なんとかなるさ、と笑い飛ばすには随分重苦しい状況。右見て、左見て、締めに上を向いて嘆息する。視界のはじっこから、天馬が流れてきた。

「何してんの?」
「いんや、みんな意地っ張りだなあと思って」
「先輩たちのこと?」
「うん」

 今まで、苦しみながらも守り続けてきた流れだ。急に変えろと言われて戸惑うのは、誰でも同じ。何も知らないで入ってきた私たちが、新監督のやり方を受け入れられるのも当然の話だ。

 そこまで考えて、自分たちの行動は本当に許されるのか。ほんのり疑問を抱くのも、自然な流れだと思う。

「大丈夫。先輩たちも、そのうちわかってくれるはずだよ」
「だといいけどね」
「なんとかなるさ! 俺らが落ち込んでても仕方ないだろ。気持ち切り替えろって!」

 ぱしんと叩かれた肩に、予想以上の痛みが走る。思わず浮かんだ涙と共に睨み付ければ、天馬がぎょっと笑顔をひきつらせた。「えっと、その」しどろもどろになった結果、これまた随分と、晴れやかな笑みを披露した。

「なんとかなるさっ!」
「いや謝れよ」



くすぶり漫才



(111030)


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