(実写)



 ミカエラと同じ髪の色だけど、目の色はアメリカじゃ珍しい濃いブラウン。でも肌は大して黒くなくて、どこか珍しい顔立ちだ。サムが言うには、彼女は「ジャパン」という国から来たらしい。

「母さんのペンフレンドの娘なんだってさ。一月くらいうちで預かることになった。頼むから、バレないようにしてくれよ?」

 ガレージに現れて、至極真面目にサムが言う。『オーケー』『任せなさい!』ラジオに任せて返すと、サムが肩を竦めた。

「本当に大丈夫かな」
『心配性だな、バディ』
『僕を信じて!』
「わかった。わかったから落ち着け、バンブルビー。とにかく変な真似だけはするなよ」

 強く釘を刺すと、サムはそそくさとガレージから消えた。どうやらミカエラと大事な約束があるらしい。僕も一緒に出掛けたかったけれど、デートの邪魔なんて野暮な真似はしない。そう、僕は気の利く男、バンブルビー。

 しかし、こうなると一日の過ごし方に問題が出る。ガレージからは出られないし、延々とラジオを聞く気にもなれない。インターネットで情報収集もいいが、やっぱり、外に出たいなあ。
 その時、キィ、と寂しい音を立てて再び扉が開いた。サムが忘れ物でもしたんだろうか。ついでだから、出かけるおねだりでもしてみよう。涙に見立てたオイルを準備し、相手の出方を伺う、と。
 現れたのはサムではなく――例の彼女、だった。

「え……」

 あんぐりと口を開いたまま、立ち尽くす彼女。カシャリ、と音を立てて僕のアイカメラがその表情を捉える。互いに身動きをとれないまま、数秒間の沈黙が流れる。
 そこで、慌てて舞い戻って来たらしいサムが「あっ、」と目を覆った瞬間。空気が、弾けた。

「おっ、お化けええええ!」

 失礼な。せめて宇宙人と言ってくれ!



休日の怪異



(110731)


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