3rd memorise of izo
俺のルカとの思い出?
あるに決まってるだろう?
お前らと違って風流な、思い出深いのがなぁ。
はあ?話せって、聞きたいのか?
まぁ、いいが。
ありゃあ、冬島での上陸の時だ。
『ざ、ざむい……』
「おい、鼻水垂れてんぞ?鼻咬めよ…」
『エース、拭いて!』
「嫌に決まってるだろ!」
『あ!そうか!!エース、拭かなくていい!拭かなくていいからさぁ…抱きつかせてー!』
「止めろよ!動きにくいだろっ!」
『良いではないか、良いではないか!』
「どこの変態親父だよい、お前は…」
『だーーってぇ、エースに引っ付いてると寒くないんだもぉーん!』
「そりゃぁそうだろうねぇ?炎なんだ。エース、諦めてくっつかせてやれ。可愛い妹に風邪引かれたら困るからねぇ」
「たく、しょーがねぇな…。おら、来いよ」
『ぃーやっほぉーーーい!!!!』
謎の言葉を叫びながら、飛び上がるとそのままルカはエースに抱き付いた。
「うおっ!!急に飛び付くなよ!あぶねぇなぁ」
文句を言いながらも、ふらつく事もなくルカを受け止めたエースに笑いかけながらルカが口を開く。
『とか言いながらも受け止めるエース。男前〜!』
ケラケラと笑いながらモゾモゾとエースの背中へ器用に移動するとエースにおんぶされる形で落ち着いたルカはエースの首に顔を寄せながら
『ふぁー、温いわぁ…生き返るー』
その端整に整った顔を崩して、おっさんの様な発言をする。
それを共にいた、マルコやサッチ、イゾウ、ハルタが二人を見て微笑みを浮かべる。
そんな海賊らしからぬ和やかな一瞬を遮ったのはルカの声。
『ねぇ!エース!あれ、あのチラシのとこ行って!』
そうエースに頼むとエースはルカを落とさぬように腕で支えると指差す方へ歩き出した。
それに着いていく形でイゾウ達も歩み出すとルカが振り返り声を出してイゾウ達を急かす。
『ねぇっ!これ!見てよ!今夜だって』
ルカの声に顔を見合わせて歩み寄ると一枚のチラシに目を向ける。
「ほう、今は冬島の夏にあたるみたいだねぇ?」
「花火大会かー!楽しそうだねっ!」
「ルカの世界にも花火あったのかよい?」
『うん!夏にあっついなか花火上がる近くでビール飲みながら見てたよー!毎年!花火大好きなんだー!皆で見ようよ!』
ルカの提案にマルコ達の顔が一気に曇った。
「わりぃない。俺はこのまま船に戻ったら、近くの島にしかない薬草を買い付けに飛ばなきゃいけねんだよい」
「俺、まだ書類残ってるから夜はそれ片付けねぇと…」
「僕たちは他の皆と酒場に行く約束しちゃってるんだよ」
マルコに続き、サッチやハルタ、エースまでもがもう今夜予定を入れてしまっていて断られたルカは残念そうに顔を俯かせる。
『そっかぁ…残念だけど船から見ようかな…』
心底残念そうに漏らしたルカにイゾウが声をかけた。
「なら、俺と行くかい?」
イゾウの申し出に瞳を輝かせて、振り返ったルカにイゾウは笑みを浮かべる。
『ほんとに!?』
「あぁ、俺はまだ夜の予定もいれてないからねぇ。ルカが俺とでもいいなら見に行くかい?」
『行くーー!』
両手を挙げて喜ぶルカにエースが大人しくしろよ!と声をかけているがそんなの耳にも入らないのか、にこにこと上機嫌に笑みをこぼしていた。
「なら、イゾウ。ルカを頼むよい」
マルコがイゾウに告げる。
「誰に言ってんだい?マルコ。心配しなくても、ルカを危険な目にあわせたりなんざしねぇから、お前らは気にせず行ってこい」
イゾウの言葉に全員が安堵の色を見せると、全員で船へと戻っていった。
それから、数時間後。
マルコは近くの島へ。
