いつも偉そうに腕を組んで、いつも偉そうに上から物を見て。けれどそんな彼の唯一の弱点は、身長だった。

「三国とは違うんだからさあ。もう少し、自分の目の高さを考えてものを言いなさいよ」
「なっ、んだとテメェ!」
「まあまあ、落ち着け車田」

 苦笑気味の三国に取り押さえられる姿は、まさに子ども。後輩よりも後輩らしい。顔を真っ赤にして怒ろうが、唾を吐き散らそうが、ちっちゃければ全てが物足りない。

「身体が小さいと心も小さいのね。もっと三国を見習えば?」

 ハン、と鼻を鳴らして文字通り見下ろしてやると、彼はますます歯をむき出しにした。「離せ、三国」けれどいくらかの冷静さは取り戻しているらしく、三国にすんなりと解放された。困った風に私たちを見比べる彼の視線を流して、車田はビシィッと私に指を突きつけた。

「さっきから三国三国ってお前な、そんなに三国が好きなら三国と一緒にいたらいいじゃねえかよ!」

 その一言に、きょとんと目が丸くなる。ずいぶん率直な物言いに、思わず頬が緩んだ。考える脳も小さいなんて、まったく、仕方ない人だ。
 突きつけられた指を両手で包んで、そっと下におろしてやる。ちょっと呆気にとられた車田の体温は、じょじょに、じょじょにと上がっていく。

「いやよ。私が好きなのは、車田だけだもの」
「ばっ……わけわかんねえよお前!」
「顔真っ赤にして怒られても怖くありませーん」


好きな子ほど苛めたくなる

(120217)


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テーマ「人外ファンタジー」
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