正義の名の元に君を殺す
「本当に俺には着いてこないのか?」
『ドレーク。えぇ、あたしは反乱軍へ行くわ』
「道は違えど、志す想いは供に進もう。それじゃあ、私は行く」
『またいつか…ね』
あの日。供に正義を志し、背を預け供に闘った友と別れ、お互いの道に別れた。
そして今、ドラゴンさんに任された任務中。
かつての上司と遭遇した。
「あらら。まさか###ちゃんに会えるとはねぇ」
『お久し振りです。大将、青雉』
「もう部下じゃないし、そんな畏まらないでクザンでいいよー?」
『そうですか?では、クザン。そこをどいていただけますか?』
「んー。それは、無理な話なんだよなぁ。君も任務でしょ?俺もさセンゴクさんに言われてここ来てるわけよ…」
『元部下の始末をつけろってとこですかね…』
「大人しく海軍へ戻って反乱軍の情報を渡してくれるなら、手荒な真似はしなくていいって言われてるからさ。一緒に帰らねぇ?俺も可愛い元部下を手にかけたくないわけよ?」
『残念ですが…それは無理なお話です。私の正義は海軍にはありません!』
「それが答えか?」
『えぇ。 残念ながら。もう二度と海軍へと戻るつもりはありません。そこを通して頂けないなら…力ずくで通らせていただきます…』
「なら、俺も力ずくで止めなくちゃいけないんだよねぇ」
そうして、二人の闘いは始まった。
だが、青雉は大将。
そう簡単に通れるはずもなく。
戦闘は次第に劣勢の一途を辿る。
「ねぇ、俺に敵うつもりでいたの?」
『どうでしょうか。敵わずともせめて、情報だけでも彼に届ける事が出来れば、ハァ…それであたしの勝ちと思っています。ハァ…ハァ…』
「今からでも遅くないよ?俺と帰らない?」
『先程お断り致しましたので。その答えは変わりません』
その時、夕暮れの空へと響いた空砲。
それを聞いた###はニヤリと笑みを浮かべた。
『どうやら、私の勝ちの様です…』
「単独任務じゃなかったわけね…」
『あとは出港、この海域を離れるまであなたを止めればあたしの任務は完了です…』
「ねぇ、###ちゃんを捨て駒にしたドラゴンも変わらないんじゃないの?」
『何がですか?』
「君が捨てた正義のコートと…」
『そんな事ないです。ドラゴンさんは私が情報と供に戻るまでが任務だと告げていました。つまり、これは海軍と対峙した場合の私のなかでのもうひとつの任務です。ドラゴンさんには怒られるでしょうけど。』
「そう。それじゃあ、君に免じて。その任務は果たさせてあげるね…覚悟は?」
『あなたと…クザンに会った時から覚悟はできてます…』
「そう…」
パキパキと音をたて体を氷へ変えていきながら、###に歩み寄る青雉。
『最後はクザン、貴方に殺される事を願っていました』
そう笑顔を浮かべたのを最後に青雉は彼女を抱き締めた。
「最後の最後に言う言葉がそれかよ…」
パキパキと一瞬で凍りついた彼女を見つめポツリとこぼした青雉は凍りついた###の顔に手を伸ばし、先程まで暖かかったであろう頬を撫でる。
そして、その手を握りしめると腕をそのまま###に振り下ろした。
衝撃でがらがらと崩れ落ちた先程まで彼女を構成していた体を見つめ
「俺も君が何よりも大切だったよ…これまでも…これからも…」
夕焼けはとうに沈み、空には一番星が輝き二人の最後の時を見守っていた。
『私は、守る正義の名の元に。正義の鉄槌を下すのです。』
青雉の耳に残る在りし日の###は、そう誇らしげに話していた。
「俺らの正義が分かれた時。この終わりは決まってたのかね…」
###のしていたネックレスを拾い上げるとそれを懐にしまい青雉はその場を振り返る事なく後にした。
かつて愛した男に最後を託した女。
かつて愛した女に手をかけた男。
その物語は数年後、青雉の離反により
また新たな始まりを迎えるのかもしれない。
title by Mujun
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