「あ、ああっ、いっ」
 熱い性器が先ほど広げられた入り口から、粘膜を掻き分けて入ってくる。痛いというよりは苦しかった。腹部が内側から押し上げられる苦痛にたまらず息を止める。
「あーだめだって、ちゃんと息して。じゃなきゃもっとつらいよ」
 臨也に促され、正臣は意識的に呼吸を行った。何度目かに息を吐き出したとき、臨也の性器が一気に突き入れられた。
「あああっ!」
 あまりの衝撃に正臣は声を上げ、体を痙攣させた。
「そんなに大きい声出しちゃだめだよ。いつ誰が更衣室に入ってくるかわからないんだよ?」
「ひっ、ぁ、いざやさっ……」
「ん、何? そんなに早く動いてほしい?」
 紀田君は淫乱だね、と笑って、臨也が腰を打ち付ける。
「ぅ、ぐぁっ……」
 正臣はしばらくの間、ただひたすら苦痛に耐えた。やがて先ほど指を抜かれるときに得たのと同じ気持ちよさを、臨也の張り詰めた陰茎が粘膜をこすりながら出て行くときに覚え、その後、偶然なのか意図的になのか、あの、指でさんざん押された場所を今度は性器に責められて、正臣は確かな快感に涙をにじませた。
「ふっ、う……な、んでっ」
 腰を揺さぶられながら正臣はそう口走った。臨也は唇の端を持ち上げ、性器の先端で正臣の弱い部分を突き上げた。
「あああっ、や、いざやさっ、そこ、いやだっ」
「なんでとか嫌だとか、さっきから何言ってんの? 気持ちいいんだろ? 君も」
「ひぁっ、ああっ」
「こっちもすごいことになってるしね」
 臨也は膨張しきって先走りをこぼす正臣の陰茎をつかんだ。
「気持ちよすぎてもあんまり叫んじゃだめだよ」
 一瞬彼の言っていることが理解できなくて後ろを向きかけた正臣は、臨也が壁のフックにかけられていたシャワーに手を伸ばすのを見て息を止めた。そのときに感じた嫌な予感は当たり、湯を流し続けるシャワーが正臣の性器に向けられた。
「ああああっ」
 あまりの刺激に正臣は臨也の性器を思い切り締め付けた。体内に注ぎ込まれる感覚で、正臣は精液を放たれたことを知った。
「あーあ、なんか不意打ち。出ちゃったよ」
「い、ざやさ、あ……っく」
「なに? 気持ちよすぎて叫べもしない?」
 いまだシャワーになぶられている性器は限界まで張り詰めているにもかかわらず、吐き出すことはかなわなかった。
「紀田君の中すごいことになってるよ。熱いしぎゅうぎゅう締め付けてくるし」
 痛いほどの快感から逃れようとよじった腰は臨也につかまれ、再び硬さを取り戻しつつある彼の性器に奥を突かれた。
「ひっ、も、とめっ……」
「強すぎていけない? でも頭おかしくなりそうなくらい気持ちいだろ?」
 楽しげに言った臨也が片手で正臣の性器を固定し、亀頭にシャワーを押し付けた。そのまま噴出口をこすりつけられ、あまりの刺激に声も出なくなる。充血した亀頭にシャワーを近づけたり離したり、変化する水圧に翻弄される。
「ぁああっ! も、やだっ……いざやさっ」
 両足が震えて立っているのもつらかった。流しっぱなしのシャワーはだいぶぬるく感じられるとはいえ、狭い個室の中では熱がこもっている。息苦しさと強烈な快感に涙が止まらない。
「泣くほど気持ちいいの?」
 肩のあたりに唇を押し当てられ、皮膚をきつく吸われる。かすかに走った痛みにさえ、正臣は過剰に反応して体をはねさせた。
「かわいいけど、なんか切なくなってきちゃった」
 臨也は苦笑しつつ、正臣の性器からシャワーを遠ざけた。それは再びフックにかけられる。
 正臣は暴力的な快感から解放される代わりに、ひりつくような熱さを局部に感じていた。個室内の蒸し暑い空気でさえ、敏感になった性器には耐え難くて、思わず入れられたままの臨也の陰茎を断続的に締め付けた。
「なに? おねだり?」
「ちがっ、います」
 違うと言いながらも正臣は体内に納められた肉棒を締め上げ、熱をもってうずく自らの陰茎に手を伸ばした。
「へえ、自分でしちゃうんだ」
 感心したような臨也の声が聞こえたが無視して、絡めた指を上下に動かす。
「ぁ、あっ……」
 普段の自慰行為では絶対に得られない快感が正臣の全身をしびれさせた。途中から臨也が少しの間止まっていた腰の動きを再開させて、感じるところをえぐられると正臣はますます高ぶった。
「あ、やぁっ……いざやさ、おれ、またっ、あ!」
「うん。いきそうなんだろ? 俺も中に出すよ。後でちゃんとかき出してあげるから」
 とんでもない場所でとんでもない人ととんでもないことをしてとんでもないことを言われているというのに、正臣はどうしようもなく興奮していた。
「あっ、あ、いざやさっ」
「そんなに名前呼ばないでよ。かわいいな。前触るの手伝ってあげる」
「あああっ! あーっ……」
 臨也のつめの先で尿道のあたりを強くかかれた瞬間、正臣はそこから精液をあふれさせた。
「ひっ、んぅっ……」
 射精してしまった後も臨也の手は最後まで絞り取ろうとするように、正臣の手ごと性器をしごいた。加えて出し入れされる彼の性器の勢いも増すものだから、正臣はその間ずっと快感から逃げられなかった。
 ようやく臨也に本日二度目の中出しをされるころには息も絶え絶えで、性器を引き抜かれると同時に膝の力が抜けた。
「おっと、大丈夫?」
 臨也に支えられ、正臣はゆっくりとシャワー室の床に腰を下ろし、壁に背中を預けた。正面にかがみこんだ臨也に、濡れた前髪をかき上げられる。
「なんで、こんなこと……」
 疲労と暑さで頭がくらくらした。臨也はシャワーをフックからはずして、正臣の体を流し始めた。
「なんでって言われてもね。気持ちよかっただろ? 君も」
 行為の最中に聞いたのと同じ言葉が返ってきた。正臣はもう考えるのも億劫で、何も言わずに瞳を閉じた。そのまましばらく黙って体を洗われていたが、ふと唇にやわらかい感触がして、ゆっくりと目を開けた。すると間近に臨也の顔があって、彼と唇が触れ合っているのだとわかった。彼のまぶたはやはり伏せられており、その下の瞳から彼の真意を推し量ることは不可能だった。
 しばし重なっただけで、唇は離れていった。それと同時に開かれた臨也の瞳を見つめて、正臣は先ほどと同じ問いを口にした。なぜ、と。
「君はさっきからそればっかりだね。少しは自分で考えなよ」
 臨也は微笑んで、再び正臣に口付けた。

20100821
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