職長二人が消え、秘書のカリファも消えて、ガレーラは少しだけ静かになった。
 直属の上司だったあの人は、もともとお喋りではなかったが、相棒の鳩はいつも陽気にふるまっていた。同じ職として行動する時間が多かった分、見えなくなった大きな背中が、私の視界をにじませる。

「感傷に浸るのは、仕事以外のときにしろ」

 あやまってハンマーで叩きつけた親指は、ぷっくり赤く膨らんだ。救護室でもらった氷嚢越しに、歪んだそこを私は一人で見つめていたのだけれど。パウリーはいつの間に来たのだろう。
 そんなんじゃないよ、とそっけなく応えたら盛大な舌打ちが返された。気力がないんだ、勘弁して欲しい。

「ったく、次期職長がみんなの足ひっぱってどうすんだっつの」
「うん、ごめん」
「謝るくらいなら初めっから真面目にやれ」
「うん」
「アイスバーグさんが何も言わねェからって、気ィ抜いてんじゃねェぞ」
「うん」
「……てきとうに聞き流すんじゃねェよ」

 ふり上げられた手に備えて、目を軽く閉じる。避ける気にもなれなかった。けれど痛みは訪れない。頭にのし掛かったのは、不器用に触れるぬくもりだけ。ぎこちなく動くそれに、目頭がじわり、熱をはらんだ。

「おれが、まだいるだろ」



(op/130226)



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