を深くくわえ込んだ。
「ん、んー……っ!」
 与えられる刺激が強すぎてつらい。目をつぶると涙があふれた。
「かーわいい。気持ちよすぎて泣いちゃった?」
 臨也は正臣のうなじに唇を寄せ、そこに軽く歯を立てた。そうしながら、シャツの中に手を滑らせる。
「わ、肌すべすべ。子供みたい」
 薄手のシャツをめくられると、冷房の効いた室内の空気が肌寒く感じられた。
「んっ」
 臨也の繊細な指が乳首をつまみ、冷気によってかすかに立ち上がったそこを引っ張り、爪を立てる。
「あっ、いたっ……」
 正臣は思わず声を漏らした。
「ああ、ごめんね。ここはそんなに感じないんだ。でもすぐによくなるよ」
 臨也は優しげに笑い、先ほどかすかな痛みが走った乳首をさすった。そうしている間にも、静雄は口淫を続けていて、正臣は足の間にある金色の頭を太ももで緩く締め付けた。
「ん、もういっちゃう?」
 乳首の先端を軽く引っかかれながら問われ、正臣は頷くとともに両手で静雄の頭を遠ざけようとした。
「し、ずおさっ……も、出るから、離れてっ……」
 一瞬、視線だけを正臣に向けた静雄は、今までよりも激しく、その唇で肉棒を扱き始めた。
「あっ、も、放して、しずおさっ、ぁ、あっ」
 喉の奥までくわえられ、吸われながら睾丸をもまれて、正臣は耐えきれずに射精した。その瞬間、後ろから伸びてきた臨也の手が静雄の髪をつかんで強引に顔を上げさせたため、勢いよく放たれた正臣の精液が彼の顔面を汚した。
「ははっ、シズちゃん顔射されちゃったねー。どう? 現役高校生の精液のお味は」
 正臣は血の気が引いた。彼の口に出してしまうのもあれだと思ったが、顔射など最悪だ。恥ずかしい。死にたい。しかしそんな正臣の苦悩や羞恥に構うことなく、静雄は屈めていた上体を起こすと、顔に付着した粘液を指でぬぐい、あろうことか口に含んだ。
「ん、ちょっと濃いな」
 平然と感想を口にする静雄に、正臣は開いた口がふさがらない。
「な、何やって……」
「だめだよ紀田君、若い子はちゃんとこまめに発散しなきゃ。君、彼女いるんだろ?」
「んなことはどうでもいいんすよ! 何やってんすか静雄さん! そんなもんなめないで下さい!」
 正臣は床に膝をつき、その辺に転がっていたティッシュの箱から何枚か抜いて、静雄の顔の汚れをぬぐい始めた。
「すいません静雄さん……俺がまんできなくて……目とかに入ってないですよね?」
「いや、つーか、もともと飲むつもりだったしな」
 おとなしく顔をふかれながら、彼はとんでもないことを口にする。
「飲むって……何を……」
 信じたくなくて尋ねかけると、再びぴったりと後ろにくっついてきた臨也に尻をもまれた。
「わあっ! な、なんなんすかっ」
 振り返ると、なんともいやらしい顔で臨也が笑った。
「いやあ、小さくてかわいいお尻だなあと思ってね。なんか二人で仲良くしちゃってるし、俺は正臣君のお尻で遊んでようかなーって」
「い、臨也さん、痛いっ……」
 尻の肉を強くつかまれ、正臣は思わず目の前の静雄の肩に手をついた。するとそのまま腰を引き寄せられた。
「え、静雄さ……」
「あーちょっとシズちゃん、独り占めはよくないよ。やっぱりみんなで楽しまないと」
「誰もしてねえだろ独り占めなんか」
 静雄はいまだ硬いままの正臣の乳首に吸い付いた。
「ひっ、や、やめっ」
 唇で挟まれ、もう一方の突起にも指を這わされる。充血し、敏感になったそこから微妙な感覚を得ながら、正臣はすがるように静雄の首に腕を回した。
「ふうん。まあいいや。俺はこっちで楽しませてもらうから」
 臨也はそう言うと、両手でつかんだ正臣の尻を左右に広げた。
「なっ、臨也さっ……」
「あーいいよいいよ。俺のことは気にしないでシズちゃんに乳首開発でもしてもらってて。俺はその間アナル開発に勤しむから」
 開発ってなんだ。嫌な想像ばかりが先走って、しかしそれが単なる妄想にとどまらないことを今日の経験で知っている正臣は、臨也の指が尻の穴に触れた瞬間、息をのんだ。
「どこ触って、っ」
「んー? 正臣君は処女かな? こっちの経験ないよね」
「あ、あるわけっ」
「やったねシズちゃん。初モノいただきだよ」
 なんて下品な男だ、と思いながら正臣は静雄の腕の中でもがいた。
「静雄さっ、放してくださいっ……」
 腰に回された静雄の両腕はびくともしない。誰だ、酔ってると馬鹿力が発揮されないなんて言った奴。

20100809
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