clap story | ナノ



  第参話


【俺の嫁が】二次元の嫁が目の前にいる時の対処法【飛び出してきた▼】

脳内でそんなスレを立てている場合ではないのは分かっているのだが、これは予想外過ぎた。出来るだけ動揺が顔に出ないように表情筋をフル活用して平然を装うが、誤って銃の引き金を引いてしまった。
カチリ、と静寂の中引き金を引いた音が響く。真顔の斬島は動かない。それと比例するように私の心臓はまるで某漫画の効果音のようにドドドドとハイスピードで鼓動を鳴らしている。……終わったな、私。

「……すまない、助かった」

……はい?
何故礼を言われたのかが分からず、そのまま斬島を見ていると彼はちらりと自身の背後を見た。
そこには真っ黒な人……のような姿をした何かがまるで何者かに撃たれたように倒れていた。もしかしなくても、斬島は私がこいつを倒したと思っているのだろうか。
いや、何回もいうがこの銃はエアーガンだし、弾も入ってないんだよ。
しかし、此処で否定すればまたややこしいことに為りかねない……。そこで、私が出した答えは……。

「……礼はいい。私はやるべき事をしただけだ」

うん、もう自分の手柄にしちゃいました。
そして私は何事もなかったように外套の中に銃を仕舞い込んだ。

「お前も銃が得意なのだな。佐疫が聞いたら嬉しがるだろう」
「……そうか」

動揺しきっている私の様子には気付かず、目の前の斬島は何処となく楽しそうに佐疫の名前を出した。
だが残念ながら佐疫と会えたとしても私自身は銃の知識なんぞ皆無だから絶対に佐疫は嬉しくないと思うよ。

「すまない、自己紹介がまだだったな。俺は斬島だ」
「……綾部だ」

知ってるぅぅぅぅぅぅぅ!!とは言えないので、私は出来るだけミステリアスな男を演じながら自己紹介に答えた。
だって確か公式的に獄卒乙女はセーラー服なんだよね?私今佐疫用に作った衣装を着ているんだよ?佐疫がどれだけエンジェルでも彼は立派な男だ。
そう、この衣装を着ているという事は男でなければ可笑しいのだ!頑張れ、学生時代に演劇部で鍛えた演技力……!!
すると、斬島は目を見開いてぼそりと呟いた。

「……お前があの殺部か」

あの、すみません【あの】って何ですか?



 

[back]