レディ&レディ
『あれぇ〜??#〜??どこ行っちゃたんだろう』
ルカが船内をキョロキョロとしながら進んで行く。
と、そこにショーンが現れた。
『あっ!!ショーン、#知らない?』
「おぉ、ルカ。#ならさっき甲板に走って行ったの見たぞ?」
ショーンの言葉に礼を言ってルカは、甲板への道を歩き出した。
そうして、辿りついた甲板への扉を開けると少しずつ開く隙間から捜し人の声が聞こえだす。
『きゃぁぁぁぁあ!!』
楽しそうな声にその顔は自然と笑顔に変わる。
その視線の先にいたのは、エースとじゃれるこの船において一際小さなその人物。
「これで、どぉぉぉだぁぁぁぁあああ!!!!」
びゅーんっと口に出しながら、その小さな人影を両手で上に持ち上げて走り回るエースに思わず苦笑いを浮かべる。
その近くでサッチがエースに見つかったら又怒られんぞ?なんて声を掛けているが当の本人達は聞こえていないのか今だ、きゃーきゃーと騒いでいる。
溜息を1つ吐くとしょうがないなぁなんて顔をして、ルカはサッチの隣に並んだ。
「お、ルカ」
片手を上げたサッチに、同じ様に手を上げて笑い返す。
『懲りずに又やってんのね??あの子達』
「あぁ、あいつが来たら雷もんだぜ??」
『びっくりする程過保護だからね〜』
「まさか、あんなんなるとは思わなかったよなぁ」
『あ、それはあたしも思ったわ』
サッチと話すルカはクスクスと笑う。
『あっ!!ママだっ!!!!』
#に気付いた小さな影がエースに降ろしてもらうとルカに走りよってくる。
その人影が、目の前にやってくるとルカは目線を合わせる様に座り込んだ。
『#、またやってたの??この間も見つかってパパに怒られてたじゃない』
『危なくないのに、パパが気にしすぎなんだよ!!だって、エースは#を落っことしたりなんかしないもーん!!ね、エース!!』
頬を膨らませて、隣にきたエースを見上げて言った。
そう言っている子供の漆黒の髪は潮風に吹かれて靡き、エースを見上げる不満そうな瞳は紅い。
「あぁ!!俺はぜってー#を落としたりしねぇぞぉ!!」
そう言ったエースに、大好きーなんて言いながら抱きついてるのは
5年前にイゾウとルカの間に授かった女の子だ。
そして、船の引いては傘下の誰もがさぞや厳格な父となるのだろうと思っていたイゾウは予想を大いに裏切り、過保護で娘にデレデレの所謂バカ親へと変貌した。
我が子とエースのやり取りを見ていたルカはサッチと顔を見合わせ、しょうがないなぁと笑う。
そこへ・・・・・・・
「・・・また、やってんのかい??」
地の底から響くような声が、そののどかな空間を引き裂いた。
振り返れば、笑顔に似つかない青筋を額に浮かべたイゾウの姿。
そして響いたのは
「何度も飛行機やんのはやめろといっただろう!!」
イゾウの怒声だった。
それに#は反論した。しかも、初めて。
『何で駄目なの!!!!』
「もし落ちたらどうするさね」
イゾウは静かにそう言って我が子を見下ろす。
『エースは#を落としたりしないもんっ!!』
「んな事はわかってるがねぇ、もしもって事もあるだろぉ」
『でもさっきエースは絶対に#を落としたりしないって言ったから大丈夫だもん!!』
「この世に絶対なんてねぇんだよ、もしもを考えて動かなきゃいけないんだ。もし、エースがお前を落とせば、怪我しちまうだろ」
今日はやたらとつっかかってくる#に段々とイゾウがいらいらとしだす。
『しないもん!!エースは・・エースは絶対#を守ってくれるって言ったんだもん!!そんな意地悪なパパなんか・・・』
#がそこまで言った所で成り行きを見守っていたルカが、やばっ!!と間に入ろうと一歩足を踏み出した時、甲板中に響く声で#が声を荒げた。
『だいっきらい!!』
その大きな紅い瞳に沢山の涙を浮かべ、イゾウを見上げた言った後#は走って船内へと行ってしまった。
『#!!!!』
ルカが追いかけようとした時に、サッチがその手を掴んだ。
「俺が行ってきてやっから、お前はコレ。頼むわ」
へ?とサッチの指さす先を見れば、呆然としてピクリとも動かないイゾウ。
『けど・・・・』
#の入っていった扉を見てから、ルカは眉を下げる。
「こういう時は親じゃない奴の言う事のが聞くんだぜ?子供ってのはよ。それに、お前が行って話しても多分あいつきかねぇかもだしよ」
『何、それ?あたし親失格って事?』
「ちげぇっての。まぁ、いいからサッチさんに任せとけってんだよ」
