「木ノ瀬!!そのアイスは俺のものだ!」

「なにいってるんですか、宮地先輩?僕が先に取ったんですから、僕のものです!」

「ほらほら二人とも、落ち着いて・・・」

いつもの宮地君と梓君の喧嘩を、誉先輩がなだめてる
すごくあたりまえで、何気ない光景なのに、顔が自然にほころんでしまう


「宮地君、私のアイスそれと同じだから、あげるよ?」

はいっ
といって渡そうとすると、誉先輩がそれを阻止する

「だーめっ。それは僕にちょうだい?宮地君にはもったいないから」

にこりと微笑んで、宮地君を見る
なんか少し怖い

「ヒューヒューおあついねぇ」

犬飼くんがちゃかしてくる。
そして白鳥くんがなぜか涙目になっていて、小熊くんがそれをなだめている

そして梓君が宮地君に「残念でしたね」といって笑うと、宮地君が怒って
またにぎやかになった。


「ねえ、なまえさん、ここはにぎやかすぎるから、外にでない?」

しばらくその光景を見ていると、突然誉先輩が耳打ちしてきた

そして私が小さくうなずくと、誉先輩はまた微笑んで、私の手をひっぱって外にでた。


外にでると、さっきの騒がしさが嘘のように静かだった

「ふふ。ここはあそこより断然静かだね」

「そうですね。静かすぎて、寂しいくらいです」

土手のあたりに二人で座る

手にいまだ握ったままのアイスクリームは少しとけかかっている

「あ、そのアイス。僕にくれるんだったんだよね?」

「あ、はい!どうぞ」

誉先輩は、「ありがとう」といって受け取り、ひとくちなめた

「君は、騒がしいのが好きなの?」

「なんでですか・・?」

「さっき、ここが静かすぎて寂しいって言ってたからさ」

突然の問いかけに少し驚いた
夏の優しい風が私の頬をかすめていく
瞳をとじて、またあける

「騒がしいの、嫌いじゃないです。でも違います。私が好きなのは騒がしいのではないんです」

私がそういうと、誉先輩が少し首をかしげた

「私が好きなのは、弓道部の人たちなんです」
「弓道部の人たちとのおしゃべりが好きなんです」

ただの騒がしいとは違う
仲のよさとか、そういうことすべてが感じられる、弓道部の仲間の会話が好きなんだ

「僕も好きだよ」

そう言って笑顔になる
その笑顔が少しまぶしくて、直視できなくて
私は立ち上がって空を仰いだ

「だって、奇跡ですよ。こんな広い世界で私たちが会えたのって」

くるくるまわる、この世界で
私と誉先輩に、宮地君に梓君に、犬飼君たち
出逢えたことは、なんて幸せなことなんだろう

誉先輩が、私の手を握り、立ちあがった

「僕、今すごく、幸せだよ」

あまりにも綺麗に笑うものだから、なぜか顔が赤くなってしまった

「私も、幸せです!」

心からの、本当の言葉
誉先輩が私にいいこいいこをしてくれる
それが心地良くて瞳を閉じる

瞼の裏にうつるのは
あなたたちの、笑顔なんです


出逢えたことに、最大限の感謝を!



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