destiny-32





その日のうちに、傘下を駆け巡ったルカの悲報とティーチの裏切りは全ての人間を悲しみのドン底へと突き落とした。

「ルカは船を戻して、あいつの気に入ってた海域で水葬にする」

会議室に響いた白ひげの声。
それに全員が頷き肯定を現すと、会議室の奥に設けられたベットに綺麗にされ横たわるルカを見つめた。
その近くに座り込み呆然としルカを見つめるのはエースだ。

エースに取っては、ルカは姉であり常にエースの前を歩く、尊敬する人物になっていた。

そのルカの死はエースの心に深い傷を残した。

そして、それはルカと関わった全員に言える事だった。

どこを見ても、何を話していても。
過るルカの面影。

しんみりした空気が嫌いだったルカの為に全員が無理に笑い、ルカの思い出話を繰り広げながら、水葬を執り行う予定の海域へと進んでいった。

その海域は、世界でゆういつ白鯨を拝める場所。

生前、ルカはこの海域を訪れる度に笑顔で飽きることなく白鯨を眺めていたのだ。

そして、その海域へと船を進めること2日。

その海域へと近付くモビーディックの前には沢山の船が見えてきた。

そこには、ドーマやマクガイ、ホワイティベイやディカルバン兄弟、スクアード。
全傘下の海賊団がルカの水葬の為にこの海域へ集結していたのだ。

そして、ルカを一隻の小舟へと横たえるとその回りを彩とりどりの花が囲み。
苦手だからといつもは拒む可愛らしい服装に身を包み笑顔をうかべたルカの姿。
そして、全員が見守るなかルカを乗せた小舟はモビーディックとその傘下が作った円の中心へと迎い進むと少しずつ、海へと吸い込まれていく。

そして、完全に小舟とルカの姿が海に溶けた瞬間、鼻緒を切ったようにそれぞれの船から上がる悲しみの咆哮。

そしてその日、一泊を海域で過ごし、ルカの弔いの宴を全海賊団で行ったのだった。




哀しみにくれる白ひげ海賊団とその傘下から離れる事数キロの位置に浮かぶは海軍の監視船。


この海域を目指し進む白ひげ海賊団とその傘下に気付いた海軍元帥センゴクが事の次第を調べる為に派遣。
鳥の能力者を乗せた軍艦は白ひげ達に気づかれる事なく船へと接近し、堕天使の死を知った。

それを急ぎセンゴクへと報告すると、次の日には白ひげ海賊団の異海の堕天使アマクサ ルカの死亡のニュースが全世界を駆け巡ったのだった。

その知らせをうけた、シャンクスは。
涙を溢す事なく海を見据えると、海に酒を投げ入れ黙祷を捧げる。

そして、シャボンディーではレイリーとシャッキーが新聞を読み驚愕し、ルカが好きだといった料理を作り二人並んで酒を煽る。

数々の島で、ルカと関わった人々が思い思いの方法でルカの死を惜しみ、哀しみに暮れた。


例の海域を抜けた頃、甲板では1つの揉め事が起こっていた。

「やめろよい!おい!エース!」

「親父は今回は特例だって言ってんだ、ティーチは追わなくていい!」

「離せぇっ!ティーチは俺の隊の部下だぁ!これを放っておいて、殺されたルカの魂はどこへ逝くんだぁ!」

「エース。いいんだ。今回だけは妙な胸騒ぎがしてなぁ…」

「あいつは仲間殺して逃げたんだぞ!何十年もあんたの世話になっておいて、その顔に泥を塗ったんだ!!」

「何より親の名前を傷つけられて、黙っていられるか…」

「俺がけじめをつけるっ!!!!」

そう言うとエースは荷物を持つと、ストライカーへ乗り込んだ。
それを静止しよーとマルコやサッチ、ジョズが止めにかかる。

「おい!待てよい!戻れ、エース!」

「ルカは先に進めって行ってたじゃねぇか!」

静止の声にも耳を傾ける事なく。
エースはモビーディックから離れていった。

それから数日。
二人の末っ子の消えた船内は静まり返り。
賑やかではあるが、全員が感じる違和感をぬぐい去る事はできていなかった。
甲板ではサッチがエースの去っていった方を見つめタバコをふかしていた。


「どうしたよい?」

「俺が…悪魔の実なんて見つけたばっかりにルカは死んでエースは船を離れちまった。なのに、俺はなにしてんだよ!!!!」

拳を縁に降り下ろし怒声を上げ、憤るサッチにマルコは歩みより、肩に手をおいて、諭すように話始めた。

「なぁ、サッチ。ルカは最後になんて言った?お前が責任を感じる事はねぇよい。全員が全員。お前と同じ想いを胸につかえさせてる。あの時、どうすればよかったのかってな…。だが、あいつは…」

「それでも!あいつはこうなる事を知ってたんだよ!ラルフから聞いたか?あいつはラルフと見張り番を変わってたんだ!しかも、誰にもこの事を話すなって釘をさしてな!!あいつの代わりに死ぬのは俺の筈だったんだ!それを俺を守って、あいつが死ぬ道を選んだんだ!お前らに俺の気持ちがわかるかよ!俺のかわりに殺されたんだぞ!あいつは!」

「それでも!今のお前を見て、あいつが笑ってると思うかよい!お前をそんな状態にしたくて、あいつが身代わりになったわけじゃねぇだろ!」

「だけどよ…」

「エースの事もだ。あいつだってそのうちケロっと帰ってくる!そうしたら全員でうんと叱ってやろうじゃねぇか?おめぇがそんな面してたら、ルカが浮かばれねぇだろうよい」

その言葉に堰を切ったようにサッチの瞳からは大粒の涙がこぼれ出す。

涙が収まるとサッチは一度海を眺めてから空へと両手をつき出すと大きな声で叫んだ。


「ルカーーー!そこから見てろよっ!いつか必ずお前の仇を取って!親父を、親父を必ず海賊王にしてみせる!お前のとこまで届く位、今よりもっと俺らはでかく!強く!なって見せるかな!!」

夕暮れの空へサッチの声がこだまする。
その声に釣られたように船内から家族達が集まり、久しぶりに賑やかに宴が始まった。

天まで届けと願いを込めて。


異海の堕天使 アマクサ ルカ
仲間であるマーシャル・D・ティーチから家族を守り、深手を追い、モビーディックにて家族に見守られながら、死亡。

彼女の生きた証は、確かにこの船に乗る全員が受け継ぎ、この海を進む。




堕ちた旅人 第2章
〜the sorrow of parting〜


物語は急展開を迎え、そして続く…



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