ジェラシーでメラメラ ポケット
「姉ちゃんっ!!」
エースが先を歩く1人の女を呼び止める。
『あ、エースおはよ』
「ん。今から飯だろ?一緒に行こうぜ!!」
『うん、行こう』
そう笑ったのはエースの姉#。
コルボ山を一緒に出航しここまで供に進んできた大事な大事なエースの姉である。
自他共に認める位にはこの姉を慕い、愛しているエースには今大きな悩みがあった。
それは・・・・
「おはよい」
『あ、マルコおはよう』
共に入っていった食堂で#に挨拶したのは1番隊隊長のマルコだ。
挨拶を返した#の顔はほんのり赤く染まっていて、対するマルコも満更ではなさそうな反応を見せている。
そう。今エースの頭を悩ませているのは、この#とマルコの関係についてだ。
ふてくされた顔を隠すこともなく、一言告げてその場を去るエースに#は不思議そうに首を傾げ、マルコは苦笑いを溢した。
「よー?今朝も不機嫌全開だなぁ?」
からかうような声掛けにその人物を睨むエース。
「うるせぇよ」
「おぉ、こわっ!!」
声の主サッチは自分を抱きしめながら言い返す。
「お前、少し大人になれよ??」
にやにやとしながら言われた言葉に一層顔を歪めたエースはサッチを今一度睨みつけると#の分も朝食を持ってその場を去るのだった。
そうして、その日もいつも通りに始まったのだった。
エースのシスコンは、この船に乗る誰もが把握済み。
そして、#とマルコがいい仲になりかけている事も…だ。
それがエースには尚更気に喰わないのだ。
「なんだって、あんなバナナ頭の寝ぼけた面した奴がいいんだよっ!!納得いかねぇ!!」
自隊の隊員にそう愚痴るエースの視線の先には、マルコと並んで書類を片手に話し込む#の姿。
#は当初エースと同じ2番隊に属していたにも関わらず、ある日マルコの一言で異隊が決まったのだ。
「#は頭がよく回る。1番隊で俺の補佐をしてもらいたい」
その一言であっと言う間に#の1番隊への移動が決定してしまったのだった。
「隊長…あんま言うとマルコ隊長に聞こえますよ?」
「いいんだよ。別に聞かれて困る事なんか俺はねぇ」
そう言い放ったエースに隊員は苦笑いを溢すのだった。
「随分な言われようだよい」
声に顔を上げれば、それまで#と話していた筈のマルコが目の前に立っていてエースはマルコを見上げて睨みつける。
「マルコ、てめぇあんま姉ちゃんに近づくんじゃねぇよ」
「俺らは同じ隊なんだから、話さねぇと仕事にならねぇよい」
「てめぇ…」
「それにお前がイライラしてるだけで、#は俺の事を好いてるように見えるがねい?」
はんっと勝ち誇ったような顔を見せたマルコにエースが殴りかかるが、マルコはそれを軽々と避けてしまう。
「っ〜…!!とにかく!姉ちゃんは渡さねぇからな!!」
そう叫んだエースは走りさってしまったのだった。
「おめぇも人がわりぃのな?」
「何がだよい?」
「いんやぁ?べっつにぃ〜」
口笛を吹きながら現れたサッチについっと視線を向けたマルコの顔は悪そうな笑みを浮かべている。
「エースにも祝福してほしいなぁ〜って素直に言ってやりゃぁいいのによ?」
「うるせぇよい…てめぇはだまってろい」
厳しい目を向けるとマルコは船内へと向かっていき、サッチはエースの走って行った方へと足を進めたのだった。
「エースくぅ〜ん??どうしったのぉ〜??」
声にエースが振り向けば、サッチが困り顔でエースを見下ろしていて、エースの眉間に皺が寄る。
「んだよ…サッチかよ」
「なんだよ?かわいい弟が落ち込んでそうだったから慰めに来てやったんだろ??」
