「おい、寝るなよ。これから部活なんだから」
「……寝てない」
「今にも寝そうじゃん」
「いいから早く日誌書ーいーてー」

 自分の机に突っ伏して、前にくっついた机を何度も叩けば、短い嘆息が聞こえた。それから、絶対寝るなよ、ともう一度警告されたので、私は欠伸で答えてやった。
 オレンジ色の教室にそそぐやわらかな陽光。閉め切った窓はすき間風の侵入をきちんと防いでおり、教室にはほのあたたかい空気ばかりが流れている。頬を預けた腕は、すこし粉っぽかった。黒板消しのせいかな、後でちゃんと洗っとこう。そんなことをぼんやり考えていたら、自然と瞼が重くなる。
 耳に届くのは、目の前の半田が走らせるシャーペンの音だけ。やばい、ほんとに寝そう。




「起きろ、なまえ。部活行くぞ」




 体が揺さぶられた感覚のあと、ぱちんと、しゃぼんだまが割れたみたいに覚醒した私の意識。ちょっとだけスッキリした頭で前を見ると、半田は既に鞄を背負っていた。くっついてた机がちゃんと戻っている。若干ぼやけた目をこすって、私も立ち上がった。

「うーい……まず日誌出しに行かなきゃなあ」
「もう行った」
「そっかあ、って、え?」
「あれだけ寝るなって言ったのに、お前完全に意識飛んでんだもん。しょうがないから、さっき行ってきてやったんだよ」

 いいからさっさと準備しろ、と半田が鞄を指した。寝起きで頭の回転が鈍い私にも現状が理解できたのは、急かされて教室を出たあとだった。「半田、お前いいやつだなあ」と笑いかけたら、「はあ? なんだよ、いきなり」と思いっきり怪訝な顔を返された。



放課後ブレイク



(110131)


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