子供は嫌いだ。
煩いし汚いし一人じゃ何にもできないし。
それをわかっているところがもっと嫌だ。
わかっているから、誰かに頼ろうとするところが一番嫌だ。

「利吉くんは、子どものこと嫌いだよね」
「えぇ、まあ」

汚い煩いその他エトセトラエトセトラ。嫌いなところをつらつらと述べる。土井先生は、私が一通り喋った後にそう、と短く相槌を打った。

「利吉くんは、そういう子どもじゃなかったものね」

ばちりと土井先生と目が合う。柔らかな眼差しだった。例えるなら、そう、親が子どもを見つめるような。
私は気まずくなって、視線を逸らした。

「だから、子どもが嫌いなのでしょう」

だから、
だから、なんだ。私が子供らしくない子供だったのと、私が子供嫌いなことに、何の繋がりがあるんだ。
ねえ、先生。ねえ、何を言いたいんですか。

「羨ましかったんだろう、あの子達が」


わあ、と外から一年は組の子供たちの声が傾れ込んできた。子供の声と、先生の言葉が、頭の中で反響してわんわんと鳴り響く。ぐらぐらと視界が揺れて眩暈がした。

「寂しかったんだね」

するりと指先が伸びてきて頬をなぞる。寂しい、だなんて。そんな、まさか。

「、私は、子供じゃありません」

ああくそなんで、声が震えるんだ。

「私から見れば、君もまだ子どもだよ」

嫌味ではなく、慈愛に満ちた表情で、先生は更に腕を伸ばしてくる。

私を抱き締めようとするその腕を拒絶出来なかったのは、


私が、まだ、


(子供だからでしょうか)