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  第陸話


現在私は宛てがわれた自室で1人ダンボールの中身を広げている。
斬島からの「家具買いに行こうぜ!」という、ニュアンス的にサッカーやろうぜ!みたいなお誘いは後日という事にするのに軽く3時間は掛かったと思う。すっごく頑固だったよ斬島、どうした斬島。

ダンボールの中身はやはりと言うべきか、下着や私服等が数枚入っているだけだった。しかし、1番底の方に茶封筒が入っているのを見つけて私はふと嫌な予感がする。

大抵こういう手紙は二次創作的には、神様からの手紙だったりするんだよなぁ……。そして読んだらなんか手違いでトリップさせちゃった☆とか、もう元の世界には帰れないYO!とか巫山戯たことが書かれてたりするんだよなぁ……。

そっと手を伸ばし手紙を取ると、ゆっくりと封を切る。中からは1枚の手紙のみ。意を決して私はそこに並ぶ文字へと目を滑らせた。


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まずは、初めましてかな。
俺の名前は殺部。普通の獄卒になりたかった、普通じゃない獄卒だよ。
君には悪いことをしたと思う。
本当なら、君を巻き込むつもりなんて無かったんだ。
だけど、俺にはもう何もかもが恐怖でしかなくてただこのいいようもない不安感から逃げたくて、禁忌を犯した。
落ち着いて聞いてほしい。
俺はとある魔術を使った。それは俺という存在と、平行世界の俺という存在をトレードするという魔術だ。
そう、今君がこの手紙を読んでいるというという事は、きっと成功していると思う。
だがいくら違う世界の俺だとしても、この世界では生きていけないかもしれないと思って、俺の力と必要最低限の記憶をいくらか君に授けてある。
最後にもう一度だけ謝らせてほしい。そして、これからの君の人生が華やかなものになることを願っている。


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私は最後の文字まで目を通すと、震える手をでそっと目を覆う。
……ま、まさか立ち位置交換系そっち系だったかー!!
しかも何か記憶と力を授けたって……RPGの世界か!!あ、此処二次元だった!!

一人じたばたと悶絶していると、突然手紙がぼうっと炎をあげその姿を消した。
どうやら、誰かがこれを読み終えると自動で消えるようにしていたんだと思う。もうこの殺部さん、獄卒辞めて魔導士にでもなればよかったんじゃない?

とにかく、何故肋角さん達が私の名字を知っているのか、という謎は消えた。そして新たに殺部さんの能力と記憶という謎が増えた。なんてこった謎がまた一つ増えたぜ!


「……まあいいや、片付けよ」


粗方テンションが落ち着いた私はいそいそと彼が残してくれた荷物を片付ける。男物の服しかないという事は、彼もまさか女の私が来るとは思いもしなかったのだろう。
これ、私生きていけるかなぁ……。死ぬまでに木舌と晩酌したり、田噛と将棋したり、平腹と馬鹿やったりしたいなぁ……。

ぼふり、とベッドに倒れ込みこれからの事を考えていれば、いつの間にか私は夢の世界へ飛び立っていたのだった。


そして、次に目が覚めた時……私は彼が残した記憶を手に入れ、重大なことに気が付いた。
お風呂入ってないし、キリカさんのご飯を食べ損ねた……!!


 

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