飼いたいなら首輪をどうぞ


アラバスタを後にし、ロビンが加入した麦わら海賊団は、次なる島へと進みだした。

船の上では、ゾロは鍛練、ルフィとウソップ、チョッパーは釣りを、ナミとロビンはテーブルセットを甲板に出し読書。サンジは二人の女性陣へと飲み物を届けており、ライは見張り台に登り、周囲に時折視線を巡らせながら読書をしていた。

「ライ!何か飲むか?」

響いたサンジの声に見張り台から顔をだしたライ。

『珍しいじゃねぇか。何か悪いもんでも食べた?』

「………そうか。いらねぇか」

『え?ちょ、サンジくーん!嘘、うそ!俺、アイスコーヒー飲みたい!!』

「最初から余計な事言わねぇで、そう言え」

サンジの言葉にあまり誠意の籠ってない謝罪を返すとニシシと笑い、手をひらひらさせて前方へと視線を戻した。

と、ライは水平線に見える何かに気付いた。

『……なんだ?』

進行方向に見える何か。
甲板でルフィ達と釣りをしてるだろうウソップへと声をかけた。

『おーい!ウソップ!!進行方向に何か見えるんだ!!見てくれ!!』

「あぁ?何かって何だよ、ちょっと待ってろ!!」

そう言ってウソップがゴーグルを覗き、ルフィとチョッパーが脇から何があるんだ?と訪ね、ナミとロビン、サンジも集まってきた。

「船…小船だっ!!やべぇぞ!?人影見えるぞ!!」

「えぇ!ちょっと、漂流でもしてんじゃないの!?ライ」

『はいはい…見てくりゃいんだろー』

そう言って見張り台を飛び去っていった。

そして、戻ってきたライの腕には横抱きにされた長い金髪を靡かせた気絶した女性がいた。



そして、目覚めた女性が乗っていた客船が海賊に襲撃された事などを聞いたルフィ達は彼女を近くの島へと送り届ける事にした。

彼女の名前はアテネ。金髪の髪が美しい海賊船には似付かない女だった。



「ライさんっ!何を読んでいるの?」


「絵になるって言うのは、あれの事を言うのかしらね?」

「…そうねぇ」

「ぐおおぉおぉ…アテネちゅわぁん…何故あんな赤頭なんぞにぃ…」

三人の視線の先にはメインマストに背を預け座り込むライとその隣に座り頻りにライへと話しかけるアテネの姿。
彼女が船へと乗ってから2日。
自分を助けたライにすっかりとなついたのか、ライの周りを引っ付いて回り、頻りに話しかけていた。が、ライは全くもって相手にしなかった。

