うぐ、えぐ、ずずず。
 嗚咽を漏らして、鼻を啜って、肩を震わせる彼女はとても弱い存在だと思った。弱い自分が言うのもおこがましい話だが、彼女と僕はどこか似ていると思う。けれど、似ていないとも思う。

「なまえさん」

 名前を呼べば、怯えたように全身が凍った。「僕ですよ、僕。子猫丸ですえ」安心させようと肩を叩いた次の瞬間、どさ、と鈍い痛みが肩にのしかかった。驚いて目を丸くしたところで、耳朶を打った先ほどの嗚咽。ふり払ってはいけない気がした。

「……僕の肩でよかったら、どうぞ、使ったってください」

 ああ、坊に見られたら怒られるなあ。なんて思いながら、彼女の背中でリズムを取る。そうすると、彼女の中で、何かが切れてしまったらしい。決壊したダムの水は、もう止まらない。



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(110723)


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