two
『へぼかったね…』
「だねぃ…」
「そうさねぇ…」
船淵に並ぶ#、マルコとイゾウはつまらなそうな顔をして積荷を運び出す4番隊と2番隊を見守った。
「久しぶりの敵襲がこれじゃ張り合いってもんがないねぇ」
『ほんと。あたし何にもしてないよ…』
「いや、お前。大いに破壊してただろい」
呆れ顔のマルコが#を見て言う。
「お前の弓で崩壊してただろうに。あいつら…」
楽しげに笑いながら言うイゾウは正にドSである。
『あれ?随分積荷多いねぇ?』
敵船から続々と運び出される積荷を見て#が呟く。
「大方、どこぞの商船でも襲った後なんだろい」
そう返すとマルコは積荷の確認作業のために、クルーの集まる一角へ向かう。
それをイゾウと#も追うように歩き出したのだった。
歩みを進める#の視線の先に、一足先に確認作業をしていたサッチとエース、そして2番隊と4番隊のクルー達を見つけると小走りに走り出した時。
サッチがある物を手に持ちエースに声をかけたのだった。
「おい、エース!珍しいもんがでてきたぞ!」
その声にエースがサッチをみるとその手には悪魔の実。
「……悪魔の実か?何の実だ?」
「さぁな?そりゃ、これから調べるよ」
『サーッチ?』
サッチが振り向けば#の姿。
「お、#。見ろよ、これ」
『あ、悪魔の実だー。久しぶりに見たわ』
「あぁ。これで、俺も能力者の仲間入りだぜ!!」
『食べるの??すごーくまずいよ?』
うえぇと舌を出して嫌そうな顔をする#にサッチは苦笑いを零す。
「一応何の実か調べてからな?変な能力なら食わねぇよ」
『ん、そっか。じゃぁ、後で一緒に調べよ?』
笑った#にサッチは頷いて、彼女の肩に腕を回す。
「そうしような」
そんな幸せそうな二人に笑みを浮かべる周囲にいたクルー達とエース。
そして、マルコとイゾウ。
彼等から少し離れた所で、一人の男が恐ろしいまでの瞳でサッチの手の中にある悪魔の実を見つめて笑みを浮かべていることに、誰一人。気付かなかった。
積荷の確認作業が終わる頃には夕暮れが迫っていた。
それに気づいたサッチ率いる4番隊の面々は慌てて宴の準備のために動き出す。
が、4番隊のクルー達はサッチに宴の準備は俺らがするからと#と一緒に悪魔の実を調べる事を進めた。
それに、悪いなと言葉を返しサッチと#は書庫へと足を運んだのだった。
『えっと………悪魔の実、大図鑑はと…』
書庫へと入った#は早速目当ての本を探すが、サッチが突然後ろから#を抱き竦める。
「少し位のんびりしよーぜ?」
見上げたサッチの顔はニヤリと笑う。
『もう…なら先に調べてからね?』
返した言葉にサッチは、へい、へいと返して#の唇にキスを落とすと#の背では届かない場所にある図鑑を取ると備え付けの机にそれを置き#を膝に座らせると表紙を捲った。
『ないねぇ?未確認の奴かなぁ?』
「残るは自然系か?」
そう言って、ページをパラパラと捲っていった後に現れたのは。
『あ』
「お」
『自然系………だね?』
「ヤミヤミの実…随分とかっこよさげだな!!」
サッチの顔を振り返り見上げた先には、にっと笑う顔。
『そうだねー、でも。自然系ってゆーか、悪魔の実の中でも最凶らしいよ?』
「使い方次第だろ?」
何事もな?と笑うサッチの顔は嬉しそうだ。
『ん。そうだね?』
それに笑い返した時。
部屋にノック音が響いた。
直後、入ってきたのはティーチ。
「よぉ。サッチ。」
「おぅ。ティーチか、どうした?」
「いやよ。さっきの悪魔の実、見せてもらおうかと思ってよ」
「ん?おぉ、いいぜ?」
そう言ってサッチは立ち上がりティーチの元へと悪魔の実を片手に歩み寄ったがって時。
#の視線の先にキラリと鈍く光るものが見えた。
『サッチっ!!?』
声をあげて、#がサッチへと走り出してドンっと押した時。
#の腕から鮮血が舞った。
「っ!!?#っ!!」
サッチが体勢を立て直して駆け寄ると、彼女の腕から滴り落ちる大量の血にサッチはティーチを睨みつけた。
「てめぇ、何のつもりだよ!!?」
それに、ティーチは笑いながら告げた。
「ゼハハハハ、そりゃ俺が長年探し続けていた悪魔の実だ。おめぇにゃもったいねぇ」
「だからって!!」
「おーっと。勘違いすんなよ?#は勝手におめぇを庇って怪我したんだぜ?」
憎たらしい笑みを浮かべたティーチに、ぎりっと歯を食いしばるサッチに#が言葉をかけた。
『サッチ、あたしは大丈夫だから!』
そう言って立ち上がると、ティーチを睨む。
「おぉっと?おっかねぇなぁ??」
笑うティーチに更に厳しい視線を向ける。
「おまっ!動くな!傷はふけぇんだぞ!!?」
溢れる血の量に慌てるサッチを一蹴して、#は告げた。
『もう、ティーチから攻撃なんて喰らわないわよ。サッチは皆を呼んで!!』
「好きな女置いて行けるかよ!!」
「おーっと、他の奴等呼ばれちゃ事だ」
そう言って、ティーチは懐から出した銃をサッチへ向ける。
「悪魔の実を俺に渡せ。そしたら、見逃してやるぜ?ゼハハハハ」
「いーや。おめぇにこれを渡したら碌な事なさそうだ」
サッチも負けじと#を抱き寄せて、ティーチを睨みつける。
「ふん。じゃぁ、仲良く死にゃァいい」
そう言って、ティーチは引き金をひいた。
パァーン
パァーン
船内で仕事をしていた隊長や白ひげの元に2つの銃声が耳に入り、それぞれが走り出す。
まずは、白ひげの部屋に隊長各が揃い白ひげの無事を確認して安堵のため息を零す。
「おい。サッチと#はどうしたぁ?」
いつもなら、あいつらが1番に血相変えて飛び込んでくんのによ?
白ひげの言葉に、隊長達は顔を見合わせて部屋を飛び出していくとそれを白ひげも後から追う。
「確か、2人は書庫に!!」
エースが一目散に走り出す。
そして、書庫にたどり着いた時。
扉の下から流れてくるモノを見たエースが呆然とそれを見下ろす。
そして、後から追いついたマルコ達と白ひげもそれに気付き、険しい顔が更に深く変わる。
白ひげが足を踏み出し、扉を開けたその先にいたのは。
血を流し倒れるティーチと、それを見下ろすサッチと#の姿だった。
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