その日の夜、夕食を食べ終えた後アテネをシャワーへと行かせたナミがライに声をかけた。

「あんた。アテネの事少しは構ってあげたらどうなのよ…」

ナミの言葉に食後のコーヒーを飲んでいたライが顔をあげるとナミを見る。

『嫌だよ。女に俺は興味ねぇし』

「お前っ!!それじゃあ、アテネちゃんがかわいそうだろう!!何で、こんな奴をっ!!」

それを聞いたサンジがライへと詰め寄る。
と、ここで異変が起きた。

「答えてやりゃいいじゃねぇか。海賊なら海賊らしく、守ってやればいい」

ライは声に振り向けば、そこにいたのはゾロ。

『……おい。誰だ。こいつに変なもん食わしたのぁ』

ライだけならず、ナミとロビンも気味が悪げにゾロをみやる。

「ゾロだけじゃねぇぞ!!俺らも、そう思う!!」

言い出したルフィにウソップとチョッパーが頷く。

『……………。ったく。わりぃけど、俺にだって好みのタイプってぇもんがあんだよ。あいつは、論外。サンジみてぇに、誰にでも尻尾は振れねぇよ』

このっ!とサンジがライの胸ぐらを掴む。

「あんな麗しいレディに好かれてんのに!!だったらてめぇの好みってぇのはどんなんだよ!!…いてぇっ!!」

胸ぐらを掴むサンジの腕を捻りあげて、離させると服をただし歩きだす。

『……そうだなぁ。あんな女よか、こいつみてぇに負けん気のつえぇ…勝ち気な女のがどっちかってぇと好みだぜ?』

ナミを抱き寄せてナミの顎を持ち、上に向かせるとにやにやとしながらサンジを見る。

「「んなっ!!」」

ナミが顔を紅くさせ、サンジが憤慨するのを見るとライは笑いながらダイニングを後にした。

「あ、あんにゃろ!!後で絶対請求してやる!!」

「あら?航海士さん。顔が真っ赤よ?」

「…っ!ロビン!あいつ、無駄に顔がいいのよ!!もうっ!!」

「うぁーん、ナミすぁんまで野郎の毒牙にぃー!!あ、でもアテネちゃんが救われるならいっか!!」

サンジの残した言葉にナミとロビンが不振そうに部屋を見渡した。

と、その時。
ガシャァーンと外で大きな物音が響き、ダイニングにいた全員が慌てて外へと出ると。

「ライさん…。あなたが初めてだわ?あたしの虜にならないなんて…」

いたのは、樽や木箱に突っ込み血を流すライと怪しげな瞳でそれを見下ろすアテネだった。

「ちょっと!?アテネ、なにを…」

「アテネっ!!」

ナミの声を遮りあがったルフィの声にナミが安堵した瞬間。

「ライに何かされたのかっ!?」

そういって、船首甲板にいたアテネの元へと向かうルフィと男達にナミとロビンが唖然とする。

「ライさんが…俺のことが好きならと…迫ってきたんです…!!彼を止めてください!!」

その言葉にルフィが立ち上がったライへと腕を伸ばしたが、一瞬でライはナミの隣へと移動する。

「え!?ライ!これ、どういうこと!?ルフィ達が変なんだけど!!」

今やルフィやサンジ、ゾロやウソップ、チョッパーまでもがライを取り押さえようと動き出している。
そして、その後ろでははらはらと涙を流すアテネ。

『あんのバカ女!!ありゃ、能力者だ!!バカ供単純だから、まんまとはまりやがったんだろ!!あいつは俺に任せろ!!お前らは、あいつら止めとけよ!!さすがに、あいつらを怪我させねぇよーに相手しながらあの女の相手までしてらんねぇよ!!』

