PROJECT | ナノ




街を歩けば、そこかしこから飛んでくるのは桜の花弁。

それを見るたびに、あたしはあの日の事を。
あの場所であなたと過ごした日々を思い出すんだ。

桜の花弁が飛んで来る方を見てから、また前を向いて一歩踏み出すと
遠くからあたしの名前を呼んで、かけてくる貴方がそこにいた。






あなたと出会ったのは、木漏れ日に暖かな日差しが少しだけ眩しいそんな日でした。




その日は高校の入学式。
晴れ渡る空に穏やかな風。そんな小春日和の暖かい日にあたしとあなたは出会った。

1Dの担任、地理の教師。
そう紹介されて壇上に上がった人をあ、あたしのクラスだぁなんて思って顔を上げた時は心底何かの間違いであってほしいと思った。


壇上からマイクを通して挨拶の言葉を投げかけるのは、やたらまったらどでかい明るい茶髪のリーゼントに少し離れたこの位置からも確認出来る目尻の傷。

そして、挨拶の最後に投げかけられたのは



「俺のクラスのかわいこちゃん達はこれから3年間どうぞ公私共によろしくなぁ!!男子はどうでもいいや!!」

そんな声に上級生からは、でたぞ!サッチの女至上主義!!なんて笑い声が響いて、教師陣からは呆れた笑い声。
本人はそんな事おかまいなしに、担当クラスである方向に向けてウインクを放っていた。

あたしの学生生活の全て真っ暗に思えた。
なんてったって、この学校は3年間クラス替えなしのエスカレーター式に学年が上がるなんとも珍しい学校。
あの壇上でふざけた挨拶をしてる教師とこれからの3年間毎日顔を突き合せなくてはいけないのだ。
(なんでも、それは理事長の仲間を家族のように大切にしよう精神から来てるもので、クラスの団結なんかを強くする為だとかなんとか・・・くそ、いらない事してくれた!!)

誰だあんな奴採用しやがったのは・・・
あ、あそこにいる凄い髭した理事長か・・・
そんな風にあたしの中での彼の第一印象はくっそ最悪だった。

それからの学校生活なんて本当に心底、最悪だった。

事あるごとに、やたら軟派教師サッチが絡んでくるわ。
テストの点数が何で俺の教科だけ低いんだ!!
やれ、あーだ、こーだと理由を着けて一悶着を起こす毎日。


「お前!#!!まぁーた、地理だけ点数最悪じゃぁねぇかよ!!どういうこった!!」


『うるさい、話しかけないで。パンは黙って鳩にでも食べられてて』


気付けば、そんな言い合いを常日頃から繰り広げていたらクラスの名物風景とまで言われる始末。

ほんと心底どうでもいいし、あたしとあの教師を結び付けんなとさらにあたしの反発はひどくなる一方だった。



でも、そんな風に毎日を過ごしていたある日。
教室で友達であるロビンと話しながら先の授業でよくわからなかったところを教えあっていた。


『あれ?ここわかる?ロビン??』


「あら、あたしも苦手なのよね・・・この文法・・・」


そう言ったロビンと顔を見合わせて、どちらからともなく席を立った。


『しょうがないか・・・っ面倒だけど、職員室聞きに行こう』


「そうね」


立ち上がって、教室を出る。
並んで職員室に向かっている途中でロビンがクラスメイトのマルコに呼び止められた。


「おい、ロビン。どこ行くんだよい!次の授業、科学委員は準備室に来いって呼ばれてただろい?」


「あ、そうだったわね・・・」


『あ、いいよ。あたし聞いて来て、そのままノートに取ってくるから後で見せるよ』


「そう?じゃぁ、悪いわね・・・」


そう言って、マルコと科学準備室に向かうロビンに手を振ってあたしは職員室へと急いだ。


『失礼します』


ガラガラっと音を立てて職員室に入り、お目当ての古文の先生であるビスタ先生を探すが・・・


『あれ?いない・・・』


そう職員室にいなかったのだ。
困ったなと思いつつもまぁ、後でいっかと職員室を後にしようと振り返った時。
ボフンとあたしは顔面から何かに突っ込んだ。


「おいおい。#ちゃん積極的〜」


声に慌てて一歩下がって見上げれば、嫌いなフランスパン教師サッチがいた。


『急に真後ろにいないで貰えます?セクハラで訴えますよ』


何、それ!!!?勘弁してよ!!とキャンキャン喚く教師に人知れず溜息を溢すと、それじゃぁと横を通り抜けようとしたら



「お前誰か探しにきたんじゃねぇの?」


『・・・・ビスタ先生を・・・』


「あぁ〜、ビスタは午後から出張いっちまったんだよ?何、どっかわかんねぇとこでもあった??」


身をかがめてノートを渡せと手を差し伸べてきた先生に疑惑の眼差しを向ける。
それに気付いたサッチ先生は首裏に手を当てながら苦笑いをして言った。


「お前ね、疑りすぎだぞ〜!俺仮にも先生よ?教科は違うが、こう見えて古文は得意だったんだ。いいから、見せてみろよ」


『・・・・ここ』


そう言って持っていた教科書とノートを開いて渡す。


「ん〜どれどれ・・・あぁ、これなぁ!!確かにここはちょっとわかりにきぃよな?でもさ、ここを・・・・・・・・」


そう言って、サッチ先生の癖に。
ビスタ先生よりもわかりやすく、丁寧に説明されてしまえば、自ずと謎も解けてしまうわけで・・・
何より、意外・・・・だった。

自分の受け持つ授業以外の質問にも何の支障もなく答えてしまうこの人に。
しかも、いつもはあんなちゃらんぽらんの癖に


「ほら、これで考えてけばここのもわかんだろ?」


それに答えた時。
あたしが見たことのなかった笑顔で、よくできましたぁ〜!なんて、頭撫でられたりなんかしたもんだから堪ったもんじゃない。


かぁっと熱くなった顔に、瞬時に顔真っ赤になってる!!と気付いたあたしは思わず



『触らないでください!!!!』



職員室のど真ん中で叫んで、ばたばたと走り出て行ってしまった。




「へ?俺、なんかした??」


「お前さん、年頃の女に気安く触りすぎだろうに・・・」


「イゾウ、うるせぇよ・・・」


「(あいつ・・・あんな顔真っ赤って事はあれか、照れてたのか・・・何だよ、かわいいとこもあんじゃねぇか・・・ククク)」


「サッチ、生徒に手出すなよ?」


「ださねぇよ!!!」




この日から、訳の分からない内におかしな変態教師のギャップとやらにやられてサッチ先生の顔があたしはろくに見られなくなってしまったのだった。


にしたって、簡単すぎない?あたし、これから大丈夫なんだろうか・・・・



そんな風にあたしの恋が始まった。
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