「ストーク出身のお人らは、みななにかしら情に欠けてるのではなかろうか」

 至って真面目に問われたものだから、私もすこし真面目に考えてみた。ハガクレは、ツルギより婉曲的な物言いをすると思っていたのだけれど、やはり根底は似ているらしい。多少なりデリカシーとやらが欠けている、ような気がする。といっても、私が傷つくような話ではないが。

「わからないや。ハガクレにそう見えるなら、そうなのかもしれない」
「もしや投げやりに答えてはござらんか」
「違うよ。私は自分がいた環境を普通として育ったから、他の国と比べるのが苦手なの。物の認識は環境によって変わるものでしょ? たとえば、白夜王とツルギみたいな」

 幼い頃より上に立つことを常とした兄と、下のものたちと同じ目線を望んだ弟。育ちの違いが顕著である。そしてハガクレの物言いだと、私たちストーク人は白夜王に寄っている、ということかもしれない。きれいなものをきれいと認める感性は同じだろうに、すれ違いは妙なところで生じる。

「だからって、ストーク育ちがみんな同じとも限らない。だってそうでしょう? ハガクレは同じ里の忍びたちとは違う考えがあって旅に出た。リローヴや私、それからスオウが国を出たのだって三者三様異なった思考が始まりだもの」
「む、むう。話を聞く限りでは、そうでござったな」
「情が欠けてようとなかろうと、私とハガクレは同じではないし、私とスオウたちも別のもの。同じ尺で考えるのは、すこし難しい気がするな。でもその点で言えば、ツルギは偉大なのかもしれないね」

 思想の違いを無視して独裁を貫くあの王と違って、すこしでも他者の考えを知ろうとしている。統一こそ難しいだろうが、共感を得るにはいい手立てだろう。それを、本能的に行っているのだから。さすが、王の器といったところか。

「ツルギは、いいやつでござるからな」
「だねえ」
「王族どうこうを抜きにしても、みなが惹かれるのは納得でござる」
「そうだねえ」
「お、お主も、ツルギが好きでござるか」
「うん? いっしょにいたいと思えるから、きっと好きなんだと思うよ」
「……そうでござるか」

 人の心の機微を読み取るのは苦手だ。だからハガクレが項垂れる理由はわからないし、自身が他者に向ける感情ですら、ときどきわからない。それを追求したいと思わないのは、つまり。
 結論から言えば、ハガクレの論点はズレていた。そして私の解釈もズレていた。正しい答えは「ツルギを善とした場合、私の情が、欠けてる」。



(BS剣眼/130809)



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