ライの指示に頷くとナミとロビンはルフィ達を止める為に動き出した。

『っと。てめぇ、どーっかで見た事あると思ってたんだが。たしか、新世界で動いてる賞金稼ぎチームの奴じゃねぇーか?わざわざ楽園まで何しにきた?』

「あら?あたしを見た事があったの?ふふふ、これはもう運命としか言いようがないわっ!!」

にっこりと笑ったアテネにライは、はぁ?と言いながら怪訝な顔を向ける。

「何よ?ライ、知り合いだったの?」

『…ん?ナミ。あいつら…は、がっつり捕まってんな…』

アテネから視線を外しナミを見てからその後方へと視線を滑らせると、ロビンの能力で甲板に縫い止められたルフィ達が身動ぎしながらライを睨み付けていた。

「あいつらは平気よ。で?」

『この先の海でちょいと有名な賞金稼ぎのチームの一人だよ。だけど、わざわざこんな前半に来てる理由がわかんねぇんだ』

そう言ってライがアテネを見ると、アテネは艶やかな笑みを浮かべた。

「わざわざこの楽園くんだりまで、一人できたのは……あなたよ?ライさん?」

『俺?』

「えぇ…貴方の手配書…見たわ。雷が落ちたのよ」

『…?手配書?俺まだ手配書なんかでてねぇんだけど…頭大丈夫か?あ、駄目か。雷にうたれたんだっけか…』

「あなた、案外失礼ね?でも、いいわ。あたしの虜になれば、何も問題はないもの」

「ねぇ、あんたに一目惚れしたからあんたが欲しいって事じゃないの?」

『だぁら。俺さっきも断ったんだぜ?そしたら、蹴り飛ばされたんだ。俺の事が好きなら勘弁してほしいよな。俺、鬱陶しい女嫌いなんだわ』

剣を抜くと一気にアテネの元へと詰め寄る。

が、ロビンの拘束を抜けたゾロが間に入りライの剣を受け止めた。

「…っ!?ちょっと、ゾロ!!」

『てめぇ、俺の仲間…放してくれねぇか?』

ゾロの後ろで笑うアテネを睨み付ける。

『おめぇもっ!!世界一の剣豪になんなら!くだらねぇ能力に操られてんじゃねぇぞっ!!』

合わさっていた刀を弾くと体勢を崩したゾロの腹に思いきり蹴りをめり込ませる。
その勢いにゾロは吹っ飛ばされ、甲板に沈む。
それを見るとライはアテネへと視線を向けようとした時。
アテネがライに抱きつきキスをした。

「直接、あたしがこうすればどんな自制心の強い男もいちころよ?そうでない奴等は、あたしの瞳を見ただけで、あたしの虜。」

そして、ライは倒れアテネの腕の中。

「ライっ!!あんた、どうするつもりよ!?」

「そうねぇ、元々あたしの目的はこの男だったから。手にいれた今、もうこの船に用はないわ。だから…あ、目が冷めた?」

ピクリと、動いたライに気付いたアテネが声をかける。

ぼおっとしていた視線をアテネへと向けるとライは微笑んだ。

「うそ…」

『アテネ、どうしたんだい?こいつらが、君に何かした?』

「いいわ、放っておいて行きましょう?あたしの船に…」

『あぁ、そうだな…荷物を取ってくる待っててくれ』

アテネの頬へと手を滑らせるとにこりと微笑む。

「ちょっと!!ライ!?」

「最悪ね。騎士さんまで…彼女は確かラブラブの実の能力者。虜のアテネ。騎士さんの言葉で思い出したわ。虜にした男達を操って敵を倒す…『下衆なバカ女だ…』え?」

アテネを後ろから抱き込んで、その首にナイフを突き付けるライ。

「ライ!!」

「騎士さん!」

「何故!?」

『何でだろぉな?そりゃ内緒だ、バカ女。おい、ナミ海水汲んでこい』

ナミに指示をして、マストへとアテネをくくりつけるとにぃっと笑みを浮かべる。

『俺を狙ったのが運のツキだったなぁ?取り合えず、消しはしねぇけど。この船を狙ったのを後悔しながら海を漂えや。俺がいる限りこの船の奴等は一人としててめぇにゃやらねぇよ。あ、そうか。お前は俺が欲しかったんだったか?』

ニヤリとわらったライにナミがバケツに汲んだ海水を渡すと頭からアテネにぶっかけた。

それにより力の抜けたアテネを肩に担ぐと、アテネの乗っていた小船に投げ込む。

「こんな事して!!絶対、諦めないわよ!!あんたは必ず、あたしのものにしてやるんだから!!」

睨み付けながら告げたアテネに、ライは月明かりに照らされながら妖艶な笑みを浮かべるといった。

『──────────…!』

そして、小船を蹴り飛ばすと何事もなかった様に船内へと向かう。

「ちょっと?何て言ったのよ、最後」


『ん?あぁ。』




飼いたいなら首輪をどうぞ?

(って、言ったんだよ。まぁ、海王類あたりがちぎらねぇ位に頑丈なのがありゃなって)
(また随分とでかくでたわね)
(言うのは、タダだろ?で、こいつら一度ブッ飛ばしても?)
(いいわよ。やっちゃって)
(うし。じゃあ、バカ供起きやがれ!!)
(え?、いたっ!!やめろよ)
(いてぇ…)
(てめぇ、急に何しやがる!)
(ライ!?どうしたんだ!?)


title by ポケットに拳銃


 





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