計算式の弾き出した未来



「遠慮するな。飲め」

『後悔すんなよな!たらふく呑んでやる』

ふてくされた様子で目の前に座るトラファルガー・ローを一蹴すると、ライは店員を呼ぶ。

『ラムと…これ、海王類のステーキ頂戴!!』

笑顔で告げたライに酒場の女店員が頬を染めて、カウンターへと注文を告げに走る。

「……随分と、もてる様だな?」

『…知るかよ。興味ねぇもん』

「そうか。まぁ、いい。で、お前のあの能力は何だ」

ローが鋭い目をライへと向ける。

『はぁ…なぁ、どうしても聞きたいなら…俺に勝ったら教えてやるよ』

テーブルに肘をつき、顔に添えたライがにやりと笑う。
その様子をみたローはくくっと笑うと、

「酒の席だ。まぁ、今はいいだろう。何より、お前の能力がわからない今…勝てる確率が低いしな…」

『勝てないとは言わねぇのか!!どんだけ自信満々だよっ!』

呆れた笑みを溢したライにローもにやりと笑ったところで注文した酒が届き、二人は無言でビンを合わせると、酒を煽った。

『自信過剰の不摂生野郎に…』

「いけすかねぇ、紅い悪魔に…」

次いで溢れた互いの言葉に、一瞬目を見張ると同時に二人は笑いだした。

その様子を近くで見ていたペンギン、シャチ、ベポは顔を見合わせる。

「案外…似た者同士か?」

「船長が笑ってるよ、おい…」

「仲良しなんだねぇー!!」




「で?麦わら屋達と別行動とは、どういう経緯だったんだ?」

『んあ?あぁ、ちょっとな会いたくねぇ奴と会いそうだったからよ。調べものついでに、な』

「調べたい事?」

『そ、あ!お前知ってるか?海賊王のクルーのアマクサ リュウドウの事』

「……?先見屋の事か?」

『………そう。それ、先見屋』

「いや、奴に関しての資料はほとんどないに等しい。唯一あるとすれば……先見屋の食べた悪魔の実に関する資料だけだな?」

『やっぱかぁ…俺もそれしか見つからねぇんだよなぁ…』

「………何故、先見屋の事を調べてる?確か、異界の旅人だった筈なんだが…?」

『ん?えーと、うちの船考古学者いてさ!海賊王のクルーのその後を探してんだと…(わりぃ、ロビーン!!言い訳に使わせてもらうぞ!!)』

心の中でロビンに謝罪すると、ローへと笑いかける。

「…考古学者までいんのか?」

『おぉ!最近仲間になったんだよ!!考古学者』

「他には?」

『ん?お前んとこと大差ねぇと思うぞ!航海士に船医、コックに狙撃主、剣士な!!』

「………そういやぁ、随分と人数が少ないらしいな?」

『あー、そうだな?俺入れて8人だからな!でも、全員が強いぜ?一人一人が希望に溢れてる。あの船は本当に……あったけぇ…』

優しく笑ったライにローは目を見張ると、ふと笑い船での様子を聞く。

「随分といい仲間みてぇだな?」

『そうだな。何せ船長がルフィだからな!!いつも賑やかだぜ!!しょっちゅう何かしらやらかして、航海士に怒鳴り散らされたり、食料漁ってコックにぶっ飛ばされたりよ!』

くくくっと、思いだし笑いをしながら楽しげに話すライに次々と仲間になってからの日々を聞き出すローにペンギン達が驚く。

「船長が…悪意もなく、くだらない話を根掘り葉掘りきいてる…!!」

その様子は海賊とは、程遠く仲良く話す同年代の男同士のそれで…二人の周囲は酒場の喧騒の中でも穏やかに時が進んでいた。

そして、夜もすっかり更けた頃になりライが立ち上がる。

『結構話こんだな…俺はもう出るぜ?トラファルガー、ごちそうさん』

話がきりのいいところで、ライは立ち上がりそう告げた。

「……いくのか?」

どこか不満そうに返された言葉にライが苦笑いを浮かべる。

『またどっかで会えるさ、またそん時に…な?』

「そうかもしれねぇが…そうだ。今日はうちの船に来い。宿代も浮くだろう?」

予想外の返答にライは目を丸くしたが

『……いや。それじゃぁ、この先の再会に有り難みが減るだろ?だから、いい』

「……だが、俺はまだ話足りない」

『お前、女子か!』

暫くの押し問答の末、引き下がったローにホッと息をつくとライはローへと手を差し出す。

『じゃぁ、またな!ごちそうさん。死ぬなよ、トラファルガー。必ずこの先の海でまた会おうな!!』

ライの言葉に不適な笑みを浮かべ、手をとると二人は固く握手を交わす。

そうして、酒場を後にするライの背を見送ったローにペンギンが話しかける。

「…船長、いいんですか?何も聞き出せなかったじゃないですか」

「……あぁ。いいさ。この先の海で又あいつには会える。それに、ここで無理矢理聞こうとしたところで…あいつは絶対に口を割らねぇだろ。」

そう言って立ち上がり、扉へと歩きだしたローに続くペンギン達。

「だが、あいつは必ず。何かをするぞ?これからの海が楽しみだな…ククク…」

ローの言葉にペンギン達は顔を見合わせたが、すぐに気を取り直し船へと歩みだしたローを追いかけたのだった。


計算式の弾き出した未来

(あいつの瞳に宿っていた何かは、この海に必ず嵐を巻き起こすぜ?)


title by ポケットに拳銃





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