「うるせぇなぁ。別に落ち込んでなんかいねぇっての」
「ふ〜ん…まぁ、いいけどぉ?お前さ、姉ちゃんの幸せくれぇ願ってやれよ…」
眉を下げて言ったサッチの言葉に黙ってしまったエース。
そして、一呼吸おいて話し出した。
「別にさ…マルコがダメってわけじゃねんだよ…」
「・・・・」
話し出したエースの言葉にサッチは耳を傾ける。
「いずれはそういう男ができっかしんねぇってのもわかってんだけどさ…まだ、まだ…俺だけの姉ちゃんでいてほしいって言うかよ…」
そこまで話したエースにサッチが吹き出した。
「ぶわぁっはぁ!!」
「な、なんだよ!!?笑うんじゃねぇっての!!」
「いや、笑うだろ!!それじゃ本当に嫉妬じゃねぇか!!」
げらげらと笑うサッチにエースは拗ねた顔でそっぽを向いてしまう。
一頻り笑い終えるとサッチがエースの頭をポンポンと撫でた。
「その気持ち…わからなくもねぇが。お前も#もよ、姉弟離れしねぇとなんじゃね?そろそろさ」
ウインクしたサッチの顔をみてエースはなんとも言えない気分になる。
「わかってるよ…けど、その内な…今はまだ嫌だ」
その言葉にサッチがもう1度笑う。
それから暫くの時間船尾で話し込んでいた2人だったが、空がオレンジに変わった頃にエースの腹が鳴った事で、2人は船内へと向かう為に歩き出した。
・・・・・・・・・・・が、直後。
エースが石化した。
それに気づいたサッチがエースの見た方に目を向ければ、そこにいたのは#の肩を抱き寄せ話すマルコと#で、固まった原因がわかったサッチは苦笑いを見せた。
話す言葉は波の音に遮られ聞こえないが、雰囲気からなんとなく察したサッチはエースと物陰に隠れた。
「なにすんだよっ!!?俺は今すぐマルコをぶん殴らねぇと!!」
「まぁ、待てっての」
エースの肩を掴んで止めるとサッチは2人に視線を向けた。
視線の先のマルコは真剣な顔をしていて、#は真っ赤に顔を染めている。
そして・・・・コクンと頷いた#にエースはしゃがみ込んで頭を抱えた。
「だぁぁぁぁぁあああ!!!!姉ちゃんがバナナ魔王の手にぃぃぃいいい!!」
「バナナ魔王って・・・・」
だってそうだろう!!っと顔をがばっと上げたエースの視界に次に飛び込んできたのは、マルコが#を抱きしめている姿。
もうエースの悲鳴は声にもならなかった。直後・・・・・・
2人の影が重なった。
「っ〜〜〜〜〜〜〜!!!?」
そうして、エースは走り出した。
「っ!?おいっ!!エース!!?」
慌ててサッチが後を追うとエースが船縁に足をかける。
「ちょいっ!!?待って!!!早まるな、エース!!!」
「姉ちゃんがぁぁぁ!!姉ちゃんがぁあああ!!!!!」
止めてもがいての応酬の末に、2人ははぁはぁと息をつきながら甲板に寝転がる。
「とりあえず。お前は少しずつ姉ちゃん離れすんだな…」
呆れた声を落としてからエースへと視線を向けたサッチは苦笑いを見せるのだった。
サッチの視線の先では、エースが今なお寄りそう2人を見て甲板をその炎で焦がしていた。
ジェラシーでメラメラ
(俺の隣にずっといてくれねぇかい?)
(え・・・・・)
(お前の事が好き…なんだよい)
(あ…でも…)
(おめぇの手のかかる弟もきちんと納得させるからよい…)
(マルコ…)
(俺の隣にふさわしいのは#。お前だけなんだよい)
(・・・・・ん)
title by ポケットに拳銃
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