サッチは自室で書類仕事。
ハルタやエースは他の家族を連れて酒場へと出掛けていった。
そして、時間を見てルカはイゾウの部屋へと向かった。
コンコンコン
『いーぞー!そろそろ行こうよー!』
声をかけ少し待つと、扉が開き中からいつもの着物の上にコートを羽織マフラーを巻いたイゾウが姿を現した。
「随分着込んだねぇ?」
クツクツと笑いながら、ルカの格好を見たイゾウが問うと
『この寒空だからね!エースもいないし、着込まないと見てるうちに凍死しちゃうよ!』
必死の形相で答えるルカにイゾウは声を出して笑うとニヤリと笑いながら言った。
「エース程暖はとれないだろうが、寒けりゃ俺に引っ付いてろ」
色気を駄々漏れさせながら言ったイゾウに少し頬を染めて、わかったーと言ったルカをからかうと二人は連れ立ち船を後にした。
『この寒いなか結構人いるんだねぇ?』
「そうさねぇ?この島の名物みたいだからな。俺らみたいにたまたま居合わせた船乗りなんかも出てきてるみたいだからねぇ」
『あ、イゾウ!あそこ人いないし、よく見えそうだよ?』
人混みをはぐれないように、イゾウの腕に腕を絡めながらルカが指指したのは、打ち上げ場所から少しだけ離れた山肌にせりだした岩。
それなりに大きな岩は大人が二人、そこに座ってもまだ余裕がありそうだったので、二人はそこに陣取り、花火見物をする事に決めたのだった。
岩場に寄り添うように座るも、ルカは寒いらしくカタカタと震えているのに気付いたイゾウはルカに声をかけた。
「大丈夫か?」
『ヤバイ。花火始まる前に凍えるかも』
少し笑いながら言ったルカに断りを入れるも、返事を待たずにイゾウは立ち上がると、ルカの後ろに回り。
後ろからルカを抱き締めるように腰をおろした。
『あわわわわ…イゾウさん。ちょっと恥ずかしいわ、この状況!』
狼狽えるルカに笑いながら
「それでも、この方が寒くないだろう?」
イタズラが成功した様な顔を見せると、座っても自分の肩までしかないルカの顔を見下ろしてニヤリと笑う。
『そうだけどさー。イゾウがやると破壊力抜群だね!』
そう笑いあっていると大きな音と共に花火がうち上がった。
二人はすぐにそちらへ顔を向けると、雪の舞う空に大輪の花が咲いた。
そこから一気に沢山の花火上がりだし、二人は会話も忘れ、花火にみいられていた。
それから一時間半に渡り次々と灰色の空に咲いた花は人々を魅了したのだった。
会話も忘れ、魅煎っていた二人は最後に上がった一際大きな花火を見ると二人は顔を見合わせて微笑み会うと、岩場から飛び降りるとその場を後にし、船へと帰っていった。
「花火はどうだった」
歩きながら、自分より頭一個半程小さな顔を見下ろし尋ねると、ルカが口を開いた。
『向こうじゃこんな空気澄んでなかったからあっちで見た花火の数倍もきれいだった。』
ルカの返答にニヤっと笑みを向けるとさぞ満足そうにイゾウは言った。
「楽しかったなら、遥々出てきて正解だったな」
笑ったイゾウに笑いかけると、寒いし早く家帰ろうと促すと足早に進みだした。
今でも一番に思い出すのは、あの大輪の花に照らされた輝く君の笑顔。
あの日の記憶は二人だけの遠い思い出。
白く輝く景色に咲いた大輪の花は、まるで君のようだった。
俺らを照らした君は儚く消えてしまったけれど、君の笑顔は今も鮮明に目に浮かぶ。
いつかまたあの島に行く時は、君を想い、一人酒を煽りながら花火を見よう。
そうしたら、きっとまた君に会えるそんな気がするから。
大輪の華に僕は君を見る
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