※円堂の幼馴染みたいな子
※アニメ完結に向けて










「卒業式かあ」
「長かったようで短かったなあ、俺らの中学生活」

 本日は晴天なり、なんて。とりあえず、今日は絶好の卒業式日和だろう。雨の気配はなし、人も湿気もオールオッケー。私の気持ちも、風と同じくらいゆるやかに凪いでいた。その調子のまま、隣を歩く半田に歯を見せてみた。

「まあ半田はさ、二年の初めにぐだぐだしちゃったからいけないんじゃないかな」
「うっせ。お前だってそうだろ」
「私は半田よりがんばってたもん!」
「ほんとかあ?」
「……守に比べたらまだまだだったけど」
「そんなの当たり前だって! あの時の円堂がいなかったら、今の俺たちはきっといないよ」

 たぶん、もっとぐだぐだしてた。にやりと半田が口角を釣り上げる。いやいや、それ笑えないから。思わず声を上げて肩を叩けば、半田は小さな悲鳴と共によろめいた。あ、と手を軽くふる。

「いっやあ、私もこの三年間でずいぶんと強くなったよなあ」
「感動してないで謝れよ! けっこう痛かったぞ今の!」
「ごめんごめん! でもさ半田、それくらいで音をあげてたら男がすたるぞー!」
「よけいなお世話だ!」

 いきり立つ半田を置いて、私は河原を進む。朝日を受けてきらきら光るこの水面とも、今日限りでお別れだ。
 三年前の春、うっかり落としたサッカーボールを探すため、通りすがりの半田と共にこの冷たい河原に足を浸した。それから、守に連れられてKFCのメンバーと一緒にサッカーを始めた。夏、秋、冬と何度も通いつめて、二年前の春。ここで豪炎寺にも出会った。

 それから後もずっと、ずっと。この河原は人との出会いを作って、見守って。みんなの葛藤の足取りも受け止めて、見届けた。もちろん、私もこの場所で何かを見つけた一人、だと思う。

 守の大切な場所があの鉄塔だというのなら、私の思い出の場所はこの河川敷だろうか。ゆらゆらと波紋を立てる水面を見つめ、そうっと、目を細めた。

「……ありがとう」

 小さく、それでも心の底から思いを込めて言葉を紡ぐ。ありがとう。私たちを受け止めてくれて、ありがとう。心の中で繰り返す。水辺から、ちゃぽんと一際大きな波音がした。
 後ろにいた半田が「は?」と間の抜けた声を発した。

「何か言ったか?」
「んーん、なんでもない! それよか、早く行かないと遅刻するよってことでー……走るよ、半田!」
「急に引っ張んなよ! おい聞いて、えっ、こっらなまえ!」

 気持ちよさげにそよ風に吹かれている、土手の草花。何度踏まれたって立ち上がる、その精神は私たちも変わらない。個性溢れたそれらの中でも、ぷっくりと、新しい命が芽生えつつあった。春は、すぐそこまできている。



何度でも、
(私は叫ぶよ)
(心からの「ありがとう」!)



(110420)


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テーマ「人外ファンタジー」
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