そう笑うとサッチは走って船内に入って行った。
それを見送ったルカは少しだけ寂しく思いながら、イゾウの肩を叩いたのだった。
「#が・・・・パパ嫌いって・・・・」
その後のイゾウは目も当てられなかった。
ぶつぶつと嫌われたと呟いては、溜息を溢し。
以前ならきっと銃を辺り構わずぶっ放し周囲に当り散らしただろうが、#が産まれてからの彼はかなり丸くなりそんなことしなくなり、船員達は安堵していたのだが・・・
隊長である彼のそんな姿に逆に彼らは気味悪がった。
『イゾウ、大丈夫だって。今サッチが#と話してくれてるし、明日にはけろっとしてるって』
イゾウの肩を叩きながら、そう宥めるも落ち込んでしまった彼は中々浮上することはなかった。
そうして、夕方になり夜になっても#はイゾウの前に姿を見せなかった。
「もう駄目だ・・・・・」
部屋に戻っていた2人だったが一行に#は2人の元には戻ってこず。
落ち込みすぎたのか、部屋に隠していた酒を持ってイゾウは酒飲んでくると言って部屋を出て行ってしまった。
それから、ルカは1人の部屋で窓から見える月を見上げて溜息をついたのだった。
9時を回り、さすがにもう心配で溜まらなくなったルカが捜しに行こうと席をたった時、部屋に小さなノック音が響いた。
それに慌てて扉を開けると、サッチが寝ている#を抱えて苦笑いを浮かべていた。
その隣には罰の悪そうなイゾウもいた。
『仲直り・・・・できた?』
微笑んだルカにイゾウが苦い顔を見せるとサッチが口を開く。
「それがよ、謝る言葉を一緒に考えてる内に寝ちまってよ。イゾウとは今運んでる時にあったんだよ」
それにそっかと返して笑うとルカはサッチから我が子を受け取る。
そうしてサッチが出て行ったあと、ルカは#をダブルベットの真ん中に寝かせるとその隣に横になり、イゾウを振り返る。
『おいでよ・・・』
それに不安そうな笑顔を浮かべながら、ルカとは反対側に横になる。
『言い返すようになるなんてね・・・』
「あぁ」
『これも又子供を育てる親の通る道なんだから、一々落ち込んでたらきりないよ?イゾウ』
ルカの言葉に寂しげな顔を見せるイゾウ。
「毎日一緒にいるのにねぇ・・あっという間に成長していっちまうな・・・」
『そうだね』
眠る我が子の顔にかかる髪を避けながら、そんな話をする。・・・・と、
『・・・・パ・・パ・・・・・・ごめんなさい・・・』
#の寝言に2人は顔を見合わせる。
『ほら、こんなにイゾウに言った事反省して。言っちゃった事後悔してる』
薄っすらと笑みを浮かべて、ルカがイゾウに言う。
イゾウはそれまで落ち込んでいた顔はどこへやら・・・
今は穏やかな顔を見せている。
『ママ・・・・パ・・パ・・・・だ・・・すき』
紡がれた言葉に2人は顔を見合わせて笑顔を浮かべると、#を起こさぬ様に抱きしめると寄り添うように横になる。
「全く・・・本当に可愛くてしょうがないねぇ・・・このお転婆娘は・・・」
イゾウの声は明るい。
『ふふふ・・・なんたってあたしとイゾウの子ですから?』
「そうだな」
そうして2人はくすくすと笑う。
「久しぶりに明日は3人でゆっくり過ごすかい?」
『いいね、明日はあたしサッチに話して非番にしてもらう』
にっこり笑ってイゾウの言葉に同意する。
そうして2人は明日の休みに思いを馳せると、暖かな体温を抱きしめて眠りについたのだった。
レディ&レディ
まだまだ子供だと思っていたのに・・・
小さくても、立派なレディだな。
2人のレディの狭間できっと俺はいつまでも翻弄されるんだろう・・
title by ポケット
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今回は堕ち旅if、ルカさんがイゾウと夫婦で子供がいたらと言う設定で書かせて頂きました!!
ど、どうですかね??
でろでろに甘いイゾウさんもいいかなと思ったのですがそれはもしや他のお宅にもいるんじゃないか?って事でここでは、ちょっと過保護なイゾウさんとちびちゃんが喧嘩をしちゃったって感じで書かせて頂きました!!
ちびちゃんは、なんかとりあえずかなりやんちゃな女の子をイメージして書かせていただきました!!
2人の子なら女の子だな!っと勝手に女の子にしてしまいましたが・・・
こんな感じでいかがでしょうか??
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