どこからともなく伸びてきた手に首根っこを掴まれた。と思いきや、そのまま誘拐された。呆気にとられるクルーたちを差し置いて、マルコ隊長はずんずん船の奥へ向かっていく。これはお説教コースかな、なんて自分の行く末を案じて、合掌。

「ここへ来た理由はわかるな?」
「マルコ隊長が私に告白してくださるんでしょうわかります」
「違ェよい、目の前見て察しろばかやろう」

 まだ乾ききっていない床に倒れたバケツ。びしょ濡れのモップは床に放置されて、目を回すエースくんもセットになってる。窓から差し込む光が水をきらきらと輝かせ、やけに神秘的な状況を作り出していた。
 実はこれ、私のせい。

「いやあ、ずいぶんはやくばれちゃったなあ」
「潔く認めるんならお咎めはなしにしてやるよい。代わりにさっさと片付けるこった」
「言っておきますけどこの状況、先に作り出したのはエースくんですからね。私は一応フォローのためにかわいた雑巾を探していたというか」
「食堂でのんきにパフェ食ってた口が何言ってんだか。ほら、働きな」

 ぺいっと投げ出されたたらを踏むも、なんとか濡れ鼠コースは免れた。もう少し優しく扱って欲しいものである。仮にも立派な女である。恨みがましく湿った視線を送りつけても、マルコ隊長は知らん顔。それどころか寝転がったエースくんを起こそうとこちらに背を向けている始末。
 むくり、むくりと沸いたのはいたずら心か、それとも。

「ねえマルコ隊長」
「なんだよい」
「くらえ! サッチ直伝、のしかかり攻撃ィ!」
「は、」

 不意をついたお陰か、勢いにのまれて顔面からエースくんに向かって倒れる隊長の体。飛びついたこの大きな背中と、このあと来るだろう拳骨をおもって、私はつよく目をつぶる。隊長が悪いんですからなんて、海に溺れてもきっと言えない。



(op/130226)



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