(男主)
「大丈夫ですか、アミさん」
目の前で尻餅をついた彼女に手を伸ばす。アミさんはちょっと目を丸くして、それからぽんっと音を立てて赤くなった。小さな口が、可愛いらしくわなないていく。
「せ、せめて笑ってよぉ」
「はい?」
「こんな普通に応対されたら、よけい恥ずかしいじゃない」
もこもこの耳当てごと頭を抱えこんで、彼女は俯いた。何やらぶつぶつ文句を繰り返しているみたいだが、おれには聞こえない。
首を傾げて「す、すみませんでした?」と一応謝ってみる。彼女はますます、眉尻を下げた。なんだか呆れてる気がする。見放されるのはまずいと思い、おれは慌てて彼女の手を取って引き上げた。
「わかりました! 次からは、アミさんが倒れる前に、絶対おれが支えます」
「ささえ、え?」
「大丈夫です。おれ、反射神経には自信あるんですから。必ずあなたを守るって、約束します」
これで一安心ですね!
そう得意気に笑いかけたら、アミさんは深く、ふかあくため息をついた。
「なまえくんって、ちょっとズレてるよね」
「ええっ、そんなことありませんよ!」
「そんなことあるのよ。もう、バカ」
唇を尖らせて、視線をそらしたアミさん。なんだか不機嫌そうな、そうでもないような。心配になって握り直した彼女の手は、とっても、暖かかった。
だって、大切なんだもの
(120119)