destiny-28
あれから数時間。
まだ早い時間だった筈が、もう数時間したら夕暮れを迎えるという頃。
夏島の海域を進んでいるという事もあり、船員のほとんどがあつい船内から逃げ出し、甲板で涼んでいると船内の扉から数人のナースの声が響きだした。
「もう!覚悟決めなさいよ!」
「女は度胸って言ってたのは誰ですかぁ?」
「ここまで来たのよ!さっさとしなさい」
『いーーやーーだぁーーーー!!』
ナースの声に混じった悲痛な叫びをあげるルカの声に全員がハテナを浮かべ、扉の目を向ける。
と、そこへ見張り台から大きな声が響いた。
「赤髪だーーー!赤髪がきたぞー!」
その声に船上は一気に緊張が走り、甲板にいた白ひげの元へ隊長達や船員が近寄ってきた…が間抜けな声まで響いてきた。
『ちょっ…!シャンクス!!聞いてないよ、てか尚更行けないって!実家!実家に帰らせてぇーーー!』
「あんたの実家はここでしょーが!」
スパーンと見事な音が響くが、それに呆れているうちにシャンクスの船は着実に近づいていた。すると…
「白ひげー!酒、持ってきたぞー!」
シャンクスの声が静かな海に響き渡ったのだった。
「赤髪、おめぇは敵に塩でも送ってるつもりか?」
「ちげぇって!いい酒を手に入れたんでな、白ひげにも飲ませてやろうと思ってな!」
「ふん。そうか」
白ひげの前に大きな酒樽を持ったシャンクスが笑いながら歩み寄る。
「そんな事よりだ!ルカはどこだ?」
「やっぱりか。おめぇそっちが本題だろーが?」
「だーはっはっはっ!まぁな!」
きょらきょろと見回すもルカの姿は見当たらず、視線のあったマルコへ近寄ると
「なぁ?ルカはどこだ?」
「知らねぇよい。さっきまでそこの扉でもだもだとナースとまごついてたがない」
船内への扉へ目をやると今尚ナースに腕を捕まれ抵抗できずに扉の影に隠れているらしい。
そこへシャンクスは近寄ると中途半端に開いている扉に手をかけると一気に開いた。
その瞬間扉から飛び出したのは…
短めのショートカットをふんわりと巻き、淡い色合いで纏めた可愛らしいメイクを施し、ベアトップのふんわりとしたミニワンピを着た…………………ルカが姿を現した。
その姿に一同は唖然とし言葉を失った。
普段からクールな印象を与えるメイクに動きやすい服装を好むルカからは想像もつかない姿がそこにはあった。
『ほらぁー、皆反応0だよー!だからやだって…』
最後まで言葉を発する事なくルカはシャンクスの腕のなかへと納められた。
『うわぁっ!何っ!どうしたの?シャンクス!』
その声にバッと肩を持ち引き離すと、シャンクスはルカの顔をのぞきこむように屈むと
「すっげえかわいい!」
大きな声をだし告げた。
それにルカは驚いた顔を見せると即座に顔を真っ赤に染めて逃げ出そうとしたが、マルコが、二人の間に割り込み引き離すと。今度はサッチがルカの肩に手を回し引き寄せルカを隠す。
『あわわ、な、何?』
「何をぎゃーぎゃー騒いでるかと思えば、タイミング悪すぎだよい。おい、赤髪!てめぇ、馴れ馴れしく触ってんじゃねぇよい!」
「なんだ、マルコ?うらやましいのか?」
「ちげぇよい。妹に変なむしがついちゃあ困るからな」
その間にもルカの回りには白ひげの船員が集まり、わいわいと騒ぎ立てる。
「随分べっぴんになったじゃねぇか!」
「似合うぜ!ルカ」
「いつもの格好もいいが、それも似合ってるな!」
誉められたルカは頬を染めて照れながらお礼を告げる。
「似合ってるぜ?それ。けど、赤髪なんかに見せたらもったいねぇ…取り合えず親父にも見せてこい」
サッチがにこっと笑いながらルカの頭を撫でて告げると、ルカは嬉しそうに笑うと
『うん!そうする』
そう言って、ふわりとスカートを靡かせて白ひげの元へ走っていった。
白ひげに走りよると、白ひげは座ったままルカを定位置の肘掛けの部分へと持ち上げ座らせると、慈しむような目でルカを見下ろし
「似合ってるじゃねぇか?たまには女らしくそういう格好もするといい」
そう言った。
そして、シャンクスがいる間は自分から離れるなと忠告すると、宴を始めるぞー!と声を荒げ、その場は宴へと雪崩れ込んだのだった。
その日の宴は二つの海賊団が集まった事もあり、それは賑やかな宴となったのだった。
まさか、それが全員そろっての最後の宴だとは誰も気づくはずもなく、その日の宴は大いに盛り上がったのだった。
ユダはだぁれ?
(赤髪、必要以上にあいつに近付くなよ!?)
(なんだ?サッチまで焼きもちか?残念だな…あいつは俺が嫁にもらうんだ!)
(こるぁー!シャンクス!誰が嫁よっ!誰が!)
(お前に決まってるじゃないか)
(やーよ!飲んだくれ!)
(そんな事言ったら、白ひげだって飲んだくれだろう?)
(親父さんはいーの!シャンクスみたいにデロンデロンにならないもん!)
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