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冷たい風のせいで、まだ冬の残り香が香るけれど
暖かい日差しのお陰でそれ程寒くはない。
振り返ればすぐ後ろに、春の気配が迫ってきている。
『ロビン、久しぶり』
にこっと笑って、ロビンに声を掛ければ
随分と大人びた彼女が笑い返してくれる。
教室を見渡せば、クラスメイトが声を掛け合って写真を撮っていて、その胸には生花が飾られている。
それは当然あたしの胸にも咲いていて、今日が本当に最後の日なんだと少し寂しくなる。
「悔いはないかしら?」
掛けられた声に顔を上げれば、心配そうな顔のロビン。
それにしっかりと頷く。
『うん、大丈夫。今日で色んな事からあたし卒業しなきゃ、ね?』
笑って返した時に、教室の扉が開いて先生が座れ〜なんて言いながら入ってくる。
それに従って皆席に着くと、サッチ先生が話し出す。
「無事今日まで来ることが出来て本当によかったと思う。この3年間お前らと過ごせた事は本当に幸せだと思ってる。なげぇ話は俺は苦手だからよ、これだけ言ってHRはしまいだ。卒業おめでとう。俺はお前らを誇りに思う!!」
その言葉に、クラス中が沸く。
涙を滲ませる子、野次を飛ばす男子、それぞれが好きなようにサッチ先生に詰め寄って近づく最後に時間を共有する。
それを、あたしは見つめていた。
サッチ先生の姿を目に焼付ける様に・・・・・・。
そうして、教室から式の行われる体育館へ移動する。
出席番号順にクラスが並ぶと始まった卒業式。
式が進むごとに涙を流す子が増えて行く。
あたしもその1人だったりする。
色んなことがあった3年間。
思い出すのは楽しかった事ばかり、でも、やっぱりそのどれにも先生がいた。
担任だし、当たり前なんだけど。
思い出が多すぎた。
でも、そんなくよくよした自分共今日でお別れするんだと思って、涙で滲む視界で前を見据えた。
そうして、卒業生が退場しようと席を立ち上がろうとした時だった。
少し後ろから、ガタっと立ち上がる音と共にあたしの名前が体育館に響いた。
「#っ!!!!」
びっくりして振り返れば、その声の主はマルコで・・・あたしは何故名前を呼ばれたのかわからなくておろおろしだす。
「俺は、ずっとお前が好きだった。これでお前と会えなくなるのは嫌だからよい・・・俺と・・・・付き合ってくれないかよい?」
真っ直ぐに見つめるマルコの瞳に一瞬目を奪われる。
(マルコが・・・・あたしを・・・??)
困惑するあたしを他所に周囲は盛り上がりだす。
それを先生達が静かに!!と声を荒げるが、隣に座ってた女子にあたしは無理やり立たされる。
(え、ちょっ!!?すっごい注目浴びてるから!!)
視線に耐えられなくて顔を俯かせた時だった。
「マルコぉ〜、女の子困らせちゃ駄目だろが・・・。それ以前にお前にはやんねぇっってんんだよ」
その声に又体育館は静まり返る。
あれ?と思って声のする方に目を向けたら、こちらに歩いてくるサッチ先生。
「ったく、卒業するまで待とうと思ってたのによ・・・お前のせいで予定がパーんなっただろうが」
頭をガシガシと掻きながら足を止めると、サッチ先生はあたしをその翡翠の瞳で射抜いた。
「俺はお前を愛してる。お前のころころ変わる表情も、なんにでも一生懸命なとこも全部全部・・・愛しくてしょうがねぇ・・・。マルコなんぞにくれてやるつもりは更々ねぇ。まして、これから先お前の隣に立つのは俺だけで十分だ。卒業のプレゼントは俺のこれからの人生っつー事でいいだろ?」
にっと笑って、両手を広げたサッチ先生を見てあたしは呆然とする。
今、サッチ先生何て言った??
こんな場で、こんな事言ってって、あ、あたし今日で卒業なんだった・・・。
まだ、頭の回転が始まらなくて呆然としていたあたしにサッチ先生は首を傾げて問いかけた。
「あれ?信じてねぇ?俺は、お前のことが大好きだ。俺のもんになれよ・・・」
そう優しく笑ったのを見て、あたしの目から1つまた1つと涙が零れ落ちる。
そして、あたしは走り出す。
待っててくれてる大好きな人の元に。
走り寄った勢いのままに抱きつけば、ものともせずに抱きしめてくれたサッチ先生。
呼吸をすれば、少しだけタバコの香りのする大人の男の人の香り。
でも、それはひどく甘ったるい香りで・・・・
『先生、あたしも先生の事がずっとずっと大好きでした・・・っ!!』
ぼろぼろと流れる涙を優しく拭いながら、知ってると悪戯っこみたいな顔で笑う先生の顔見て、あたしも涙でぐちゃぐちゃな顔で笑い返す。
周りからは、マルコ振られたなー!!なんてエース君やサボ君の声が聞こえると、あちらこちらから上がる祝福の声。
だけど、先生達の集まる席からは非常識ですよ!!なんてサッチ先生を叱責する声も聞こえたりした。
その時。
「グララララララ、めでてぇじゃぁねぇ!事実上は今日で卒業、新しい門出は祝ってもバチはあたらねぇだろう!!!」
言ったのは、この学園の理事長。
その言葉の後、あたし達はその場にいる全ての人から祝福された。
「よぉ、なぁに考えてたんだ??」
目の前に駆けつけた彼から笑顔で尋ねられる。
この人の笑顔はあの時から何も変わらない。
『うん、卒業式の時の事・・・思い出してた』
「あ〜、あれなぁ!!あん時は焦ったぜぇ。マルコの野郎、キザな事しやがるよなぁ・・・ったく、餓鬼の癖によ」
うえ〜と変な顔を見せた彼にあたしは笑う。
『そう言えば、あの後マルコと話してたよね??』
「ん?あぁ、あれね。何でもねぇよ?#は気にしなくて平気、平気!!」
『え〜?ちょっと!サッチ、あたし凄い気になるんだけど!!』
「え?何々??#ちゃんてば自分の事だとでも思っちゃった??」
『ちっ!!違うもん!!』
「ほんとに〜?」
じゃれあう2人は、自然とその手をきつく繋ぐ。
離れた時間を埋めるように、
「仕事、慣れた?」
『うん、まぁまぁ。』
「オヤジの誘い、ことわらねぇで一緒に働けばよかったんに・・・俺心配〜」
『仕事場一緒とか!!逆に恥ずかしいわよ!!』
「またまたぁ〜、ちょっと惜しい事したとか思ってんだろ??」
『全然!これっぽっちも!!』
「うわっ!!でた!#のツンデレ〜!!」
騒いで歩いていく2人の道が、舞う花びらに埋もれていく。
季節は、春。
出会いと別れの春。
けれど、この2人の手は決して離れることはないのだろう・・・
Congratulations on your graduation!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こちらは、リクエストいただいた蘭さまが明日卒業だと聞いたので
これはもしや、我が家に訪れていただいてるほかのLadyももしかしたら
卒業式なんじゃなかろうかと(確認できてないのにww)
なんとか間に合わせねば!!と奮起して綴ったお話でした!!
直接お祝いはできませんが、こんなんでよろしければ卒業のお祝いになればと思います:)
蘭様、いかがでしたでしょうか??
ちょっと無理やり感でちゃったかな??と焦ってますが・・・
何せ学ぱろ初挑戦!!どっきどきのアップです、はい!!ww
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