「なまえせーんぱい、なにしてるんですか」

 部室にひょこりと顔を出したら、先輩は興味なさげに見返してきた。机には書類やら湿布や包帯、他にも俺にはよく分からない物が散らばっている。

「備品の在庫チェックよ。なにが足りないか調べてるの」
「へえ」

 この先輩でもそんな真面目な活動をするのか、と正直面食らった。たぶん、その驚きが伝わったのだろう。なまえ先輩はにやりと口を歪めて「お手伝いしたいの、狩屋?」と言い放った。誰がやるもんか。

「すいません、俺いま、キャプテンにお使い頼まれてるところなんです」
「あらそう。じゃあ、さっさと行ってらっしゃい」

 いかにも申し訳なさそうな顔をしたら、なまえ先輩は目を細めた。しっかりうそを見破ってるくせに、すぐさま手元の用紙に視線を落とす。その呆気なさに拍子抜けして、同時に、ほんのすこし悔しくなる。

「……終わったら手伝いましょうか?」
「いらない、平気。ほんとうに大変だったら、葵ちゃんとか霧野呼ぶから」

 なんでそこに霧野先輩が出てくるんだよ。
 思わずでかかった舌打ちを飲みこんで、にっこりと余裕の作り笑い。「わかりました、がんばってください」心にもない言葉を吐く、いつものことだ。それに「ありがとう」と妙な含み笑いが返ってくるのも、恒例だったりする。

 自分がなにをしたかったのか。よく分からないまま部室を去る。今度は、手伝うふりをしながら嫌味を言ってみようか、なんて。いかに嫌がらせをするか悩む自分が、一番わからない。



かまってちゃん
(もっと噛みついたら、こっちを向いてくれますか)



(111116)


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