ふわり。
夕方の冷たい風がユウの長い髪を撫でる。
ささやくような歌が私の耳を満たして、泣き出しそうになった。

「ユウ」

歌が止んで、綺麗な赤い目が振り返る。

「アヤ、いらっしゃい」

にこり。
虚ろな目で、ユウは精一杯綺麗に笑った。
息が詰まった。あなたは、そんなに頑張らなくていいのに。
あなたはそんなに、脆くならなくてよかったのに。

足が勝手に動いていた。
窓際に座るユウの下まで走って、そのまま抱き締めた。
堪えていた涙が溢れだして、ユウの白い髪に吸い込まれていく。
不思議そうにしていた声も私の嗚咽を聞いて止まった。
ゆっくりと私の肩を抱き返す白く細い腕。
きっとユウは笑っているんだろう。
慰めるような、酷く優しい歌が私を包んだ。

自分よりも他人を優先する。
自分に何があろうと、自分の愛する人のためならいくらでも耐える。
愛する人が笑ってくれるなら、自分はどうなっても構わない。
腹が立つほど自己犠牲的なあなたを、私は守りたいと思った。
酷く強く、酷く脆いあなたが壊れてしまわないように。
大好きなあなだが、心から笑えるように。

私よりも年上で、私よりも背が高くて、私よりも小さくて細い肩を、できるだけ優しく、強く抱き締めた。


やさしいうた
(私がずっと守るから)
(あなたは笑ってて)




>>>>>>>>>>>>>>>
アルビノで苛められてた高校生のユウと、その唯一の友達の中学生のアヤの話。
いろいろ長くて重たい話の一部。



10/08/01
- ナノ -