clap story | ナノ



  第壱話


皆さんこんにちは。あ、昼じゃない?でもいいや、こんにちは。
私は綾部。名前は個人情報保護の為に伏せさせてもらうよ。

突然なんだが、私は自他ともに認めるほどのOTAKUだ。
コスプレなんかもやっているし、サークルだってお手の物☆なほどだ。
今日だって最近の私のバイブル……そう、獄都事変のイベントに親友の悠ちゃんを引き連れてやって来たというのに……。


「……ここは何処だ……?」


自前で作った衣装とウィッグを付け、いざ神サークル様のところへ!と意気込んでいた私。しかし、背後から誰かに声をかけられ振り返ると……私は見知らぬ場所に居たのだ!
きょろきょろと辺りを見渡してみるも、使い古された机や本が乱雑に置かれている廊下が見えるだけ。
でもこの机の乱雑加減に何処か見覚えがあるような気がして、頭に引っかかる……。


「携帯も圏外だし、荷物は殆どクロークにあるし……。どうしたものか……」


スッと外套に作ったポケットへ携帯を仕舞い、私はウィッグを外す。結構ウィッグって重いんだよね。
それに万が一走って逃げなければならないような事態になれば邪魔になる。
そう思い、私はそのままぱっくりと口を開いたような穴にウィッグを投げ落とした。さらば、佐疫ウィッグ……。


「とりあえず、出口を探すか」

パンパン、と軽く手を掃ったあと、私はお手製の帽子を深くかぶり直し出口を探し始めたのだった。


 

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