1st memorise of marco
あれは、ルカが青雉と闘った少し後くれぇの話だったかねい…。
書類を片手に廊下進みながら俺は提出された書類に不備はないか、確認をしながら歩いていた。
パラパラと捲る書類の中に1枚。
読みやすいがまだ慣れぬ文字を使い必死で書いたであろう、始末書が見てとれた。
それはルカが書いた青雉との戦闘での報告書。
実質ルカは書く必要はなかったのだが。
心配をかけまくったせいでことのほか時間のかかる説教を止めるべくやむなく出した打開策だった。
俺らが日頃扱う文字はルカの世界ではえいごと言う言葉でルカの世界でもよく使われていたらしいが、ルカはゆっくりであれば読む事ができるそうだが、文として書面にするのは大の苦手だったそうだ。
それをサッチとイゾウに助けてもらいながら書き上げた書類だ。
そこに綴られた文字は可愛らしい丸みを帯びた文字で、この船にいたらもしかしたら一生目にする事もない文字かもしれない。
そんな事を思いながら顔をあげ廊下を進み出すと、1つの部屋のドアが開き中から右側の肩から手首と、足に包帯を巻かれたルカが部屋から出てきたのだった。
「ルカ、部屋でまだゆっくり過ごせと話した筈じゃなかったかねい?」
俺が突然かけた声に、大袈裟に全身をビクっと震わせたルカはゆっくりと俺の方へ振り向くと、
『ま、まままマ、マルコさん…』
「マルコだよい。で、何してるんだい?」
『えーっとですねぇ?ほら、足も手の具合も全然心配ないんでね?部屋にいるのも暇だなーって』
「で、何か仕事探しに出てきたってわけかい?」
『ダメ?ですかねぇ…?』
シュンとして俯いてしまったルカにクスリと笑いを溢すとルカの頭に手を起きくしゃりと撫でた。
「本当に大丈夫なら、ちょっと俺の仕事手伝ってくれるかよい?」
バッと顔をあげたルカはニカっと笑顔を浮かべて俺を見ると
『はい!お手伝いさせてください!』
そして俺の自室へと向かった。
部屋に着いて、ルカは机の上の書類の山見て目ぇ丸くしてたよい。
「ルカ、ちょっと書類が溜まっててな。俺一人じゃなかなか片付かなくてよい、書類整理は得意か?」
『任せてください!元の世界じゃ毎日やってましたからっ!』
「そうかい、そりゃ頼もしいな。それじゃあ、報告書の種類によって分けて、隊順に並べ直してくれるかよい?それが終わったら、始末書を読んでこの判押してくれ。」
『わかりましたっ!』
元気よく返事をしたルカは1つの書類の山を持って床に座り込んで早速仕事を始めてくれたんだ。
それに目をやってから、おれは戦闘や遠征の書類に目を落としたんだけどよい。
集中し過ぎて、ルカが手伝ってくれてんのも忘れちまってよい。
そのままいつもの通り休憩も入れずに気付けば夜になっちまっててよい…慌てて振り替えったら、床に座って頭はベットに乗せて寝ちまっててよい。
近付いて毛布をかけてやったら、丁度ルカが起きてな…
『やばぁっ!あたし、寝ちゃってた!』
「大丈夫だよい。書類もルカが手伝ってくれたから全部終わった。ありがとな?」
『いえいえ!終わったならよかったです!』
そこで俺はクローゼットの隣においてあるチェストの上に盆に乗せられたマグとポットに気付いてルカに聞いた。
「なぁ?あれは?」
チェストを指差した俺に、ルカも視線を移すとびっくりした顔をして説明しだした。
『あ、あぁーーー!あの休憩にコーヒーをって思って入れて来たんですけど、思いの外マルコさん真剣で…それ眺めてるうちに寝ちゃったみたいで…』
「ありがとな、それ貰っていいかよい?」
『えぇ!?もう冷めちゃっておいしくないですよっ?今、淹れなおしてきますからっ!』
「俺はそれがいいんだけどよい?」
『ダメです!せっかくの休憩なら温かい美味しいコーヒー飲むべきです!ちょっと待っててください!これはサッチあげて、マルコさんには新しいの淹れてきます!』
「待てよい!なら、俺もいくよい。夕飯も食い損ねたからな、ルカのコーヒー飲みながら一緒に飯食わねぇか?」
『はい!実はあたしもお腹ぺっこぺこでした!』
「なら、そのコーヒー渡しながらサッチのバカも連れて食堂行こうかい」
部屋を後にしてサッチの部屋を訪れるとあんぐりと口を開け、俺らを指差すと
「ルカ!おめぇ部屋にいねぇと思ったら何でマルコといんだよ!」
『マルコさんの仕事手伝ってたの。で、サッチ。』
「腹減った。何か作れよい」
その言葉にギャーギャー言いながらも着いてくるサッチも一緒に食堂へ入ると、二人はキッチンへ入っていった。
それを見送り俺はカウンターに腰をおろしてルカがコーヒーを淹れるのを見ていると。
「お前さぁ、コロっと態度かえてルカ構い倒すとかずるくねぇか?」
「ずりぃってなんだよい…」
「ずりぃっての!あいつも一気にお前になついちまうしよー」
「んだよい、焼きもちか?サッチ」
「わりぃかよ…」
フライパンを振りながら話をするサッチに目線やり、ニヤリと笑う。
そこへ湯気のたつカップを持って俺の元にきたルカは
『はい!マルコさん!あたしの自慢のコーヒーですよー!』
「自慢?」
『あたし、料理はからっきしなんですけどね!昔喫茶店で働いてて、コーヒーとか淹れるのだけは得意なんですよー!』
そう誇らしげに笑顔で話すルカに、俺は自然と笑みを見せていたらしく、
「おーーい、マルコさーん。そのしまりのねぇ面引っ込めろよ…」
「うるせぇよい…」
サッチに返し、マグを手に一口飲む。
豆の香りが鼻を通り抜けていく。
ルカの淹れてくれたコーヒーは何故か今まで飲んだコーヒーのなかで1番上手かった。
「ルカー?俺にも愛の篭ったコーヒーちょうだーい?」
『ちゃんとあるから、早くご飯ちょうだい…あたしお腹減っちゃったよ!』
「もう出来るから座って待ってろ」
仲良く話す二人を眺めながら、ルカの淹れてくれたコーヒーを飲む。
『美味しいですかね?』
「あぁ、うめぇよい。ルカが暇な時はまた淹れてくれるかい?」
『はい!任せてください!』
笑顔でそう返してくれたルカに俺も笑顔を返すと、俺らの前にはサッチの作ったピラフがコトっと音をたてて置かれた。
「ほら、サッチ様特製ピラフだ!心して食えよなっ!」
そう言ってサッチもルカの淹れたコーヒーを片手に俺とルカを挟むように腰かけ、いただきますと行儀よく手をあわせ、ピラフを食べ出したルカを見つめる。
それを片目で見やった俺もスプーンを手に取りピラフを食べ始めた。
その後食事を終えてからも少しだけ食堂でルカの淹れたコーヒー片手に3人で談笑していたのは言うまでもない。
一人余分な奴がいるが、初めてあいつとゆっくり話をした想い出の日。
そして、あいつはこの日から暇があればコーヒーを淹れて部屋で仕事をしてる時は部屋まで運んできたり、朝飯を食いに行くと俺を見て挨拶しながら、コーヒーをだしてくれた。
コーヒーを飲む時、必ずこの事を思い出す俺を知ったらルカ、お前は笑うかい?
コーヒーに溶けた 後悔
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