destiny-29
時は流れ、1つ年が変わり。
半年の月日が経っていた。
ルカは自室で書類の整理を行っていた。
マルコが行っていたここ数ヵ月の書類の整理をたまたま部屋を訪れた際に目にしたルカはその量とこの数日録に寝れていないだろうマルコの目の下にある隈に気付き、手伝いをかってでたのだ。
そして半分の書類を手にマルコの部屋を後にし現在に至る。
信じられない量の書類はここ数ヵ月度重なる遠征による物であった様でその1枚1枚の確認をしながら当時のまだ記憶に新しい思い出を振り返っていた。
と、1枚のハルタの書いた報告書に目が止まる。
記述の日付は1月1日。エースの誕生日だ。
この頃ハルタは少し離れた領地の様子を見に隊を引き連れ船を開けていた。
そして、船へエースの誕生日に合わせ戻るはずが少々たちの悪い海賊の一団が島へと上陸したせいで島での滞在が長引き戻れなくなってしまった為にエースの誕生日の宴への参加を諦めるはめになってしまったのだ。
ハルタの帰りが遅くなることに残念がり子供の様に落ち込むエースの姿が頭に浮かびルカは笑いを溢したのだった。
ルカがこの船に乗り、3年の月日が流れていたのだ。
ルカの脳裏にはこの船で過ごした日々が鮮明に思い出される。
マルコとの喧嘩、青雉との戦闘、駆け付けたマルコとサッチ、ショーンやハルタと供にやったイタズラの数々、船員と話盛り上がった親父さん談義、黄猿の襲来に己の力の覚醒、ナース達と話した色んな話、エースの乗船。
その他にもこの3年はとても色濃くルカの記憶に残っている。
そう思い返していると突然部屋に響いた大きめの荒いノック音。
それに我にかえると同時に響いたのはエースの声であった。
「ルカ!いるかっ!?ルカー?」
『はいはい!開いてるから入ってきなよ』
エースに声をかけるとすぐに開いた扉へ目を向ける。
慌てたように入ってきたエースは満面の笑みを携えルカに1枚の手配書を見せびらかすように前へ突き出した。
「今、親父にも見せてきたんだ!前にも話したろ?これ俺の…"おとうと" なんだ!!」
エースのその声にルカは呆然としながら一瞬時が止まった。
そう、始まるのだ。─────全てが。
そのルカの様子に気づかないエースは興奮気味に言葉を続けた。
「あいつも海賊を目指してたからな!やっと17になって島を出たんだ!しかも初等手配から30000000ベリー!すげぇだろっ!」
そう振られたルカはハッとして、慌てながら返事をした。
『そっ…か…エースはずっと待ってたもんね…早く…早く会えるといいね?』
「あぁっ!どれだけ強くなったか…楽しみだぜ!」
笑顔で話すエースに、手錠を掛けられ悲痛な表情を見せるエースの姿がだぶる。
興奮気味のエースに聞こえるか聞こえないかの声が漏れる。
『サッチもエースも親父さんも皆の事も必ず守るから…』
「?なんか言ったか?」
『ううん…言ってないよ?ほら、サッチとかマルコにも自慢の弟見せてきなよ?』
そう笑いかけるとエースは意気込んでルカの部屋を走って後にした。
部屋に残されたルカは窓から外を眺めながら、訪れるべくして訪れた吉報と供にこれから起こる出来事に想いを馳せたのだった。
そして、突然船内に駆け巡った敵襲の合図に気を取り直すとルカは椅子にかけてあったシャツを羽織ながら甲板への道を足早に進んでいった。
甲板に出ると、隊長達や船員が既に集まっており、1番にルカに気付いたサッチがルカに声をかけた。
「ルカー!今日は俺らが先番だ!気合い入れて行くぞっー!」
その言葉にニヤリと笑みを見せると
『当たり前じゃない!任せなさいよ!あたしはどこに行けばいい?』
正式上ではないが4番隊の副隊長とも名高い声のあがるルカは隊長であるサッチに指示を煽ると
「隊の半分を率いて船尾から攻めてくれ!残りの半分は俺と甲板に降りる!行くぞ!」
サッチの声に4番隊の全員が咆哮で答えると一気に船へ降り立ち戦闘が開始した。
そしてルカ率いる4番隊の面々も先に船尾へ飛んだルカを追い船尾へと飛びうつっていく。
そして、少しずつ甲板へと攻めていく。
『皆!周囲に気を配れ!弱小とは言えない船だ、心してかかれよ!』
久しぶりに手応えのある敵にルカは黒金を出し、応戦していた。
向かってくる敵を薙ぎ倒しながら進むと、ルカの視線に写ったのは敵船の船長と対峙するサッチの姿。その様子は少し苦戦を強いられているようで助けに入ろうと翼を羽ばたかせた時船からオレンジ色の何かが飛んできた。
「2番隊の援軍がきたぞーー!」
そのオレンジ色の光を目で追えばそれはエースで……この戦闘の相手がディカルバン兄弟である事に気付いたルカは黒金をしまい、腰に差していた剣を手にして敵陣へ斬り込んで行った。
それを船から見ていたマルコとビスタが気付いた。
「ルカは、どうしたのだ?」
「この戦闘…使いなれた黒金の方が有利なはずだよい…」
「それとも、敵の力量で剣でも平気だと判断したか?」
目を見合わせ肩を竦めると
「まぁ、負けるわけないだろうよい…」
「そうだな…」
そして、甲板ではエースとサッチが背中を預けディカルバン兄弟と戦闘を開始した。
それから程なくして戦闘は終結。
船長同士の話し合いの末、白ひげに敬意を露にしたディカルバン兄弟達が白ひげ海賊団の参加となる事に決まり、船は別れた。
ディカルバン兄弟と話をしたルカは笑顔で船首から手を振り見送っていると背後で足音が聞こえ振り替えると、難しい顔をしたマルコ、ビスタ、白ひげが船首に立つルカを見上げていた。
「ちょっと降りてこいよい?」
マルコの声に頷き、船首から飛び降りると3人の前に静かに降り立つ。
そして3人を見上げる形になったルカに白ひげが話し出した。
「おめぇ、さっきの戦闘で黒金を最初使ってたらしいが途中で剣に変えたらしいな?」
その言葉に頷き肯定を示す。
「何故かえた?あいつらはそれなりに強豪揃いだった。お前があのまま黒金を使えば、あいつらには怪我人どころじゃなく死者もでただろうな…。お前、こうなる事知ってて武器を変えたのか?」
『もう、親父さんには叶わないな…終わった事だし。いいよ…教えてあげる。』
笑って話し出したルカの声に3人は耳を傾けた。
『ディカルバン兄弟がこの戦闘で傘下に加わる事は知ってたよ?エースが降伏させたドーマ達の事も…』
「そうか…。知ってるとは言え、これからも油断だけはすんじゃねぇぞ?」
その白ひげの言葉に笑いながら頷くとその場を後にしてルカは自室へと戻って行った。
辿る…始まる…近づく戦慄
(初めてだねい…あいつが話したのは)
(だが、これからもあいつは終わってからこっちが聞かねぇと答えねぇだろうよ…)
(そうだねい)
(これからはあいつの行動の意味も気にしないといけないようだな…)
(あいつ一人で何と闘ってんだよい…)
(心配かぁ?マルコ)
(いや。心配じゃねぇと言ったら嘘になるが…あいつはバカみてぇな無茶だけはしねぇと信じてるよい…)
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