in the sunny place


ここはW7。水の都。
エニエスロビーでの一件から数日。
麦わら海賊団は船の完成までの間、アイスバーグ達の心使いでのんびりと静養と休憩をしていた。

そして、今日。
よく晴れた午後。ライはナミに引きずられながらブティックの並ぶ街並みを進んでいた。

『おい!なにも、そんな引っ張らなくても。おとなしく着いていくっての!!』

「え?そうなの?」

それまで掴んでいた襟首を突如放され後頭部を地面へと強打する。

『いっでぇーっ…』

後頭部を抑えごろごろと悶絶すライを見て、クスクスと笑うロビンとごめーん!とあまり反省していない様子のナミをじとりと見てからライは服をはたきながら立ち上がるとナミを見下ろす。

『で?わざわざ何だよ?荷物持ちか?』

「違う、違う。ライの服。買おうかなってね!」

『は?ナミが俺に貢ぐだと?……そうか。天変地異の前触れか…!!』

ゴチン

『っいってぇ…』

「あらあら…」

「たく。その一言多いのどうにかしなさいよ。あんた顔いいのに…いつも、だらしない格好ばっかだからよ!!」

『…だらしないって…。こりゃ、こーゆうジーンズなんだっての…』

「違うわよ。たまにはきっちりした格好でもしなさいって事。服のセンスは悪くないのに、いつも動きやすい服ばかりでしょ?それに、あんたは何着せても似合いそうだし…ちょっと遊ばせなさいよ」

『………あぁ。そういう事ね。まぁ、いいぜ?女の買い物は慣れてるし。好きにしろよ』

「そうなの?」

『あぁ。姉ちゃんやら妹もいたからな。なれてる。遊ばれるのには…』

「へぇ…そうなんだ?なら、ロビン」

「えぇ、楽しめそうね?私もライに着てほしい服が沢山あるわ?」

にやり笑う彼女達を見ると、ライはかなわねぇな…と苦笑いを溢すと、二人に手を引かれ水の都を歩き出したのだった。



「ねぇ、ちょっと!これも着てみて?」

更衣室へと次々放り込まれる服の数々。

「ライ?これもどうかしら?」

『おぉ』

多少その量に驚きつつも、久しぶりの楽しいショッピングにライの顔は知らず笑みが溢れる。

シャッと音をたてて、カーテンを開ける。
目の前にはまだ放り込もうとしていたのかナミもロビンま服を抱えている。その隣にはその店の店員がこれでもかとにこにこと笑顔でその様子を見守っていたがライを見た途端その顔を紅く染める。

『あー…なんか、こう。かっちりしたのは着ねぇから。変じゃねぇ?」

立ち襟のYシャツにかっちりめのベストを羽織り、シックな装飾のベルトにパンツ。
足元はスマートに革靴、頭には黒のハット。

「いいえ、よく似合ってるわ」

「これも買いね…」

『おいおい…海賊がこんなの着てどこいくんだよ!!いらねぇって!』

「一着位そーゆーの持っておきなさいよ」

「えぇ。海賊とはいえ、身嗜みは大切だわ」

『…………そぉかよ…』

じゃあ、次これ!と押し付けられ、ライはまた更衣室へと逆戻り。

その後も次から次へと、カジュアルなパーカーにキャップ、ジーンズにスニーカーを合わせた服や、柄シャツに黒パンツにサンダルを合わせたちょい悪スタイル。
スーツに、半袖のシャツとカーゴハーフパンツ。
サルエルパンツにゆるめのロンTにキャスケット。
ロングコートにTシャツ、ジーンズにブーツ。
ライダースジャケットにロンT、パンツ。

『も、もういーんじゃねぇの?』

「そう?じゃあ、最後はコレよね!」

「えぇ、そうね」

『ま、まだあんの…?』

げっそりとしたライが更衣室の前にあるソファへ腰かけるとすかさず店員が紅茶を出す。

『ん?お、悪いな。サンキュー』

「い、いえ!あのよろしければ、こちらも…」

渡されたチョコを笑顔で摘まんでポイっと口に放り込むとナミとロビンは視線を移す。

『で?最後にってのはどれだよ?』

「あら、着てくれんの?」

『いや、着ないと帰れねぇだろ?この雰囲気』

「よくわかっているみたいね」

ふふふと笑ったロビンをじとりと見るが、笑顔でかわされる。

「ハイ!じゃあ、これねっ!!」

渋々紅茶を飲み干して、店員へとカップを返すと服を受け取り立ち上がり、また更衣室へと入る。

そして……

『おい、おい。まじで?』

ため息をついて、更衣室を出ると。

「あら、似合うわ」

「いーじゃない!これ、いつも着たらいいのに!!」

紅い立ち襟のロングコートに中は同じく立ち襟のシャツ(胸元にはフリル…)、黒のパンツにロングブーツ。

『なんの冗談だ…』

「いや、折角騎士なんてついたんだし。それを生かした服をね?」

『これは絶対にいらねぇ!!』

つーか!よくこんなん見つけたな!とぷりぷり怒りながらすぐにカーテンを閉める。

「あら、似合っていたのに…」

そうして、最初に着ていたいつもの服に着替えるともういーだろと不機嫌さ全開で出てくる。

「じゃぁ、とりあえずこれね!」

そう言って会計をするナミへ視線を向けて固まる。

『てぇ!!?うぉいっ!!これはいらねぇっての!!』

「いーじゃない!お金出すのはあたしよ!」

ナミの言葉に言い返せず、結局コスプレのような騎士スタイルもお買い上げ…。

カランカランとベルを響かせ、店を出ると辺りはもう夕暮れ。

「あー!楽しかったぁー!!」

「えぇ、お疲れさま。ライ」

『へいへい。まぁ、面白かったぜ?意外と。最後のは納得できねぇが』

「頑なね?」

『まぁ、あのフリルのシャツ以外は着てやる』

「あれないと意味ないじゃない!!」

『バカか!?あんなん、ルフィ達が見たら笑いの種にしかなんねぇよ!!』

「確かに、それもそうね」

『つーか!俺よかあいつらの服どうにかしろよ』

「サンジ君は何だかんだ、きれいめの服着るし。普段はあんなだけど、ウソップは実はおしゃれだし。チョッパーは何着せてもかわいーけど」

「ルフィとゾロは言わないと、いつも同じよね…」

「そう。だからいーの」

『おい。その二人こそどーにかしてやれよ…』

「あいつらが言って着いてくると思う?適当に見繕って渡しときゃいーのよ。あの二人は…」

『…あ、そう』

三人夕暮れの街をガレーラへ向かい歩き出す。

その途中サンジに遭遇し、理不尽に罵られたライはサンジと殴りあいながら帰る。

そんな二人を後ろからクスクスと笑いながら着いていくナミとロビン。

『おい!早く来いよ!置いてくぞ』

サンジの台車に荷物をのせ身軽になったライが声をかけると、隣でサンジがギャンギャンと騒ぐ。

いつもの日常に組み込まれた非日常が、心を少し暖めさせた。



in the sunny place

( 日溜まりの中で )
(たまにはこんな日も悪くない)

おい、お前何だよ。このふりふり。

お前、ぶっとばす。こっち来やがれ!!



title by 瑠璃





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